- 少し長い「はじめに」
- Point1 ダイアモンドウィーク
- 1.ダイアモンドウィーク
- 2.ダイアモンドウィークのはじまり
- 3.ダイアモンドウィークに必ずやっておかなければならないこと
- @引き継ぎについて
- A座席決め
- Bネームシールの作成
- Cロッカーの割り当て
- D掲示計画を立てる
- E備品の整備について
- F初日の配付物の準備
- G自己紹介や指示・指導の内容を確認する
- H3日間の予定の確認と準備について
- 4.ダイアモンドウィークの心がけ
- Point2 黄金の3日間
- 1.黄金の3日間を正しくとらえる
- 2.黄金の3日間を支えるもの
- 3.分かりやすい指示ができているか
- @伝える情報を自分で理解しているか
- A伝える情報が多すぎないか
- B予定や指示を黒板で示すなどの工夫をしているか
- 4.3日間の時間の使い方
- @空白の時間を作らない
- A息抜きも大事
- 5.保護者を意識しているか
- Point3 給食指導
- 1.給食の前に
- @給食班,給食当番のローテーションや分担
- A配膳の方法と工夫
- B給食時間中の座席
- C「いただきます」のタイミング
- 2.給食時間中に
- @おかわりルール
- A食事中の出歩き・立ち歩き
- B給食時間中に必要となりそうな約束ごとをどうするか
- C下膳のルール
- 3.給食時間を終えて
- @いつ「ごちそうさま」をするか
- A担任は片付け終わるまでじっとガマン
- B自分たちで片付けができる状態になっているか
- 4.給食指導のエトセトラ
- ◆おかずのやりとり ◆数モノの残りは ◆給食の残しについて ◆給食を食べながら
- Point4 清掃指導
- 1.掃除の大切さについて繰り返し話して聞かせること
- 2.掃除のやり方を教えること
- @清掃用具の使い方を教える
- A班編制,ローテーションの仕方
- B「掃除の終わり方」を教える
- 3.掃除は生徒をほめるチャンス
- 4.清掃用具について
- @年度初めに先生自身が清掃用具の確認をすること
- A清掃用具入れの整備
- B清掃用具の定期的な点検
- 5.清掃の習慣付けのために
- Point5 朝・帰りの学活指導
- 1.朝の挨拶
- 2.遅刻の扱いははっきりしているか
- 3.伝達・指導事項をどのように伝えるか
- 4.帰りの学活
- 5.朝の学活エトセトラ
- ◆日直司会,意味ありますか ◆「1日の目標」って,意味ありますか ◆たまにはこんなお楽しみ
- Point6 座席の配置・席替え・座席表
- 1.座席の配置は意図的に決めているか
- 2.年度初めの座席順
- 3.席替えの方法とタイミング
- 4.席の配置や席替えの方法,タイミングは1年間を通して変えない
- 5.座席にまつわるエトセトラ
- ◆配付物を回収する ◆座席をきれいに揃えるために
- Point7 家庭訪問・三者面談
- 1.家庭訪問
- @家庭訪問の予定
- A時間を守って家庭訪問
- B家庭訪問では話す内容,聞く内容を整理しておく
- C家庭訪問で得た情報の扱いには気を付ける
- 2.三者面談
- @三者面談の趣旨を伝えているか
- Aよい部分を評価するよう心がけているか
- B保護者に気持ちよく帰ってもらえるような工夫をしているか
- Point8 生活記録・通知表・学級通信
- 1.生活記録
- @生活記録の提出
- A生活ノートと生徒指導上の配慮
- 2.通知表
- @通知表の大切なことは「正確性」,「整合性」
- A所見は「ほめること」を中心に
- B生徒に自己評価をさせる
- 3.学級通信
- @学級通信づくりは学級づくり
- A学級通信づくりの工夫
- B学級通信の留意点
- Point9 いじめを許さない学級経営
- 1.いじめはいつでも起こるという気構えを持つ
- 2.いじめを許さない姿勢をどう示すか
- 3.いじめを防ぐための日常の指導
- @安心して生活できる学級の雰囲気づくりのために
- A観察,声かけ,全体指導
- 4.起こってしまったいじめに適切に対応するために
- @組織的対応・緊急的な抑止が必要ないじめに対応する
- A組織的対応・いじめは複数の目で判断する
- Point10 不登校の予防と対応
- 1.不登校の理解
- @「学校で学ぶ」ということ
- A不登校の原因
- 2.不登校への防止に向けて
- @学級の雰囲気づくり
- A欠席・遅刻・早退に注意
- B無気力・疲れた表情,部活動でのつまずき
- 3.不登校の生徒への対応
- @初期対応:スピーディーに,丁寧に
- A中期的対応:生徒,保護者への定期的な連絡を
- B長期的対応:クラスとのつながりを大切にする
- Point11 学級経営と問題行動
- 1.生徒は「ことをし損じる」もの
- 2.生徒が「ことをし損じ」ないように…問題行動の未然防止
- @掲示物の工夫
- A「生徒が勝手に見た」は通用しない
- B人の物を壊させない
- 3.生徒が「ことをし損じ」たら…失敗に学ばせる指導のために
- @けんかの指導をする
- A「叱る」,「怒る」はどちらも大事
- B指導は全体指導と個別指導を分けて行う
- C物がなくなった時の指導
- D担任のいないところで問題行動を起こさせない
- E非行の指導
- 4.問題行動に対してどのように対応しているか
- @組織的対応を心がけているか
- Aスピードが必要な対応
- B先生の努力で乗り切ることも大切
- Point12 学力と学級経営
- 1.教科指導と学級経営
- 2.学習指導をどのように行うか
- @日常の学習指導
- Aテスト勉強の指導
- B提出物の指導
- 3.個別指導のあり方
- 4.学習指導のエトセトラ
- ◆メリハリを付ける ◆学級の平均点を上げることにこだわり過ぎない
- Point13 学級経営にまつわるQ&A
- Q1 教員志望の学生です。大学時代にはどのようなことに取り組んだらよいでしょうか。
- Q2 教師3年目になりますが,人前で話をすることが苦手です。どうしたら話すことが得意になるでしょうか。
- Q3 クラス対抗行事で頑張って勝ち,クラスを盛り上げて,団結力を高めたいと思います。どのようにしたらよいでしょうか。
- Q4 同じ学年にいろいろな先生がいて,考えを合わせることが難しく感じます。また,仕事の量に差があって,自分ばかりに仕事が回ってくることに納得できません。
- Q5 生徒からの相談についてどう答えたらよいか,分からないことがあり,困っています。また,いつも相談で放課後の時間がなくなってしまい,これでいいのかと思ってしまいます。
- Q6 自分のプライベートをどこまで伝えるべきでしょうか。電話番号は仕方がないと思いますが,住所や,特にメールとなると,生徒,家庭に知らせることがためらわれます。
- Q7 保護者との関わりがうまくいきません。どうしたらよいでしょうか。
- Q8 学年の終わりが近付いてきました。学級の最後に向けてどのような心がけを持ったらよいのでしょうか。
- あとがき
少し長い「はじめに」
「自分の担任するクラスの生徒に,『どんな学級になって欲しい』と伝えますか?」
先輩の先生にこんな質問をされたら,あなたはどのように答えるでしょうか。
担任として教壇に立つには,この質問の答えとなる「自分の言葉」を持たなければなりません。
「男女の仲がよくて,しっかり勉強に取り組めて,休む生徒が少なくて…」
「何でも一生懸命取り組めて,誰にでも優しくできて,元気があって…」
これはいただけません。先生が何を一番大切に思っているか,生徒にも保護者にも,同僚の先生にもイメージできません。
「行事でNo.1のクラス」
「勉強ができるクラス」
「話を聞く姿勢のあるクラス」
これもダメです。先生が伸ばしたいと思っている力が限定的すぎます。運動が苦手,歌が苦手,勉強が苦手な生徒はどうしたらよいのでしょうか。あるいは人の話を「だまって聞いていればよい」というのでは寂しすぎます。
生徒が教室の雰囲気をイメージでき,共感しやすい,短い言葉がよいのです。
「居心地のよいクラス」
これが,私が自分の担任するクラスに伝えるクラス像です。私は生徒に出会ってすぐ,年度の初めにこんな話をします。
私は,いつも自分のクラスが「居心地のよいクラス」になって欲しいと思っています。皆もそう思っているはずです。証拠を見せようか? では,「居心地の悪いクラス」が好きな人は手を挙げて! ほーら,いません!「居心地のよいクラス」に41票。41? もちろん私も含めてですよ!(笑)先生も,生徒も,皆「居心地のよいクラス」。どうです? いいでしょう。
なぜ,私がこのクラスに「居心地のよいクラス」になってほしいか,理由を話します。
皆は全員,勉強がすごくできる生徒ですか?
テスト,いつも100点の生徒ですか?
全員が運動神経抜群で,いつも100m走は一番でゴールですか?
マラソン大会は毎年拍手喝采の中をゴールするんですか?
「○○中のヒーロー」みたいにかっこいい?
「○○中のアイドル」みたいに注目を集めてる?
若くてかっこよくて,クールで人気のある先生なの?(笑)
そうではないと思います。中にはそういう人もいるかも知れませんが(それは立派なことだったり,うらやましいことではありますが),人それぞれに,持ち味,能力,魅力が違います。たとえどんなに優れた力があったとしても,そういう人だけが楽しく,居心地がよいクラスではいけない,と私は思っています。
私は,1つの教室に与えられた幸せの大きさは決まっていると思っています。例えばこのクラスには,こんなくらいの「幸せ」。
誰かが他の人の分のハッピーを取ってしまったら,他の人のハッピーが小さくなってしまいます。「1つの教室に与えられた幸せの大きさ」は決まっているのですから。
私はこの教室に与えられたハッピーを,お互いに譲り合いながら分け合って欲しいと思います。誰かがうんと得する訳でもなく,誰かがうんと損をする訳でもない。皆が「そこそこハッピー」。
それが「居心地のよいクラス」です。もちろん,私にもちっちゃくていいから,「ハッピー」を下さいね。(笑)
あなたが生徒に伝える「どんな学級になって欲しいかを表現する言葉」はどんな言葉でしょう。そしてそれを支えるものは先生のどのような想いでしょうか。
難しく考える必要はありません。
私が紹介した「居心地のよいクラス」という言葉,それを支える考え方は,私のオリジナルではありません。私も,初任の頃にはいろいろと迷いました。「正しいことを正しいと言えるクラス」,「正義が通用するクラス」,「集中力のあるクラス」,「それぞれの生徒が力を発揮できるクラス」,「思いやりを持って友達に接することのできるクラス」…。
そんな時,先輩の先生が私に話してくれたのが「居心地のよいクラス」でした。先輩の先生の話を,なるほどなぁとお聞きし,自分の中で反芻して生徒の前で繰り返し話すうち,だんだんと「自分の言葉」になってきたのです。
謙虚な気持ちでアンテナの感度を上げて見渡せば,必ず周囲の先輩の先生,あるいは実践を記した書物から,たくさんのヒントがもらえるはずです。それを自分の言葉として温め,育てて欲しいと思うのです。
さて,まえおきが長くなりました。本書の紹介をしたいと思います。
本書は中学校の学級経営について書かれた本です。これから教員になろうという学生,教員経験の浅い先生から,経験が10年程度の先生にも読み甲斐があるような内容を心がけました。書かれていることの多くは,私が教師になりたての頃に,見よう見まねで周囲の先生から学んだことです。ですから,とりわけ経験の浅い先生にとって,「そのような方法があるのか」「そのような話し方をすればよいのか」と,学級経営のヒントとなることが多いはずです。
学級経営の本は様々ありますが,本書が売りとしている点は3つあります。
1つ目は,1年間を通して学級経営上大切と思われる項目を取り上げ,心がけたいチェックポイントを示したことです。あわせて,指導の準備や取り組みのノウハウ,掲示物や図,ワークシートなどを紹介しました。ノウハウについては賛否ありますが,「知らないモノは実践できない」というのが私の考えです。まして,教員の大量退職時代(に伴う経験の浅い教員の増加),少子化に伴う小規模学校の増加という背景を考慮すれば,網羅的に要領よくまとめられたノウハウは,意味も価値もあると考えています。
2つ目です。学級担任として,私が生徒にどのような言葉を使って自分の考えを伝えたり,語ったりしているのか,私の「語り」を書き起こした点です。その一例として,先ほど「居心地のよいクラス」についての私の「語り」を紹介しました。これらの「語り」は,本書を読まれる先生に,そのまま使ってもらおうという意図で書いたものではありません。「語り」は生徒の実態,先生の考えや性格によって大きく変わるものです。また,他人の「語り」をそのまま使ってうまくいくものでもありません。けれども,他の担任の先生が学級で語っている言葉を耳にする機会はまずないのが,学校現場です。担任の,どのような言葉が中学生に効果的に働くのか,どのような言葉が生徒の心に響くのか。私の「語り」は,それを探るためのヒントになると考えています。
3つ目は,書き下ろしであることの利点を生かし,次の考え方を一貫して大切にしていることです。
それは「学級経営は1年をかけた人づくりの取り組みであり,先生の成長のプロセスであること」です。
中学校の学級経営については,これまで安全管理,問題行動の防止など,危機管理的な側面から語られることがほとんどでした。反面,指導の底に流れる教育観や指導観,さらには日々の学級指導で必要となるノウハウについて語られることは多くなかったのです。これは中学校が教科担任制であったり,小学校に比べて学年集団の力が強かったりするためでしょう。
近年,いじめの問題を中心に,中学校における学級経営のあり方が注目されています。「人づくり」の視線から,私たちは中学校における学級経営の大切さ,そしてその難しさについて正面から向き合う時期にあるのではないでしょうか。
聞くところによれば,一部の大学では学級の機能を生かした指導が見直されているとのことです。学級への所属意識が,学生に安心感をもたらし,学生生活の安定を支える役割を果たすことが注目されているのです。大学生においてさえこうなのですから,中学生にとって,学級が生活の基盤としてどれほど大切なものであるか述べるまでもありません。
もちろん,学級には「居場所」として安心感を得られるというメリットがあるだけではありません。固定された人間関係の中で生活するためには,人は他人と共に行動したり,自分の気持ちを抑えたりするなど,他人と折り合う力が要求されます。また,固定された人間関係は,いじめを生む温床になりやすいことも事実です。
学級経営の仕事は,これらの困難を乗り越えながら,固定された人間関係を通して1年をかけて他者と折り合う力を育て,社会で生きる「人づくり」をすることです。
そして忘れないで欲しいことは,学級においては担任の先生自身も生徒にとって「固定された人間関係」の一部になるということです。つまり,先生自身も生徒と共に折り合いをつけながら生活し,成長することが求められるのです。この意味から,読者の先生方には,ぜひ「失敗を恐れない」で学級経営に打ち込んで欲しいと思います。学級は,生徒にとっても先生にとっても「人づくりの場」であり,「失敗を通して成長する場」なのですから。
「先生も生徒も失敗を通して成長していく」ということが,具体的にどういうことなのかについては,本文の中でだんだんと明らかにしていくことにしましょう。
本書が生徒の心に響く学級経営の一助となり,いじめのない,明るく楽しい,誰にとっても「居心地のよい」学級づくりの参考になれば幸いです。
2013年4月 /笹 達一郎
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