- 監修のことば
- はじめに
- 第1章 乳・幼児期の気づきから始まる特別支援教育
- 1 発達障害とは
- 2 乳児期の支援を要する子どもの特徴
- 3 幼児期の支援を要する子どもの特徴
- 4 気づきから支援へ
- 第2章 気づきのポイント・支援の始まり
- 1 「感覚」について
- 1 触覚が過敏・鈍痲
- 2 痛みに敏感・強い
- 3 聴覚が過敏
- 4 光る物等に対するこだわり
- 5 場所見知りが激しい
- 6 離乳がうまくいかない・偏食が激しい
- 2 「運動」について
- 1 よくこける
- 2 姿勢が悪い
- 3 スキップができない
- 4 ジャングルジムに登れない
- 5 ボール遊びが苦手
- 6 利き手が定まらない
- 7 絵が描けない
- 8 はさみがうまく使えない
- 3 「対人関係(大人)」について
- 1 ぐずりが激しく,なかなか機嫌がよくならない
- 2 表情が読めない
- 3 人見知りが激しい
- 4 まねをあまりしない
- 5 視線が合わない
- 6 名前を呼んでも振り向かない
- 7 困った時にお母さんに助けを求めない
- 8 なかなか言うことを聞いてくれない
- 4 「対人関係(子ども)」について
- 1 保育室から出てしまう
- 2 「やめて」が言えない
- 3 おもちゃの取り合い
- 4 友だちの名前が覚えられない
- 5 内緒話ができない
- 6 小さい子の世話を任せられない
- 7 順番を守ることができない
- 8 1番でないと気がすまない
- 9 遊びのルールがわからない
- 10 同年齢の子どもと遊べない
- 5 「ことば」について
- 1 エコラリア(先生の言ったことばをそのまま言う)
- 2 クレーン行動(人の手を黙ってひく)
- 3 あいさつが逆・イントネーションが不自然
- 4 色の名前や大小比較がわからない
- 5 昨日,今日,明日がわからない
- 6 言いたいことを一方的に話してしまう
- 7 多弁
- 8 人の話を聞いていない〜特に一斉指導の場合〜
- 9 聞いた時に答えない
- 10 先生の指示に従えない
- 11 聞き返しが多い
- 12 ことばの虫食い〜特に物の名前を覚えるのが苦手〜
- 13 年齢に合わない大人びたことばをつかう
- 14 ことばがまだ未熟なのに,文字への興味・関心が強い
- 15 独り言が多い
- 6 「認知」と「遊び」について
- 1 感覚刺激で遊ぶことが多い
- 2 おもちゃや物を変わった扱い方をする
- 3 描く絵が他の子どもに比べ幼い・変わった感じがする
- 4 一人遊びが多い
- 5 遊びが短い・遊びがどんどん変わる
- 7 「行動特性」について
- 1 パニックを起こす
- 2 こだわり
- 3 多動
- 4 衝動性が高い
- 5 約束をすぐ忘れる・忘れ物が多い
監修のことば
平成19年より特別支援教育が本格的にスタートしました。幼稚園・小学校・中学校および高等学校において,従来の特殊教育が対象としていた障害だけではなく,LD・ADHD・高機能広汎性発達障害等の児童生徒に対して「個のニーズに応じた教育的支援」を具体的に行う画期的なプログラムです。1人ひとりのニーズをしっかり把握し,丁寧な観察とアセスメント結果を通して「どこでつまずいているのか」の認識が持てる教師を育て,この子どもの持てる力を伸ばし,生活や学習上の困難を改善・克服していくために必要な支援を行うものです。
確かに,子どもの出す「つまずきのサイン」は6歳以降の小学校段階ではわかりやすく明確な指導につながります。問題は就学前の乳幼児の微妙なサインです。「何かおかしい」,「どこかおかしい」と母親が感じても専門の先生から「そのうちにことばは出ますよ」「お母さん,思い過ごしですよ」「子どもは個人差があるから大丈夫ですよ」等と言われるとほっとしてそのままになることが多いようです。わが国では,1歳半健診,3歳児健診でスクリーニングされ早期に赤信号が灯る事例も沢山あります。また最近は5歳児健診に取り組んでいる市町村が少しずつ増えてきたこともあり就学への適切な指導とドッキングできるようになりました。
しかし,残念なことに保健師,保育士のレベルではまだまだ乳幼児期の発達障害に関する基礎情報が少なく,何が発達障害の「サイン」なのかの判断できずにいるのが現状です。
今から十数年前のことです。西神戸に位置する垂水区で子育て相談を担当されていた松本恵美子先生から私の方に毎週3〜5歳の幼児が精査のため紹介されて来ました。全員発達障害の疑いありの事例でした。感覚運動系に明らかなソフトサインが見られる事例,触覚,前庭覚,聴覚,視覚等が過敏であったり,鈍感であったりする事例,非常に不器用な事例,左右がどうしてもわからない事例,保育所でいつも孤立し,一人遊びが好きな子どもの事例,こだわりの強い事例,多弁で独り言が多い事例等で子どもたちのエピソードから判断すると明らかに発達に何らかの特異性が見られました。松本先生の観察力の鋭さにびっくりしたのを覚えています。
本書では,3人の専門家により,発達障害のサインへの気づき,すなわちどこでつまずくのか,どう指導するのかを「Why,How to Do」の項目に分け,やさしく解説しています。
松本先生は長年の乳幼児への関わりの経験からわかったサインの捉え方,藪内道子先生は,子ども家庭センターでの経験を通じて乳幼児の発達の捉え方と具体的な関わりについて,高畑芳美先生は,保育所,幼稚園での遊び,ことば,対人関係等を具体的な事例によりまとめています。この3人の先生方は「ちょっと気になる子ども」を見通す洞察力とどこでつまずいているのかを的確に見極める判断力を持ち合わせておられる貴重な存在です。
ぜひ本書を乳幼児の発達障害を理解する教科書として活用していただければ幸いです。
/竹田 契一
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- 明治図書
- 多くの子ども達と接している中で様々な発達課題を感じることがある。幅広い内容で多くのケースに対応するヒントが書かれているので支援の入門として手元に一冊置いておきたい本である。2022/9/860代・男性