- 自序
- 第一章 序論
- 第一節 他律的教育から自律的学習への進展
- 第二節 学習の意義
- 第三節 学習研究の必要とその範囲
- 第二章 学習の目的
- 第一節 人は人らしく生きるのが目的だ
- 第二節 学習の目的は自己の建設である
- 第三節 自己建設の内容
- 第四節 結勘
- 第三章 学習の性質
- 第一節 序説
- 第二節 発動的学習
- 第三節 創作的学習
- 第四節 努力的学習
- 第五節 歓喜的学習
- 第四章 環境の整理
- 第一節 人生は環境と終始する
- 第二節 学習に適当な環境を創れ
- 第三節 学習組織を樹立せよ
- 第四節 学習の設備
- 第五章 学習の材料
- 第一節 学習材料の性質
- 第二節 消費重視の学習材料
- 第三節 情意に触れた学習材料
- 第四節 教科目の整理と教科内容の改造
- 第五節 自ら学習材料をとれ
- 第六節 材料の画一を排する
- 第七節 分科学習と合科学習
- 第八節 学習系統案と学習細目
- 第九節 学習材料の排列と統一
- 第十節 学習材料の程度上進
- 第六章 学習指導の教師
- 第一節 根本思想の一変
- 第二節 学習指導者の資格
- 第三節 学校長と教師
- 第四節 教師の自己評価
- 第五節 結論
- 第七章 学習の基礎
- 第一節 学習の身体的基礎
- 第二節 学習の精神的基礎
- 第三節 学習の道徳的基礎
- 第八章 学習の形式
- 第一節 序論
- 第二節 質疑法
- 第三節 解疑法
- 第九章 学習の順序
- 第一節 独自学習
- 第二節 相互学習
- 第十章 学級の編成
- 第一節 学級の意義
- 第二節 学級の沿革
- 第三節 学級組織に対する要求
- 第十一章 時間割の編成
- 第一節 時間割に対する要求
- 第二節 時間割編成の実際
- 第十二章 学習指導案
- 第一節 学習指導案の必要
- 第二節 学習指導案の内容
- 第十三章 学習の実際
- 第一節 国語の学習
- 第二節 児童数学の学習
- 第三節 図画の学習
- 第十四章 学習の効果と進歩の段階
- 第一節 学習の効果
- 第二節 自律的学習に伴いやすい欠陥およびその救済法
- 第三節 学習進歩の段階
- 付録
- 第一章 学習方法二元論
- 第一節 教育方法多元論
- 第二節 学習方法一元論
- 第二章 合科学習法
- 第一節 序説
- 第二節 合科学習の要旨
- 第三節 大合科学習の環境整理
- 第四節 大合科学習の方法
- 解説 /中野 光
この選集をよまれる人びとに
監修者
日本の教育は、戦後の改革によって、明治維新以来の大きな変動を経験した。そのことは、一方では教育者たちのエネルギーを解放し、さまざまな質の高い実践を生みだし、教育研究者に広い研究分野を開き、研究的努力を刺激してきた。さらに重要なことは国民の教育に対する新しい欲求をめざまして、大きく教育的状況を変えつつあることである。しかし日本の政治は、このような変化に照応してその成果を建設的に組織していく展望に欠け、むしろ民主的な教育の発展に不安を抱いて、これを抑圧しようとさえ試み、ここに大きな混乱と不安定とを生み出している。
もちろん、私たちは、教育の内部に、さまざまな問題が存在していることを無視してはいないし、それが今日の教育状況をつくり出す弱点になっていることに目を掩っているわけではない。また教育学研究の分野でも、その理論的な追求が十分に組織的にすすめられているともいいがたい。これもまた日本の教育の発展にとって、決して幸福な状況ではない。このような段階での日本の教育者および教育学研究者の任務は、まずなによりも、私たち自身の生み出した教育実践の成果を理論的に組織するために、私たちの教育および教育研究の遺産を十分学びつくすことである。しかし、それに加えて今日の状況は、国際的な教育学の遺産をふまえた、より豊かで、的確な理論的発展を教育学に期待している。私たちは、そのために、世界の高い水準に達した教育的諸文献を、自由に研究し、先人がその社会と時代とにおいて組織した教育的理論から学ばなければならない。それは、単に、歴史的興味や過去への回顧のためではなく、まさに今日における教育発展の基礎たるべき教育理論の構築のためなのである。
「世界教育学選集」は右のような目的をもって、世界のすぐれた教育的諸文献を日本語に移して、教育者および教育研究者の便に供したいという希望に支えられて刊行されたものである。
私たちは、単に、歴史的興味によって、過去の教育理論をふりかえるのではないといった。このことは、この 「選集」の選択の原則に関することであるし、また読者の学習の態度にかかわることでもある。
すぐれた教育的理論は、著者たちが生きていた時代が当面していた教育的な、さらに社会的な諸問題を解決するために、著者たちが、現実批判を通して、あるべき教育の真実の姿を探究したものであった。私たちは、そこに、当時の科学の未発達や時代の主要関心の差異によって、もちろん多くの限界を見出すのである。そこには理論的に明らかな誤りさえも含まれている。にもかかわらず、現代の私たちは、著者たちがかれらの問題の解決にとりくむ、その努力の過程から生まれる思想や理論的成果の中に、現代の私たちがとりくむ諸問題の解決に光を与え、あるいは、教育的な価値の探究に方向を示唆し、さらに私たちが現代的諸条件のもとに実現すべき理念を読みとることができる。否、私たちが現実の教育的状況に対して、子どもへの愛情と人類の未来への信頼をもって、その問題に立ち向かうことによって、私たちは先人の苦闘の成果の中に、人類的な教育的価値の遺産を掘り当てることができる。
私たちは、このような確信のものに、私たちの教育的実践を鼓舞し、勇気を与え、私たちの理論的研究に光となり方向を指示してくれるであろうような先人の労作を選択した。私たちはこれらの労作を通じて人類の幸福と社会の進歩を求めて、教育に期待をかけた人びとのヒューマズニムと科学的探究の精神を、教育文化の遺産として継承し、これを守り、発展させることを目ざして、私たちの教育研究を深めてゆきたいと思う。
「選集」の邦訳は、それぞれ、原著者について専門的に研究している人びとによって行なわれている。大部分は忠実な完訳を旨としたが、やむをえない事情、たとえば、余りにも大部なものは、適当に省略を加えた。しかし、そのことによって、原著に学ぶ価値を減少しないように努力した。なおこの選集の刊行を継続して行ない、私たち日本の教育者および教育研究者に容易に利用できる資産を豊富にすることを期したいと思う。
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