自閉症支援のための基本シリーズ3
子どもに効果的な教材・教具の工夫

自閉症支援のための基本シリーズ3子どもに効果的な教材・教具の工夫

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子どもの成長を促す教材・教具とその効果的な活用法を解説

自閉症の子どもの成長、発達を促進するためにはどのような教材・教具を作成し、活用していけば効果的かをまとめたのが本書である。第1章では作成のポイントなど活用のあり方を、第2章では実践で役立つ活用法、指導、支援の具体例をわかりやすくまとめている。


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ISBN:
978-4-18-053341-1
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
2刷
対象:
小・中・高
仕様:
A5判 160頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第1章 自閉症の子どもと教材・教具
1 教材・教具がなぜ必要か
1◆教材・教具とは
2◆教材・教具作りのポイント
2 教材・教具の活用の原則
1◆主体的行動を引き出す
2◆生活を豊かにする
3◆成長・発達を促す
4◆機能,般化する
5◆コミュニケーション活動に有効である
第2章 効果的な教材・教具の工夫の実際
1 日常生活の指導
1 【朝の会】見通しをもって参加できるための支援
2 【衣服の着脱】ボタンとボタンホール教材の継続的段階的活用の工夫
3 【食事】VOCA(音声出力装置)を使ったコミュニケーション手段獲得に向けた指導
4 【掃除】1人でもできるよ!
5 【排泄】おしりを出さずにおしっこをしよう
6 【清潔(歯磨き)】手順カードを使った指導
2 学校行事
1 【入学式・卒業式】不安を軽減し,楽しんで参加するために
2 【運動会】わかって安心! 力を発揮!
3 【健康診断】お医者さんなんて,こわくない!
4 【文化祭(学校祭)】作業製品販売活動における工夫
3 校外活動
1 【交通機関の利用】バス通学の自立をめざして
2 【買い物】まかせて,1人で行けるよ!
3 【外食】好きなメニューを自分で注文!バイキングで美味しく食べて自分で支払い!
4 【宿泊学習】楽しい体験をするための支援
4 働く活動
1 【作業学習】木材加工を中心にした教材・教具の工夫
2 【現場実習】学校と現場実習先で自分の行動を管理するために
3 【就労現場】もっている能力を引き出すために
4 【家事労働(食事作り)】1人分の簡単な料理を作ろう
5 【余暇活動】バスケットボールクラブチーム『ウェスト』の取り組みを通して
5 教科指導
1 【国語】「絵日記」を使った支援
2 【算数】計算力を培うためのボウリングゲーム
3 【数学】ことばと数字・数量と具体物を整理して理解するための教材・教具の工夫
4 【音楽】児童が活動にスムーズに参加できるための工夫
5 【美術】豊かな表現は,子どもの個性を生かした教材作りから
6 【体育】体の動きを引き出す大型の教材・教具の魅力
7 【自立活動】アセスメントに基づいた教材・教具の例

まえがき

 自閉症の子どもたちを指導するためには教材・教具は大変重要で,学習を成立させる上でも欠かせません。しかし,ただ教材・教具を作成すればよいのではないことは言うまでもありません。どういう目的で,何のために教材・教具を作成するのか,教材・教具が彼らの成長,発達にどういう役割を果たすのか,どのように活用すればより効果的か,を明確にする必要があります。個々の障害や特性,また認知能力や興味,関心,強さ,弱さなどを把握した上で,個々の実態に即した適切な教材・教具を工夫,開発し,それを有効に活用することで,はじめて子どもの成長,発達は促進されます。どういう教材・教具を作成するかで,彼らの学習意欲,学習達成度,情緒の安定度は間違いなく違ってきます。

 最近は,どこの学校でも,自閉症の子どもたちに対してさまざまな教材・教具が準備され,学習が展開されています。しかし,それが子どもの成長,発達を促進するものになっているかと言うと,必ずしも,そうではないケースも見られます。明らかに,教材・教具を使っているために子どもの生活の質が低下しているのではないかと思えるケースもあります。

 例えば,先生が絵カードを使って学習の内容を指示しました。しかし,子どもは絵カードはまったく見ようとせず,自分勝手な行動をしています。作業学習が正確に,スムーズに進められるようにと先生は補助具を作り,させようとするのですが,子どもは補助具の使い方がわからずパニックを起こしています。先生が具体物を使って活動順序,方法を説明しましたが,いざ活動させると子どもはまったく違った順序,方法で始めています。

 もちろん一方では,大変効果的な教材・教具に出会うこともあります。

 ある先生は,数がまったく数えられない子どもに,10個の製品の袋詰め作業をさせていました。すべてを満たしたら10個になる枠組教具を作り,数を数えることができなくても1人で作業ができるようにしていました。子どもは何の指示も援助も受けることなく作業ができることに喜びを感じ,生き生きと作業を進めていました。

 本書は,自閉症の子どもの成長,発達を促進するためにはどのような教材・教具を作成すればよいか,どのように活用していけば効果的かをまとめたものです。

 第1章では,自閉症の子どもになぜ教材・教具が必要か,教材・教具の作成のポイントを整理すると共に,5つの活用の原則(@主体的行動を引き出す教材・教具,A生活を豊かにする教材・教具,B成長・発達を促す教材・教具,C機能,般化する教材・教具,Dコミュニケーション活動に有効な教材・教具)を示し,より効果的な活用のあり方についてまとめました。

 言うまでもなく,教材・教具は,ある特定の授業や学習にだけ必要なものではありません。子どもたちがよりよい学校生活を送り,より豊かな質の高い生活を実現するためには,すべての生活場面で必要なものです。

 第2章では,こうした点を考慮し,どの学校でも重視して取り組んでいる学習活動(日常生活の指導,学校行事,校外活動,働く学習,教科指導)の実際を取り上げました。それぞれの学習活動において,どのような教材・教具を作り,活用すればより効果的かについて,全国で自閉症の子どもに熱心に取り組み,成果を上げておられる先生方にその実践をまとめていただきました。教材・教具の工夫や,活用法,また指導,支援の具体例がわかりやすく整理されていますので,必ずや日々の実践で役立つものと確信をしています。

 なお,本書は「自閉症支援のための基本シリーズ」の第3巻としてまとめたものです。第1巻「自閉症の基本障害の理解とその支援・対応法」,第2巻「不適切行動への効果的支援・対応法」,第4巻「コミュニケーション能力を高める指導のアイデア」,第5巻「子どもに効果的な授業の工夫」も刊行していますので,あわせてお読みいただきたく存じます。この基本シリーズを通して,自閉症への効果的支援のあり方を確認し,日々の取り組みに生かしていただければ幸いです。

 本書の編集に当たり,ご多用中原稿をご執筆いただいた先生方には,心から謝意を表する次第です。また,本書の企画,編集でお世話になった,明治図書出版編集部の三橋由美子氏,及び校正にたずさわられた橘亜希氏には深く感謝いたします。


  2008年11月   編著者 /上岡 一世

著者紹介

上岡 一世(うえおか かずとし)著書を検索»

1946年高知県生まれ。高知大学教育学部卒。鳴門教育大学大学院修了。

高知大学教育学部附属中学校教諭(特殊学級),愛媛大学教育学部附属養護学校教諭,愛媛大学教育学部助教授を経て,現在愛媛大学教育学部教授,愛媛大学教育学部附属特別支援学校校長。専門は特別支援教育。

主に自閉症の人の自立や社会参加,就労について研究している。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書

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