重度・重複障がい児の発達と指導法
教材づくりと指導の実際

重度・重複障がい児の発達と指導法教材づくりと指導の実際

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自発行動を引き出すのは教材の工夫と教師の関わり次第

様々な状態像を示す重度・重複障がい児は、反応も示さず、表情も変わらないと思われがちであるが、教材の工夫や関わり手である教師のはたらきかけそのものを見直すことで自発行動を引き出すこともできる。本書では、その指導法や教材の工夫を紹介している。


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ISBN:
978-4-18-069529-4
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
対象:
幼・小・中
仕様:
B5判 128頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 重度・重複障がい児と教育
[1] 重度・重複障がい児の定義
[2] 重度・重複障がい児の教育
1 教育の必要性
2 教育の充実
第2章 重度・重複障がい児の発達と学習
〜姿勢,感覚と運動,体の部分の役割〜
[1] 姿勢
1 仰臥位の姿勢
2 側臥位の姿勢
3 前起こしの姿勢
4 机座位の姿勢
[2] 感覚と運動
[3] 体の部分の役割
第3章 教材の製作と活用法
[1] 教材の製作
1 材料と製作例
2 コードやスイッチの接続とBDアダプタの製作
[2] 教材の活用法
1 仰臥位の姿勢
2 側臥位の姿勢
3 前起こしの姿勢
4 椅子座位の姿勢
5 机座位の姿勢
第4章 パソコン入力装置の製作と教材作成
[1] パソコン入力装置
1 市販の入力装置
2 入力装置の製作
3 マウスの改造
[2] パソコン教材の作成
1 素材のつくり方
2 アニメーションの作成
[3] パソコンの操作と姿勢
1 側臥位の姿勢
2 机座位の姿勢
第5章 自立活動と個別の指導計画
[1] 自立活動の目標
[2] 自立活動の内容
[3] 個別の指導計画
1 実態の把握
2 行動観察
3 個別の指導計画の作成
第6章 指導の実際
[1]指導のポイント/ [2]事例紹介/ [3]指導仮説/ [4]指導の期間,場所,回数,時間/ [5]指導の経過/ [6]まとめ
指導事例1
自発行動が乏しいと言われている重度・重複障がい幼児の行動の自発
指導事例2
重度・重複障がい幼児の触刺激の受容と足の操作行動の自発
指導事例3
重度・重複障がい幼児の側臥位の姿勢と手の操作
指導事例4
定頸が困難な重度・重複障がい児の側臥位の姿勢と手の操作
指導事例5
視覚障がいを伴う重度・重複障がい児の刺激の受容と姿勢の調節
指導事例6
重度・重複障がい児の前起こしの姿勢と手の操作
指導事例7
視覚障がいを伴う重度・重複障がい児の机座位の姿勢と手の操作
指導事例8
重度・重複障がい児の初期学習
指導事例9
ウェルドニッヒ・ホフマン病を有する子どもの文字の学習と意思表出
あとがき
参考・引用文献

はじめに

 筆者が重度・重複障がい児の研究を始めたのが1977年です。当時は,国立特殊教育総合研究所(現・国立特別支援教育総合研究所)重複障害教育研究部に研究員として勤務していました。1979年に養護学校の義務性が施行される2年前で,重度・重複障がい児の研究が盛んに行われていました。当初は,重度・重複障がい児の実態もよくわからず,「自発行動の乏しい重度・重複障がい児の〜」というテーマで論文を書くこともありました。1981年に熊本大学教育学部に着任して,W病院の重心病棟や研究室で重度・重複障がい児の指導に当たっていると,今までの筆者の考えが間違っていることに気づきました。いくら障がいが重度で重なっていても,「自発行動の乏しい子ども」なんていないと考えるようになりました。どんなに障がいが重くて重なっていても,笑顔があるし,われわれの働きかけさえ適切であれば,生き生きとした姿を示してくれると信じるようになりました。

 1980年頃,研究室で仰臥位の姿勢で手足を少し屈曲させ目は軽く閉じている重度・重複障がい児に出会いました。じーっと仰臥位の姿勢で寝たきりで玩具を提示しても,それを見るような様子もなく,体を起こしても手を離せば崩れるというような子どもでした。いわゆる,われわれの働きかけに応じてくれない子どもでした。そのとき,ふと考え,われわれの働きかけは体の前からの働きかけで,それが間違っているのではと考えました。そう思って,メロディマットを持ってきてその子の肩胛骨のところに置くと,それを鳴らし始めました。「ゲェゲェゲェ」(かえるの声)とリズムをとって鳴らしているように聞こえました。鳴らしながら声は出ませんが,子どもに笑顔が浮かびました。子どもの体は動いているようには見えません。本当に小さな動きで,しかも背中で外界と関わっていると思いました。われわれの想像を超えたことでした。同じ子どもの口にホイップクリームをぬったところ,唇や舌を動かしてなめて食べました。口を大きく開けクリームを要求するし,食べることが楽しいのか,笑顔も頻繁に見られました。この子どもに出会ってからは,自発行動の乏しい子どもはいないと考えるようになりました。そのように見えるのは,われわれの関わり方に問題があるからだと思いました。その後,様々な子どもに出会いましたが,常に問題は,われわれの子どもの見方,関わり方,教材の工夫にあると考え,実践を積んできました。「指導事例」の中で紹介している子どもは,その一部ですが,重度・重複障がいの子どもから学んだ知識や指導法がふんだんに含まれています。したがって,重度・重複障がい児の教育に携わっている先生方には,本書は大いに役立つと考えています。


  平成22年6月   /進 一鷹

著者紹介

進 一鷹(しん かずたか)著書を検索»

熊本大学教育学部教授

博士(教育心理学・九州大学)

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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