- まえがき
- 1章 学級づくりの仕事への心構えと重点
- 1 なぜ,学級づくりをするのか
- 2 1年の学級づくりではずしてはならないポイント
- 2章 1年の学級づくりの仕事12か月
- T 1学期の仕事
- 1 中学校生活のスタートで生徒の心をつかむ取組み
- 2 学級の人間関係づくりのスタートの仕事
- 3 学級全員が共有できる学級目標づくり
- 4 座席決めの方針づくり
- 5 生徒がやる気を出す係活動の組織
- 6 学級生活を維持する日直・当番活動の仕事
- 7 学級・学校生活がわかる教室環境づくり
- 8 保護者の心をつかむ授業参観と保護者会の計画
- 9 担任の指導方針や指導実践を伝える学級通信づくり
- 10 学級日誌の指導と活用
- 11 朝の会,帰りの会の充実
- 12 学級の人間関係を豊かにする学級集会
- 13 信頼関係を深める家庭訪問
- 14 2学期への意欲を喚起する通知表の所見
- 15 中学生の初めての夏休みの事前指導
- U 2学期の仕事
- 1 学級をまとめる学校行事の事前指導
- 2 学級生徒の人間関係の把握
- 3 読書に親しむ学級雰囲気づくり
- 4 係活動を盛り上げる工夫
- 5 学級が一丸となる合唱際への取組み
- 6 学級の生活規律を確立する取組み
- 7 保護者の要望に応える保護者面談の実施
- 8 学校内外の安全確保への取組み
- 9 生徒会活動への積極的な取組み
- 10 いじめ問題の発見,予防,対処への取組み
- 11 話合い活動を充実させる取組み
- 12 学習上の問題を解決する取組み
- 13 集団生活への不適応の発見と対応
- 14 1年生としての進路を考える保護者会の実施
- 15 2学期末の学級経営の点検
- V 3学期の仕事
- 1 夢を語り合う新年の学級活動
- 2 1年の成長を確認する学級文集づくり
- 3 避難訓練と交通安全教室の事前指導
- 4 生徒相互が個性や特性を認め合う取組み
- 5 学級で取り組むボランティア活動
- 6 中堅学年に向けての意識を高める取組み
- 7 係活動のまとめ
- 8 自分の成長に関わった方へ感謝させる取組み
- 9 学年末大掃除の指導
- 10 我が子の成長を確認する学年末保護者会
- 11 新入生への歓迎と助言
- 12 修了式後の学級解散式
- 13 1年の学級経営の自己評価
- 14 指導要録作成の留意点
- 15 学級担任の事務引き継ぎの基本
まえがき
教室で見かけるよりも職員室で見かけることが多い学級担任がいる。朝の会,給食,清掃,帰りの会で学級へ行ってもすぐに職員室へ帰ってきてしまう学級担任がいる。学級の生徒の姿が身の回りにあまりない学級担任がいる。誰もいない教室に入った時,学級担任の姿が浮かんでこない学級がある。
学級を担任するということは,あくまでも校務分掌の一分担として,連絡事項や指示事項を伝達し,学級事務を処理し,生徒指導上の問題が生じた時はその処理をするなど,担任した学級を管理する仕事が学級担任の仕事であるととらえている若手の教師が多く見受けられる。
いうまでもなく,学級づくりは,学級目標の実現を目指して,総合的,意図的な計画に基づいて,学級をより望ましい学級へと育成していく営みである。学級担任は,学級をより望ましい学級にしていく取組みを通して,一人一人の生徒がよりよく成長していく契機となるよう指導・援助する必要がある。このことを学級集団の育成と関わらせて取組んでいくことが学級づくりであると言える。
学級は,学校が効果的に教育を進めるために生徒を機能的に編制した単位集団である。生徒は,学級という単位集団に所属して,そこを基盤として日々の学習活動に取組む。学級は,学習集団として編制された単位集団であるが,生徒の学校生活の基盤として重要な役割も担っている。すなわち,学級は,学習集団としての性格と生活集団としての性格の双方を併せ持った集団である。学級づくりは,学級が学習集団と生活集団の双方の機能を相互に補充,補完し合って,生徒の個性の伸長と豊かな人間性の育成に役立つ学級をつくり上げていく教育的な営みである。
また,学級生活は,人間関係の軋轢や摩擦,個人的な不適応など,生活上の様々な問題や課題を内在している。生徒が活発に活動すればするほど,こうした問題や課題は表面化してくる。問題や課題が内在し,表面化してくることは当然であり,それが自然な学級の姿である。しかし,ここで重要なことは,こうした問題や課題を発見し,その解決や改善に向けた生徒の自主的な取組みが行われているかということである。生活上の諸問題を自主的に解決しようとする取組みは,学級を生徒一人一人の社会的な自己実現を図る準拠集団へと育てていく学級づくりの重要な取組みとなる。
しかし,近年の学校現場では,こうした学級づくりの取組みが行われていない現状がある。これは,大学における教員養成課程で学級経営や学級づくりを実践的に学ばせていないことと,団塊の世代の大量退職に伴う新規採用者の増大による年齢構成のアンバランスから先輩から学ぶ機会がなくなっていることに原因がある。
そこで,本書は,実践経験の豊富な中堅教員とベテラン教員が,学級担任がしなければならない仕事を学校暦に応じて取り上げた。学級担任がしなければならない学級づくりの仕事として,@学級をスタートさせる仕事,A学期の終始と年度末の仕事,B学級の基盤をつくる仕事,C学級の問題や課題を解決・改善する仕事,D学級を充実・向上させる仕事の視点から精選して取り上げた。
本書の活用に当たっては,学期毎にしなければならない仕事を確認していただき,学級の実態に即して適切な時期に,適切な仕事を取り上げていただきたい。また,本書を参考に学級の実態に応じて,担任教師の指導観や教育観に基づいた創意工夫をして実践していただきたい。本書の実践例をそのままを取り上げるのではなく,学級担任の人間性が滲み出る仕事にしていただきたい。
学級担任の先生方が,本書を有効に活用いただいて学級担任がしなければならない学級づくりの仕事に取組み,保護者と生徒から学級担任として信頼される教師となる一助になればと願っている。この仕事を成し遂げていただき,生徒にとって自分の学級が素晴らしい学級となるように念じている。
結びに当たり,本書刊行の趣旨にご理解をいただき,校務多忙な中,貴重なノウハウを提供いただいた執筆者の先生方,刊行に際しご尽力を賜った明治図書出版株式会社の安藤征宏氏をはじめ編集部の皆様に心から感謝を申し上げる。
平成22年12月 編 者
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- 明治図書