- はじめに
- 第一章 言語活動を通した「伝統的な言語文化」に親しむ授業づくりのポイント
- 1 「伝統的な言語文化」の教育の目的
- 1 「伝統的な言語文化」とは何か
- 2 「伝統的な言語文化」の教育の目的
- 3 言語活動を通した親しむ授業づくりの基本
- 2 「伝統的な言語文化」に親しむ授業づくりの方法
- 1 教材の特性を生かす─教材提示の方法
- 2 言語活動を通して生き生きとした授業をつくる
- 第二章 「伝統的な言語文化」に親しむ授業例
- 1 第1・2学年が楽しく取り組む授業例─読み聞かせと音読中心で盛り上がる
- 1 【1年】昔話の世界を楽しみましょう 見付けよう お気に入りの場面
- 2 【1年】「ともだちかるた」であいうえお 五十音を五・七・五のリズムで楽しむ
- 3 【1年】「おはなしでてこい」 こんなやまんばもいるよ
- 4 【1年】「神話の世界を楽しもう」 「いなばの白うさぎ」の絵本を比べて聞く
- 5 【1年】じぶんだけのお話をかたりましょう 短い民話を友達に語りなおす
- 6 【2年】昔話とその童謡に親しもう 「うらしまたろう」の歌詞の四番は…
- 7 【2年】童謡から広げよう!昔話の世界 うたのお話、知ってるかな?
- 8 【2年】ちいきのみんわをかたろう お話会にごしょうたい
- 9 【2年】お兄さん・お姉さんに紙芝居で紹介しよう 昔の言葉のおもしろさを伝える
- 10 【2年】昔話の音楽劇を作ろう 「花咲かじいさん」を歌って語ろう
- 2 第3・4学年が楽しく取り組む授業例─声が弾む!遊びで楽しむ!
- 1 【3年】慣用句漫画辞典を作ろう
- 2 【3年】お正月だ!百人一首を楽しもう! 「むすめふさほせ」の歌を中心に
- 3 【3年】慣用句人形(かんようくん)を作ろう 体を使った慣用句に親しもう
- 4 【3年】ことわざ・ここで使うとかっこいい 使用場面を設定したクイズづくり
- 5 【3年】俳句の良さを見つけよう 色・ようす・気持ちを観点として
- 6 【4年】読んでみよう 作ってみよう@ のぞいてみよう 俳句の世界
- 7 【4年】読んでみよう 作ってみようA のぞいてみよう 短歌の世界
- 8 【4年】校歌の歌う「さぬき」とわたしたち
- 9 【4年】故事成語・ことわざを劇で表現する 「漁夫の利」など
- 10 【4年】唱歌の歌詞に親しもう 「われは海の子」を絵葉書に
- 3 第5・6学年が楽しく取り組む授業例─表現活動を通じて楽しむ
- 1 【5年】昔の人のものの見方・考え方を読み味わおう 「論語」を読み、自分の生き方を振り返る
- 2 【5年】時代をこえた対話に誘う 単元「長明さんへ─わたしからあなたへ─」より
- 3 【6年】春眠 暁を覚えず… 漢詩の世界とひびきを音読で伝えよう
- 4 【6年】今でも使える古人の知恵 単元「現代版故事成語を書こう」より
- 5 【6年】「扇の的」(「平家物語」) 群読でことばの響きを楽しもう
- 6 【6年】古典教材で書き手のものの見方を考える授業づくり 「古典に親しもう」の実践より
- 7 【6年】芭蕉の立場に立って俳句を味わう 「言葉と文化 短歌と俳句」の実践より
- 8 【6年】千年前の物語「竹取物語」を読もう
- 9 【6年】狂言「柿山伏」を読み味わおう 狂言のおもしろさを読みで伝えよう
- 10 【6年】古典の世界へ ワンダーワンダー 「雲」を通して万葉の世界を探る
- 第三章 「伝統的な言語文化」を生かす学習指導のポイント
- 1 指導計画のポイント
- 1 授業の構造を考える─目標の二重構造化
- 2 表現へと開く
- 2 教材開発の観点
- 1 親しみやすい教材の開発
- 2 伝統を受け止め、表現活動へとつなげる教材の開発
- 3 古典について解説した文章
- 3 「伝統的な言語文化」の活用
- 1 日本人としての情緒・感性の育成
- 2 伝統的な言語文化の学習指導と道徳
- 3 地域教材の扱い
- 付録 資料編
- ◎地域教材開発マップ
- ◎教材研究のための参考文献一覧
- ◎古典の地名と現在の日本地図
はじめに
二〇〇八年に告知された学習指導要領によって、二〇一一年度から「伝統的な言語文化」の学習指導が全面的に実施されることになった。学習指導要領によれば、伝統的な言語文化は、「文化としての言語」、「文化的な言語生活」、「多様な言語芸術や芸能」とされ、従来の古典よりも幅広くとらえられている。古典のとらえ方の変更とともに、従来、小学校五年生からであった古典の学習指導の対象が小学校全学年に及ぶことになった。大きな転換である。この「伝統的な言語文化」の学習指導をどのように充実させるかは、今日の国語科教育の切実な課題の一つであろう。
「伝統的な言語文化」の学習指導は、基本的には、その「受容」ではなく、その価値の「創造的な発見」に至らせることを求めてなされねばならない。その継承と発展も価値の創造的な発見によって確かなものとなる。また、その指導にあたっては、学習者の学びが、楽しく豊かなものとなって個々に根付き、ひいては、自己を見つめ、生活を見つめ、認識を深められるよう心がけていきたい。
本書は、このような学習指導の課題に、理論(第一章・第三章)と、具体的な授業実践の提示(第二章)によって応えることを目指して刊行された。本書の特色は、次の通りである。
○短時間で行う学習指導例の提示─楽しく充実した授業を短時間で行うにはどうすればよいか。
○豊富な教材開発と編成例の提示─生き生きとした学習活動のための教材をどう開発し、編成するか。
○多様な言語活動例の提示─夢中になって取り組む言語活動を授業にどう仕組むか。
○発展的な指導過程例の提示─興味・関心を引き出し、学びを拡充・発展させる指導過程をどう創るか。
○効果的な指導法例の提示―確かな学びを成立させるためには、どのような方法が有効であろうか。
本書は、「伝統的な言語文化」の学習指導のみならず、国語科教育の豊かな創造に資するものともなっている。
刊行にあたっては、京都教育大学の谷口匡教授(漢文学)に自らの実践に基づいて執筆いただいた。高知大学の武久康高准教授にも、国文学研究の知見を踏まえて執筆いただいた。ここに記して感謝申し上げたい。
また、明治図書編集部の木山麻衣子氏には、一方ならぬご高配を得た。ここに記して深謝申し上げる。
二〇一二年一一月 編著者 /渡辺 春美
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