- まえがき
- T章 子どもの個性的発達と特別支援教育
- /広瀬 信雄 /宮井 清香
- 1 小学校中・高学年の子どもがつくる集団の意味
- (1) 教育が導く小学生の心理発達
- (2) 教室という枠内だけで解決できること・できないこと
- 2 他者を包みこむしなやかで丈夫な集団
- (1) “自分のことばを伝える”学級づくり
- (2) 他人の言動を受けとめる集団づくり
- (3) たてわり活動にみる自然なかかわり
- 3 長所が短所を包みこむやわらかな教育
- (1) 能力差・個人差に対応した指導の原則
- (2) しだいに子どもが子どもを引き込む学級づくり
- (3) 通常学級の教師の専門性
- (4) 統合授業―究極の授業づくり
- U章 小学校中・高学年の学級づくりのポイント
- *伸介に友だちをつくりたい* /津久田 あき
- 1 はじめに
- 2 伸介のこだわりと孤立 *1学期*
- 3 伸介の「自分勝手」はみんなの願い
- 4 伸介の要求はみんなの要求 *ルールづくり*
- 5 伸介が引き出すもの
- 6 班で要求する *2学期*
- 7 約束を大事にすること
- 8 学級内クラブ *ルールを変えること*
- 9 学級内クラブ *友だちと活動すること*
- 10 特別ルール *3学期*
- 11 伸介に寄り添う
- 12 ぼく,友だちいっぱいになった
- 13 おわりに *伸介は宝*
- V章 一人ひとりを大切にする仲間づくり
- *ヒロシの心の声を言語化させてあげたい* /神坂 大河
- 1 はじめに
- 2 ヒロシのプロフィール
- 3 ヒロシを担任するまでにしたこと
- 4 ヒロシとの出会い,そして…
- 5 ヒロシの生きづらさ,そして居場所
- 6 私が立てた方針
- 7 初めは遊びから
- 8 野球が対話のきっかけに
- 9 父親的にかかわる中で
- 10 学期末懇談から2学期へ
- 11 キレにくくなったヒロシと女子の成長
- 12 祖父の死を境に
- 13 ヒロシの言葉から読み取れる成長の軌跡
- 14 「のだめカンタービレ」にはまった
- 15 ケイトの勝利! 最後にドラマがドラマを生み出した?
- 16 おわりに
- W章 教科の抽象性と生活性をふまえた授業づくり
- *理科の実践から* /谷田 健治
- 1 高学年における理科の難しさ
- (1) 子どもの願いは,わかる楽しい授業,そして「実験したい!」
- (2) 条件的なものの見方をすることの難しさ
- (3) 位置関係や空間をとらえることの難しさ
- (4) 他の教科と関連した難しさ
- 2 何を大切にして授業をすすめたらいいのか
- (1) 授業をどうとらえるか
- (2) 子どもの実態を知ることから
- (3) どのような教材を使用するか
- (4) 授業の進め方
- 3 具体的な実践例 *「てこ」の学習(5年)*
- X章 発達障害児の学習参加を高める授業の展開
- *表現教科の実践から* /里中 広美
- 1 発達障害児にとっての体育・音楽・図工の授業
- (1) ピンチもチャンスもあるのが表現教科
- (2) 表現教科の授業で配慮していること
- (3) 表現教科の授業で大事にしていること
- 2 表現教科をきっかけにつながりをつくる
- (1) ヨサコイソーランで輝いた大地
- (2) 塁と風太の基地作り
- (3) リコーダーと鍵盤ハーモニカの発表を通して
- Y章 仲間と直接向かい合う授業
- /上森 さくら
- 1 若者と「キャラ」
- (1) 「キャラ」を演じる若者たち
- (2) 「キャラ」を貼られる若者たち
- 2 ギャングエイジ期に学ぶべきこと
- (1) ギャングエイジ期の重要さと保障の課題
- (2) ゲームという舞台の上での遊び
- (3) 仲間と直接向き合う遊びをつくりだす
- 3 仲間と直接向かい合う授業
- (1) 授業こそチャンス
- (2) 授業で生活を引き出すために
- Z章 多様な学習集団を意識した指導案づくり
- /高橋 浩平
- 1 はじめに
- 2 集団や個人を把握する
- (1) 個人個人の実態把握
- (2) 班(あるいはグループ)の実態把握
- (3) 学級全体の実態把握
- 3 指導案づくりの実際
- (1) 目標の設定
- (2) 展開
- (3) 多様な学習集団での学習
- (4) ゲストティーチャーを使った授業
- 4 基本においておきたいこと
- (1) 「指導案づくり」は授業の設計図づくりである
- (2) 「目標−方法」のプロセスを明確にする
- (3) 指導案は授業を交流しあう材料である
- 5 おわりに
- [章 自己肯定感を高める子ども集団
- /高橋 浩平
- 1 はじめに
- 2 通常学級という場
- 3 自己肯定感が持てない子どもたち
- 4 自己肯定感を高める教師の働きかけ
- (1) ほめる
- (2) プライドを尊重する
- (3) 挽回のチャンスを与える
- 5 自己肯定感を高める子どもを育てる学校・学級の運営
- (1) 「いい集団」の雰囲気づくり
- (2) 「あこがれ」を持てる
- (3) いろいろな人からほめられる
- 6 おわりに
- \章 すべての子どもの学力保障と多様な学習支援の提供
- /新井 英靖
- 1 「確かな学力」の育成と「個に応じた指導」
- 2 「確かな学力」の育成と特別支援教育
- 3 「つまずき」を意識したきめ細かい教師のかかわり
- 4 「単元」を流れでとらえることの重要性
- 5 学び合いを喚起するための教師の指導性
- 【コラム1】 気になる子どもの休み時間*楽しいはずの休み時間が* /太田 茂
- 【コラム2】 「消去してしまいたい自分」とたたかっている塾っ子 /山本 美紀
まえがき
平成19年に特別支援教育がスタートして2年になる。通常の学校で障害のある子どもの支援が本格的に取り上げられ出したのだから,画期的なことであった。特別な支援に必要な教育条件やコーディネーター等の体制の整備,発達障害児の理解とそれに応じた支援方法の研修が主に議論されてきた。しかし,発達障害を含めて「気になる子」への対応が求められる日々の学校で教育実践をどう進めるのか,そのための理論と方法はまだまだ明らかにされてはいない。
この全3巻シリーズは,特別支援教育を変え,教育実践をつくり出すための方向を展望する。その柱は「授業づくりと学級づくり」である。先生方が積み重ねてこられた授業や学級づくりの指導力が十分に発揮されるとき,特別支援の努力は実を結ぶからである。日々の教室では,ともすれば発達障害の子どもの行動とその改善だけに目を向けがちである。授業をつくり,学級づくりの充実を図るという教育実践の基本に立ち帰ることが,特別支援教育を変えるための鍵だと考える。
授業づくりでは,◯特別支援の視点からこれまでの授業づくりをふりかえり,◯新しい授業方法の開発をめざして,特別支援教育を変える実践の方法を展望する。
授業の基盤である学級づくりでは,◯生活指導と学級づくりの原則をふまえ,◯特別な支援と集団づくりを結びつけ,学級づくりの場面で必要な実践の方法を示す。
この第2巻では,小学校中学年から高学年の時期に求められる授業づくりと学級づくりの方向を展望する。思春期を境にした子どもたちに寄り添い,実践を展開する柱は次の三つである。
@ 自分づくりに向かう基礎的な力をどう育てるか
A 友達との差が出てくる学習にどう対応するか
B 仲間づくりが本格化する時期の支援をどう進めるか
9本の実践と理論では,◯子ども理解(個性や自己肯定感を育てる支援の方法),◯教科の指導(学力差や多様なニーズに応える授業づくりの方法),◯仲間づくり(文化活動を通した居場所づくり・集団づくりの方法)が示されている。
特別支援教育の成果を焦れば焦るほど,子どもたちの成長にはつながらず,取り組みが振り出しに戻ることさえある。同僚や保護者とつながりながら,じっくりと実践をつくる姿勢が求められる。このシリーズでは,教科指導や生活指導を軸に特別支援教育を変えようとされてきた方々にご協力いただいた。じっくりと,しかし,確かな理論と方法に支えられた授業と学級づくりを進め,特別支援教育を変えようと日々努力されておられる先生方に広くご活用いただき,教育実践の展望を開いていくための一助になれば幸いである。
本シリーズの刊行にあたって,明治図書の長沼啓太氏には企画段階から大変お世話になった。衷心よりお礼申し上げたい。
平成21年3月 /湯浅 恭正
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- 明治図書