- はじめに
- T章 遊びの場づくりを支えるムーブメントの考え方明日から役立つ18のポイント
- 1 めざすところは「健康と幸福感の達成」!
- 2 遊びが原点〜「〜させる」より「〜したい」を大切に〜
- 3 「からだ・あたま・こころ」の全人的アプローチ
- 4 人は動くことによって自分を知り世界を知る
- 5 スモールステップで自信と喜びを
- 6 評価ではなく承認の言葉を
- 7 「いかに」は「何を」と同じほど大切
- 8 集団の力〜場に「居る」ことの意味〜
- 9 環境の力 その1〜アフォーダンス理論から考える〜
- 10 環境の力 その2〜ICFの考え方から「相互関係」をとらえる〜
- 11 環境の力 その3〜「人」も「環境」〜
- 12 強みを活かして楽しく,ゆっくり楽しく
- 13 家族で一緒に楽しむ
- 14 遊びの場の必要性
- 15 一人一人が主体として生きる〜「共に生きる場」をつくる〜
- 16 大人も遊ぶ〜地域の中で共に育つ関係づくり〜
- 17 創造的な場を共につくること
- 18 ハッピーは分かち合えば増えるんだ!
- U章 これだけは知っておきたい! 遊びの場づくりに活かすムーブメント・ツール
- 1 ムーブメントアセスメントMEPA-Rの活用
- @ MEPA-Rの目的と特色
- A MEPA-Rの構成と内容
- B MEPA-Rのステージと発達課題
- C 評定の方法
- D プロフィール表からみる支援の方向
- 2 ムーブメント遊具の活用〜動きづくりから認知,社会性まで〜
- @ ロープ
- A スカーフ
- B プレーバンド
- C ビーンズバッグ
- D 形板
- E ムーブメントリボン
- F ユランコ
- G ピッタンコセット
- H スクーターボード
- I コクーン
- J パラシュート
- K 身近なもの1(新聞紙)
- L 身近なもの2(タオル)
- 3 関わりの手がかりに!「ムーブメント・ワード」
- @ おなまえ
- A 「できたね! やったね!」
- B 「楽しいね」「楽しかったね」
- C 「順番に」
- D 「そっとね」
- E 「別のやり方でやってごらん」
- F 「いっしょに」
- G 「今日は何をしたかな?」
- V章 みんなでつくろう! 遊びの場! ムーブメントプログラム実践例
- 1 ここで紹介するプログラムについて
- 2 ムーブメントプログラム実践例
- プログラム@:「大きなかぶ」の世界で遊ぼう!
- プログラムA:「赤ずきん」の世界で遊ぼう!
- プログラムB:お魚になって遊ぼう!
- プログラムC:てるてる坊主になって遊ぼう!
- プログラムD:ペンギンになって遊ぼう!
- プログラムE:タオルで遊ぼう! 「親子の魔法使い」
- プログラムF:一緒につくろう! みんなのダンスパフォーマンス「花」
- プログラムGH:わたげちゃん「水の冒険」&「光の冒険」
- W章 活動事例紹介 ムーブメントを活用した遊びの場づくり
- 1 地域子育て支援としての遊びの場づくり〜保育所・保育士を核とした取り組みの中で〜
- 2 地域療育ネットワークの拠点としての遊びの場づくり〜重度重複障害児(者)とその家族を対象としたムーブメントサークルの歩み〜
- 3 市民参加型ワークショップとしての遊びの場づくり〜さがまちコンソーシアム大学市民講座における試み〜
- おわりに
- 参考引用文献一覧
はじめに
アメリカのフロスティッグ(Marianne Frostig)のムーブメント教育が小林芳文らによって日本に紹介されて30年が過ぎました。その間,教育,保育,福祉,医療関係者らの協力を得て,日本独自の「ムーブメント教育・療法」が開花し,「からだ(動くこと)―あたま(考えること)―こころ(感じること)」の調和のとれた発達を図りながら,「健康と幸福感の達成」をめざす実践学として障害児支援,特別支援教育の分野を中心に幅広く活用されてきました。
一方,日本では今,時代の急激な変化の中で,遊びが失われ,子育てに対する不安感に社会が覆われてしまい,障害児に限らずすべての子どもたちが健やかに育つための環境づくりが緊急の課題となっています。親による団体,NPO,行政,保育所,幼稚園,企業などの様々な人々の努力により子育て支援の活動や機会は増えたものの,今日の子どもの育ちを取り巻く問題は根深く,息苦しさはなかなか消えず,あらためて,多種多様な家族が,共に生き,共に育ち合うための支援の質が問われ,そのための場を共につくる取り組みが求められています。
ムーブメント教育・療法は,施設や遊具や音楽や人など様々な環境を最大限に活かして,楽しい遊びの場を共につくり,一人一人の主体性と人間の尊厳を大切にし,参加するすべての人々の笑顔と優しさを支えます。すでに,様々な地域の子育て支援の現場でも活用され始めています。家庭,地域,教育などの現場で子どもの育ちを支える方々に「遊びの場」を活用してもらうためのムーブメント教育・療法の考え方や実践法を解りやすくお伝えし,一つでも多くの笑顔を増やしていくことがこの本の目的です。
T章「遊びの場づくりを支えるムーブメントの考え方 明日から役立つ18のポイント」では,フロスティッグの理論をもとに,これまでムーブメント教育・療法で大事にされてきた基本的な考え方について,明日からの実践に直接役立つよう,解りやすく18のポイントにまとめました。
U章では,「これだけは知っておきたい! 遊びの場づくりに活かすムーブメント・ツール」として,まず,ムーブメント教育・療法のアセスメントである「MEPA-R:Movement Education Program Assessment-R(通称メパ)」について,活用のねらいと具体的な使い方を説明してあります。次に,ムーブメントの代表的な遊具の活用方法を具体的に説明しています。さらに,活動の際,関わりと場づくりの手がかりとなる言葉として「ムーブメント・ワード」を紹介しています。
V章「みんなでつくろう! 遊びの場! ムーブメントプログラム実践例」では,これまで実践されたムーブメントプログラムの中から,様々な現場で応用性の高いものや地域の環境を活かした特徴的な活動をピックアップして,詳しく紹介しています。
W章「活動事例紹介 ムーブメントを活用した遊びの場づくり」では,ムーブメント教育・療法を活かした遊びの場づくりの発展的な取り組みとして,三つの事例を紹介しています。
この本が,子育て支援や地域支援,教育,保育,そして,家庭など様々な場で,「遊び」の要素を活かして笑顔で楽しく生きていきたいと願う方々のお役に立つことができれば幸いです。そして,あなたの笑顔があなたの大事な誰かの笑顔をよんで,あなたの周りに笑顔がどんどん増えていくことを願っています。
2010年10月 /小林 芳文 /大橋 さつき
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- 明治図書