- 監修のことば
- はじめに
- 第1章 自閉症の基本的な理解
- 1 自閉症とは,どのような障害なのか?
- 1◆発見の歴史
- 2◆まれに見られる自閉症スペクトラム障害・レット症候群
- 3◆小児期崩壊性障害
- 4◆原因は,先天的な脳の機能障害
- 2 診断基準からわかる特性
- 1◆対人的相互反応における質的な障害
- 2◆コミュニケーションの質的な障害
- 3◆行動,興味,および活動の限定された反復的で常同的な様式
- 3 自閉症の中核的特性
- 1◆社会的能力 対人的な能力
- 2◆言語能力
- 4 医学研究が示唆する基本障害
- 第2章 自閉症の特性を理解した支援と指導の実際
- 1 自閉症児への効果的な支援と対応
- 1◆効果的支援の共通要素
- 2◆地域に根ざした支援プログラム
- 2 発達障害者支援センターから見えてきた発達障害者支援の課題
- 3 個別評価から構造化された指導へ
- 4 強度行動障害を示す人への包括的な支援
- 第3章 高機能自閉症児へのSSTと感情表出を促す指導
- 1 コンピュータ学習を動機付けとしたSST
- 2 お話日記を使ってコミュニケーション〜お話って楽しいな〜
- 3 視覚的教材(イラスト)を用いた感情理解の支援の理論的根拠
- 第4章 自閉症の子への学習や生活支援の工夫
- 1 「シンプル」「クリアー」「ビジュアル」をキーポイントにした指導・支援の工夫
- 2 次世代のSSTの指導者を育てる
- 3 TEACCHプログラムのアイディアを導入した指導の工夫
- 4 ネットワークを活用した自閉症児支援の取り組み
- 5 学校体制で取り組む特別支援教育の実際
- 6 教室・教材を視覚化して,すべての児童にわかりやすい授業づくり
- 7 在籍学級,通級指導教室,家庭の連携で不登校を解消
- 8 苦手さやとまどいに応える通級指導教室での支援
- 9 中学校特別支援学級「きらめき」学級での取り組み
- 10 有意味な音声言語をもたない孤立傾向のあるA君への支援
- 11 パニックを繰り返す生徒への取り組み
- 12 保護者の家庭での支援
監修のことば
障害児教育は教育の原点である,と言われています。私は障害児教育の原点は自閉症教育にある,と思っています。知的障害の子どもの指導で成果を上げた指導者が,自閉症の子どもの指導でも同じように成果を上げるとは限りません。しかし,自閉症の子どもの指導で成果を上げた指導者は間違いなく知的障害の子どもの指導においても成果を上げることができます。
自閉症の子どもを成長,発達させるためには,障害の正しい理解,発達特性の把握,子どもの興味,関心,強さ,弱さの把握,教育的ニーズの把握,目標課題の設定,最適支援の検討など,子どもの生活実態を細かく把握,分析,理解する力が要求されます。まさに指導者に実践的指導力が身についていないと,できる教育ではないのです。自閉症の子どもを成長,発達させられる指導者であれば他の障害にも通用するし,成果も上げられるのです。
今では,児童生徒の半数近くが自閉症だという知的障害特別支援学校も少なくありません。特別支援学級においてもこの傾向は見られ,自閉症の子どもが目立って多くなってきています。特別支援学校でも特別支援学級でも自閉症の子どもがいないクラスはほとんどなく,自閉症の子どもを抜きにした教育は考えられなくなってきています。言い換えれば,自閉症の子どもに対する効果的な指導を考えなければ教育が成り立たない状況にあります。
本シリーズ(第1巻〜第5巻)は自閉症に関わる多くの指導者が効果的な支援法,対応法を共有し,実践の場で成果を上げることができるようになることを意図して監修したものです。
全国の特別支援教育に取り組んでおられる多くの指導者が,本シリーズを通して自閉症教育を正しく理解し,質の高い教育実践が展開できるようになることを心から願っております。
2009年5月 監修者 /上岡 一世
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- 明治図書