- まえがき
- T章 気になる子どもの発達と特別支援教育
- /新井 英靖
- 1 「発達の基盤が弱い子ども」が増えている
- 2 子どもの危機か社会の危機か
- 3 特別支援教育の視点からの発達支援
- 4 子どもの発達の基盤を支える学校・教師の役割
- U章 幼稚園・小学校低学年の学級づくりのポイント
- *集団への意識と集団に働きかける力を育てる指導* /山本 理絵
- 1 集団に対する意識の発達
- 2 集団からの「逸脱」の背景と集団活動における配慮
- (1) 活動の見通しを持たせる
- (2) 安心して期待をもって取り組める活動
- (3) 活動に自分で区切りをつけて切り替える
- (4) 思いを聞き取り共感し,表現できるように
- (5) 多動やパニックを誘発しない環境づくり
- 3 お互いに認め合える関係づくり
- (1) 好きな遊び・得意な活動を認める
- (2) 班・グループ活動を支えに共感的なかかわりをつくる
- (3) 安心して過ごせる居場所づくり
- (4) 集団の取り組みと納得と合意・相互理解
- V章 授業を通した人間関係力の形成
- /今井 理恵
- 1 人間関係力を形成する授業
- (1) 他者とのつながりを生み出す力=人間関係力
- (2) 授業のとらえ方
- (3) 子どもたちがつながる授業の構想
- 2 授業を通して人間関係力を育む視点
- (1) 教師の指導姿勢
- (2) 授業におけるきまりごとを問い直し,ルールをつくり出す
- (3) 人間関係力を形成するためのふりかえりとわかち合い
- W章 子どもの認識力の形成と国語の授業づくり
- /斎須 久依
- 1 国語科は生活の基盤
- (1) 学校と家庭はつながっている
- (2) 先生と子どもの絆をつくる
- (3) 子どもの家庭での様子を知る
- 2 国語の授業づくりの際の留意点
- (1) 同じ子どもの名前を呼び過ぎない
- (2) ポイントを押さえて教える
- 3 言葉を育む国語の指導
- (1) 子どもの瞳を輝かせる教室に
- (2) 上手に話せない子への支援
- (3) 話を聞いて世界を広げる
- (4) 読む習慣をつける
- (5) 書く意欲を育てる
- 4 居心地の良い学級をつくること
- X章 算数の「つまずき」と系統的な指導
- /有田 八州穂
- 1 算数における「つまずき」とはなにか
- 2 算数とはどんな学習なのか
- 3 小学校低学年までの算数で育てたい力
- (1) それは何といっても,数を抽象的に使いこなせることである
- (2) 次には数学感覚を磨かせたいことである
- 4 楽しい算数の授業にするためには
- 5 算数が苦手な児童への支援の原則と支援方法
- Y章 チーム・ティーチングを活かしたきめ細かな授業展開 /塚田 倫子
- 1 通常学級におけるチーム・ティーチング
- 2 個別の支援と学級全体への支援
- (1) 共通理解のポイント@「子どもの実態の理解」
- (2) 共通理解のポイントA「指導の方針を共有する」
- (3) 共通理解のポイントB「評価を話し合う」
- (4) 担任と支援員の役割分担
- 3 「学習のつまずき」を支援する
- (1) 集団とつながる支援
- (2) 個別指導で支援する
- 4 「行動上のつまずき」を支援する
- (1) 子どもの行動を理解する
- (2) 約束を決める
- 5 担任と支援員の連携
- 6 支援員に求められること
- Z章 どの子にもわかりやすい授業展開の工夫
- /吉田 茂孝
- 1 わかりやすい授業の誤解―個別支援の落とし穴
- 2 通常学級の子どもたちが参加するわかりやすい授業とは何か
- (1) わかりやすい授業を参加の視点から問い直す
- (2) 一斉指導と個に配慮した教材の選択方法
- 3 授業展開における教師の教授行為
- (1) 特別支援教育における個別支援の問題
- (2) 特別支援教育における一斉指導の意義
- 4 特別支援教育における個と集団の関係性
- (1) 特別支援教育における小集団の教育的効果
- (2) 特別支援教育における小集団成立の条件
- [章 「あそび」を通した集団づくりと指導の展開
- /小川 英彦
- 1 「あそび」の分類と発達的意味
- 2 集団づくり
- (1) 集団とは
- (2) 集団づくり
- 3 「あそび」を通した集団づくり
- (1) 学級(クラス)づくりへと
- (2) 授業づくりへと
- 4 「あそび」の指導の原則
- (1) 自主性・能動性を指導するとは
- (2) 一人ひとりを指導すること
- (3) 「交わり」への着目
- 5 集団になじまない,他児とのかかわりが弱い子どもの指導について
- \章 小1プロブレムと幼・保・小の連携
- /長瀬 美子
- 1 「小1プロブレム」とは何か
- 2 小1プロブレムに何を見るか―子どもたちの育ちそびれ
- (1) 他者とかかわる力の弱さ
- (2) 自己肯定感の欠如
- (3) 育ちそびれの原因
- 3 小1プロブレムの背景
- (1) 1年生のとまどい−制度と現実・意識のズレ
- (2) 教育目的・方法の違い
- (3) 教員・保育士養成の課題
- 4 幼・保・小連携の必要性―「段差」の解消をどう図るか
- (1) 「相互理解」の側面−固有な文化を知る
- (2) 「情報交換・共有」の側面
- (3) 「交流」の側面
- (4) 真の「連携」に向けて
- 【コラム1】 発達障害児を受け止めるクラスの雰囲気づくり /長瀬 美子
- 【コラム2】 保護者との連携の方法 /高橋 浩平
まえがき
平成19年に特別支援教育がスタートして2年になる。通常の学校で障害のある子どもの支援が本格的に取り上げられ出したのだから,画期的なことであった。特別な支援に必要な教育条件やコーディネーター等の体制の整備,発達障害児の理解とそれに応じた支援方法の研修が主に議論されてきた。しかし,発達障害を含めて「気になる子」への対応が求められる日々の学校で教育実践をどう進めるのか,そのための理論と方法はまだまだ明らかにされてはいない。
この全3巻シリーズは,特別支援教育を変え,教育実践をつくり出すための方向を展望する。その柱は「授業づくりと学級づくり」である。先生方が積み重ねてこられた授業や学級づくりの指導力が十分に発揮されるとき,特別支援の努力は実を結ぶからである。日々の教室では,ともすれば発達障害の子どもの行動とその改善だけに目を向けがちである。授業をつくり,学級づくりの充実を図るという教育実践の基本に立ち帰ることが,特別支援教育を変えるための鍵だと考える。
授業づくりでは,◯特別支援の視点からこれまでの授業づくりをふりかえり,◯新しい授業方法の開発をめざして,特別支援教育を変える実践の方法を展望する。
授業の基盤である学級づくりでは,◯生活指導と学級づくりの原則をふまえ,◯特別な支援と集団づくりを結びつけ,学級づくりの場面で必要な実践の方法を示す。
この第1巻では,幼児期から小学校低学年の時期に求められる授業づくり・学級づくりの方向を展望する。学齢期の発達に大きく影響するこの時期の実践の柱は次の三つである。
@ 保育の場と小学校との接続をどう図るか
A この時期にふさわしい学習支援と友達づくりをどう進めるか
B 保護者との連携をどう進めていくか
9つの実践と理論では,◯子ども理解(この時期に「気になる子」を理解する姿勢と方法),◯教科の指導(基礎・基本の力を育成する国語や算数の指導方法),◯仲間づくり(あそびの指導方法)の方向が示されている。
特別支援教育の成果を焦れば焦るほど,子どもたちの成長にはつながらず,取り組みが振り出しに戻ることさえある。同僚や保護者とつながりながら,じっくりと実践をつくる姿勢が求められる。このシリーズでは,教科指導や生活指導を軸に特別支援教育を変えようとされてきた方々にご協力いただいた。じっくりと,しかし,確かな理論と方法に支えられた授業と学級づくりを進め,特別支援教育を変えようと日々努力されておられる先生方に広くご活用いただき,教育実践の展望を開いていくための一助になれば幸いである。
本シリーズの刊行にあたって,明治図書の長沼啓太氏には企画段階から大変お世話になった。衷心よりお礼申し上げたい。
平成21年3月 /湯浅 恭正
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- 明治図書