- まえがき
- 第1章 「生きる力」を育てるための国語の内容の取扱い
- 1 国語の指導目標
- 2 国語の指導内容
- 3 国語の指導時間
- 4 国語の指導方法
- 5 一単位時間の指導(授業)
- 第2章 授業ヒントの実際例
- 聞く・話す
- 1 事物の特徴をとらえ,文章表現できるようにするためには――スリーヒントクイズの実践から――
- 2 順序立てて話すことができるようにするには――どの教室に何がある――
- 3 よく聞き,楽しく話す力を育てる――家族の声などを録音したテープを使用して――
- 4 せりふのある劇をすることができるようにするには――「鬼太鼓」を取り入れた劇づくり――
- 5 マ行の音をはっきり出させるには――「あきのお山でハイキング」の実践から――
- 6 人にたずねられたら,はっきり応答できるようにするには――「日記を読もう」の実践から――
- 7 テレビを見て内容を話すことができるようにするには――3枚の絵とテレビを使った“お話づくり”を通して――
- 8 要点をつかんで話すことができるようにするには――「バーチャル紙芝居をつくろう」の実践から――
- 9 子供の表現力を高めるには――電話での応答や保育園との交流活動を通して――
- 10 表現力を高める授業の工夫について――「宿泊学習に行こう」の実践から――
- 読む
- 1 カタカナを探しに街に出よう――生徒の興味・関心のある事物を通じてのカタカナ指導――
- 2 簡単な漢字を読むことができるようにするには――毎日の日記指導を通して――
- 3 場面の様子を想像しながら読もう――読みの楽しさを味わう劇遊びの活動を通して――
- 4 「生活に生きる読み」に発展させる指導――生活単元学習「卒業記念制作をしよう」の実践について――
- 5 本を読むことに関心がもてるようにするには――国語辞典から絵本まで――
- 書く
- 1 簡単な日記を書くことができる――「修学旅行の思い出を日記に書こう」の実践から――
- 2 ひらがなで身近なものの名前を書こう――小学部F女の事例――
- 3 お楽しみ会の案内状をつくろう――ビッグ往復はがきを活用して――
- 4 短い文をひらがなで書くことができるようにするには――写真や絵カード・文字カードを使って――
- 5 詩集をつくろう――言葉遊びから始めよう!――
まえがき
小・中学校の学習指導要領は,平成10年秋に第6回の全面改訂を行いました。本学習指導要領は第4回改訂のとき「ゆとり」を取り上げ,第5回改訂では小学校に「生活科」を新設,今回の改訂では「総合的な学習の時間」を新設しました。約20年間の教育指針は,「教科中心の教育」から一部「子供中心の教育」にシフトしてきました。行き過ぎを是正したといってよいでしょう。しかし,改訂学習指導要領総則の一般方針の最初のところで「基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り」と示しています。つまり,子供の興味・関心のみでは不十分,「社会生活に必要な事柄はしっかりと身に付けるように」と釘を打っています。
知的障害教育においては,「生活」「興味・関心」「重度」「重複」「重度・重複」等と言っていれば,成果があがるとの認識不足がないわけではありません。この本をつくるにあたって,「生活の中における読み・書き・算数について」また「教科別の指導における国語,算数の取扱いについて」と原稿を依頼しても「そのような指導はしておりません」という方がおりました。
本書の構成は,「生活を中心とした教育」の立場です。しかし,「生活」と言っている指導の実際はどうなっているのでしょうか,という視点が一つあります。たとえば,運動会でポスターをつくる場合,美術の専門的知識と技能をもっている教師ともっていない教師とでは,子供に興味・関心の起こさせ方が違います。このように,教科の専門的知識・技能をもっていれば,子供たちに興味・関心をもたせ,しかも持続させ,さらに,意欲を起こさせ,発展をさせるということができるでしょう。興味・関心があるということは,興味・関心のあるものに教師が後追いするという印象がありますが,教師の専門性によって子供たちに興味・関心,意欲を起こさせ,持続させるということがとても大事なのです。
日々の授業は,日常生活の指導,遊び学習,生活単元学習や作業学習などです。これらの1単位時間の計画を見ますと,中心となっている活動内容は,国語であったり算数であったり,ときには,音楽であったりと偏っています。あるいは,国語と図工であったり,生活と算数であったりします。このとき,国語や算数,音楽や図工の専門的知識や技能のある教師とない教師との1単位時間の計画の立て方,教室環境の整え方,教材・教具の準備の仕方,臨機応変の授業展開などが当然違ってきます。
本書は,改訂学習指導要領に基づいて領域・教科を合わせた指導の中における国語と算数・数学を中心に編集しました。これらの事例は,教科別の指導として取り扱うことも十分できますが,それより,日常生活の指導,遊び学習,生活単元学習や作業学習の中で部分的に生かせるように工夫しました。なお,「個に応じての対応」つまり「Aちゃんの興味・関心,意欲等に教師はリアルタイムでどう対応したらよいか」ということがわかるように,学習指導案の「本時の指導」に工夫を加えました。きっとお役に立つと思いますので,ご活用いただけるとありがたいです。
最後になりましたが,お忙しいにもかかわらず快く原稿をお引き受けいただいた皆様に心から感謝するとともに,本書をまとめる機会を与えてくれた明治図書並びに編集部の三橋由美子氏に衷心よりお礼を申し上げる次第です。
平成12年4月 編者 /宮崎 直男
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- 明治図書