- まえがき
- Stage1 つまずきがある子への基礎対応
- Lesson1 いくら叱ってもふざけた行動がなおりません
- Lesson2 この子は褒めるところがないんです
- Lesson3 黒板の文字を写すのに,時間がかかり過ぎます
- Lesson4 授業中のおしゃべりがやめられません
- Lesson5 真面目すぎて,融通がききません
- Stage2 二次障害の背景と対応
- Lesson6 もともとの障害特性×無理解=二次障害
- Lesson7 周囲の関わり方の大きな変化×子どもの混乱=関係性の悪化
- Lesson8 (発達課題の先送り+保護者の無理解)×学年の進行=いじめ
- Lesson9 自尊感情の低下×□=登校しぶり
- Lesson10 学習性無力感×達成感のない学校生活=授業中の他児妨害
- Lesson11 発達障害+熱心な無理解者=二次的症状の深刻化
- Stage3 つまずきがある子の輝かせ方
- Lesson12 その子の価値を見いだす
- Lesson13 子どもとの信頼関係を築く
- Lesson14 学級経営と特別支援教育のバランスを考える
- Lesson15 リフレーミングで関わりを変える
- Lesson16 褒め方のコツを理解する
- Lesson17 お試し行動を理解し,振り回されないようにする
- Stage4 高校の特別支援教育・夜明け前
- Lesson18 いまだに「教育課題」と認識されていないという現実
- Lesson19 理解が進みにくい背景を「教師側の事情」から考える
- Lesson20 指導困難校,課題集中校の特別支援教育をどう考えるか
- Lesson21 進学校ならではの特別支援教育的な事情
- Lesson22 ソーシャルリソースとしての高校の役割
- Lesson23 卒業後の追跡調査から見えてきた「大きな課題」
- Stage5 「特別支援教育あるある」の検証
- Lesson24 「教室の前面に掲示物を貼ってはいけない」は本当か?
- Lesson25 「具体的ではあるが,現実的ではない支援」の提案が混乱を招く?
- Lesson26 「ハンドサイン」の提示は,「視覚化」と呼べるのか?
- Lesson27 授業の流れを示す支援ツールがもたらす「負の要素」
- Lesson28 暴言・汚言を「無視する」ことはできるのか?
- Lesson29 合理的配慮が「甘え」や「易きに流れる」的にとらえられている現実
- Stage6 個と集団の成長を考える
- Lesson30 特別支援教育と学級経営を「両輪」で考える時の優先順位
- Lesson31 発達につまずきがある子の周囲の子へのアプローチ
- Lesson32 教師と子どもとの「縦糸(垂直的関係)」を太くする
- Lesson33 崩壊学級が示す,子どもとの関係性のつくり方のヒント
- Lesson34 子ども同士をつなぐ「横糸」を育てる
- Lesson35 「学級じまい」・「学級とじ」の実践を!
- あとがき
まえがき
こんにちは。特別支援学校の地域支援担当コーディネーターとして,小学校・中学校・高校等への相談支援に携わってきた川上と申します。
特別支援教育についての相談というと,一般的には特別支援学級や通級による指導などの個別的な指導の場をイメージされるのですが,私のもとに寄せられるご依頼の90%以上は「通常の学級」からのご相談です。そのため,本書は「通常の学級における特別支援教育」のことを取り上げます。
巡回先の学校に行くと,その学校の特別支援教育コーディネーターの先生やスクールカウンセラーさん(時には校長先生をはじめ管理職の先生も)が,教室を回るときに同行してくださいます。一緒に回っていただく際に,私は,実際の子どもたちの様子からつまずきをどう読み解いたのかを伝えたり,教室内の掲示物や雰囲気から先生にはどんなことが求められるかを説明したりします。
どうやら,それがとても新鮮な視点をもたらすことができるらしく,「ライブで講義を受けているようで勉強になる!」,「実際に子どもが目の前にいるので,具体的でわかりやすい!」といわれるようになりました。いつの頃からか,私が巡回に行く先々で,複数の先生が一緒に教室を回るようになり,さらには,私がその場で何をどう見ているのかを質問してくださるようにすらなりました。それがこの本のコンセプトの始まりです。
本書は,筆者と巡回先の先生・同僚の若手特別支援教育コーディネーター等との「対話」と,そこで話題になったことについての「解説」を中心に,話が進んでいきます。Lessonという形にして一話ごとに完結していますので,どこからお読みいただいてもかまいません。ただ,少しずつ理解を深められるように六つのステージを設定していますので,ステップアップを目指したいという方には,Stage1から読み進めていただくことをおすすめします。
それぞれのステージでは,以下のテーマを設定しています。
Stage1では,「ケーススタディ」を取り上げています。子どもの表面的な姿を変えようとする前に,そのつまずきの背景要因を探ることの大切さを学ぶことができると思います。
Stage2では,「二次障害」をテーマにしました。二次障害は,誤解や無理解によって生じます。「二次障害に至らせないために正しい理解が広がってほしい」という意図を込めて,本書の序盤に配置しました。このステージだけの試みである「方程式」もぜひ楽しんでください。
Stage3では,「発達につまずきがある子の輝かせ方」をまとめました。私は,このテーマがとても気に入っていて,特別支援教育は「うまくいかないことがある子どもの価値を高める教育」だと思っています。
Stage4では,「高等学校の特別支援教育」を取り上げました。高校は各校によって実状が異なるため,他校をモデルにしても特別支援教育についての取り組みが進みにくいという現状があります。それぞれの学校の事情に合わせた取り組みを紹介します。
Stage5では,「特別支援教育あるあるの検証」を行います。特別支援学校のコーディネーターも世代交代があります。若手の特別支援教育コーディネーターがもつ新たな視点をもとに,これまでに特別支援教育の世界で「当たり前」とされてきたことを見なおしていきます。
Stage6では,「特別支援教育(個)と学級経営(集団)を両輪で考えること」について整理しました。通常の学級では,特別支援教育よりも学級経営のほうが重要で優先順位も高いです。両立させるための方法論を示します。
ぜひ,ライブ講義の世界にどっぷりと浸っていただきたいと思います。そして,本書が読者の皆さんの心の支えになり,ひとりでも多くの子どもたちの指導の充実につながることを願ってやみません。
2018年4月 /川上 康則
※本書で用いられているすべての事例は,実際のケースを参考にした架空のものです。教師・子どもの名前もすべて仮名です。
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