- まえがき
- 第1章 「生きる力」につながる算数・数学の指導
- 1 何を教えればよいのですか
- 2 算数・数学の指導は必要か
- 3 算数・数学で何を
- 4 算数・数学をどのように
- 5 指導に行き詰まったときには
- 6 おわりに
- 第2章 授業ヒントの実際例
- 数と計算
- 1 分割した絵カードを組み合わせることができるようにするには――体験を学習につなげる――
- 2 遊びながら学ぶボーリングゲーム――具体物を数える学習の重視――
- 3 すごろくゲームで「かず」の学習――ドリル的な個別指導と実生活で活用することを組み合わせて――
- 4 サイコロゲームを通した「かず」の学習――6までのかずがわかり,10までの加法計算ができるようにするには――
- 5 「たりないこと」に着目したひき算の学習――10以内の減法計算ができるようにするには――
- 6 パズルでひな祭――実生活と結び付ける工夫を――
- 7 5や10の合成・分解が自然に習得できる楽しいゲーム――半具体物による1から10までの数の合成・分解ができるようにするには――
- 8 「玉入れゲーム」を基本とした「分ける」「合わせる」活動――10個の玉は,何個と何個になったかな?――
- 9 ドミノ遊びによる色の弁別の学習――その子供の課題に応じた学習活動の展開――
- 10 10までの数の大小がわかるようにするには――考え方の発展に焦点をあてて――
- 11 遊びながら学ぶ魚つりゲーム――5ずつまとめて数えることができるようにするには――
- 12 じゃがいものかずを数えよう――10ずつまとめて数えることができるようにするには――
- 実務
- 1 お金の等価関係がわかるようにするには――本物のお金で買い物体験を――
- 2 買い物に出かけよう――支援ツールを使っての指導――
- 3 簡単な買い物ができるようにするためには――買い物の楽しさやその意味を理解し,子供の生活をより豊かに――
- 4 簡単な計算機を使って計算できるようにするには――「できた」から「やってみよう」へ――
- 5 品物プリントで学ぶお金の概念――日常生活をリサーチした教材の工夫――
- 6 リンゴはいくら?――お金を使った計算をしよう――
- 7 自動販売機が使えるようにするには――ジュースを買いに出かけよう――
まえがき
小・中学校の学習指導要領は,平成10年秋に第6回の全面改訂を行いました。本学習指導要領は第4回改訂のとき「ゆとり」を取り上げ,第5回改訂では小学校に「生活科」を新設,今回の改訂では「総合的な学習の時間」を新設しました。約20年間の教育指針は,「教科中心の教育」から一部「子供中心の教育」にシフトしてきました。行き過ぎを是正したといってよいでしょう。しかし,改訂学習指導要領総則の一般方針の最初のところで「基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り」と示しています。つまり,子供の興味・関心のみでは不十分,「社会生活に必要な事柄はしっかりと身に付けるように」と釘を打っています。
知的障害教育においては,「生活」「興味・関心」「重度」「重複」「重度・重複」等と言っていれば,成果があがるとの認識不足がないわけではありません。この本をつくるにあたって,「生活の中における読み・書き・算数について」また「教科別の指導における国語,算数の取扱いについて」と原稿を依頼しても「そのような指導はしておりません」という方がおりました。
本書の構成は,「生活を中心とした教育」の立場です。しかし,「生活」と言っている指導の実際はどうなっているのでしょうか,という視点が一つあります。たとえば,運動会でポスターをつくる場合,美術の専門的知識と技能をもっている教師ともっていない教師とでは,子供に興味・関心の起こさせ方が違います。このように,教科の専門的知識・技能をもっていれば,子供たちに興味・関心をもたせ,しかも持続させ,さらに,意欲を起こさせ,発展をさせるということができるでしょう。興味・関心があるということは,興味・関心のあるものに教師が後追いするという印象がありますが,教師の専門性によって子供たちに興味・関心,意欲を起こさせ,持続させるということがとても大事なのです。
日々の授業は,日常生活の指導,遊び学習,生活単元学習や作業学習などです。これらの1単位時間の計画を見ますと,中心となっている活動内容は,国語であったり算数であったり,ときには,音楽であったりと偏っています。あるいは,国語と図工であったり,生活と算数であったりします。このとき,国語や算数,音楽や図工の専門的知識や技能のある教師とない教師との1単位時間の計画の立て方,教室環境の整え方,教材・教具の準備の仕方,臨機応変の授業展開などが当然違ってきます。
本書は,改訂学習指導要領に基づいて領域・教科を合わせた指導の中における国語と算数・数学を中心に編集しました。これらの事例は,教科別の指導として取り扱うことも十分できますが,それより,日常生活の指導,遊び学習,生活単元学習や作業学習の中で部分的に生かせるように工夫しました。なお,「個に応じての対応」つまり「Aちゃんの興味・関心,意欲等に教師はリアルタイムでどう対応したらよいか」ということがわかるように,学習指導案の「本時の指導」に工夫を加えました。きっとお役に立つと思いますので,ご活用いただけるとありがたいです。
最後になりましたが,お忙しいにもかかわらず快く原稿をお引き受けいただいた皆様に心から感謝するとともに,本書をまとめる機会を与えてくれた明治図書並びに編集部の三橋由美子氏に衷心よりお礼を申し上げる次第です。
平成12年4月 編者 /宮崎 直男
さて…この本は,かわいらしい表紙とお買い物学習についてたくさん取り上げられているのに惹かれて購入しました。
抽象的な内容である算数を教えるのは難しく,さらにお買い物指導は難しいです。改訂指導要領の授業ポイントはさることながら,どのようにすればよいか具体的に役立つ授業例がうれしかったです。
私は,実務3にありました「簡単な買い物ができるようにするためには」の2235円ならば3000円支払う…といった1000円単位で支払う指導をさっそく取り入れてみようかと。