- まえがき
- T 授業で使える微細技術
- 全般的な問題への対応
- 1 離席が多く、落ち着かない子への対応
- 先手先手の手立てが落ち着きを呼ぶ
- 2 静かに授業を受けることができない子への対応
- 直球勝負しないために、対応方法を準備しておく
- 3 ゲームで勝ち負けを受け入れることができない子への対応
- 「合格基準」を示して達成感を与える
- 4 すぐにトイレに行きたいと訴える子への対応
- 笑顔で、ゆったりと対応する
- 5 すぐに聞き返す子への対応
- 対応しすぎると泥沼にはまる
- 6 授業中、ぼ〜っとしている子への対応
- 見本になってもらう、ほめながら指摘する
- 7 授業の出だしが遅れてしまう子への対応
- 事前に準備させる指示と、誰でもできる活動で置いてけぼりゼロ!
- 国語に関する問題への対応
- 1 漢字・平仮名が覚えられない子への対応
- 読み先習で無理なく習得させる
- 2 書くスピードが遅い子への対応
- 成功体験の積み重ねで、書くことに自信をつける
- 3 音読ができない子への対応
- たくさん読ませ、ほめて活躍させよ!
- 4 作文、文章を書くのが困難な子への対応
- 普段からたくさん会話をさせて、書く状況をつくる
- 5 筆圧が弱く、読みにくい字しか書けない子への対応
- お手伝い、パスで色塗りをして毎日、手指を使おう!
- 算数に関する問題への対応
- 1 たし算・ひき算が定着しない子への対応
- 百玉そろばんを繰り返し使って、数の概念を身につけさせる
- 2 九九が定着しない子への対応
- 無理なく繰り返し定着を図る
- 3 定規などの教具の扱いが不得意な子への対応
- 練習時間の確保、全体指導の徹底、一緒に書くことを重視する
- 図工に関する問題への対応
- 1 ハサミ、のりなどの教具がうまく使えない子への対応
- やって見せる、動きを細分化する
- 2 色鉛筆、クレヨンなどの色塗りが困難な子への対応
- はじめは教師が一緒に塗ってやる
- 3 絵の具の取り扱いが困難な子への対応
- 教師の一工夫で混乱なしの図工の授業
- 音楽に関する問題への対応
- 1 歌を歌うのを嫌がる子への対応
- 嫌がる原因を探り、安心して歌える状態をつくる
- 2 鍵盤ハーモニカ、リコーダーの演奏が困難な子への対応
- つまずきの原因を明らかにして指導する
- 体育に関する問題への対応
- 1 体育で並べない子への対応
- 教えて、ほめて ほめて、覚えさせる
- 2 着替えが遅い、遊んでしまう子への対応
- 体育の授業は、着替えから始まっていることをしっかりと理解させることが重要だ!
- 3 縄跳びを上手に跳ぶことができない子への対応
- ポイントはリズム
- U 日常生活で使える微細技術
- 統率が難しい子への対応
- 1 忘れ物が多い子への対応
- システムをつくり、忘れ物を減らす
- 2 整理整頓ができない子への対応
- 例を示し、できたらほめよう
- 3 友達とのトラブルが絶えず、常にけんかが多い子への対応
- 友達との関わり方を具体的な行動の仕方で教える
- 4 教室のものを常にほったらかしにする子への対応
- 一緒に片づけ、自分でさせて、ほめ続ける
- 5 手洗いの際、常にトイレで遊んでしまう子への対応
- 非日常の世界から、日常へと楽しさをシフトする
- 6 注意されると反抗したりすねたりする子への対応
- 出会いからほめ、よい行動を教える
- 7 こだわりの強い子への対応
- 一度、教師が受け止めてから対応する
- 8 自尊心が低い子への対応
- 笑顔でほめ続け、存在感をもたせ、成功体験をさせる
- 9 何をするにもゆっくりな子への対応
- あせらず、教師が手を貸し、「ほんの少し」の変化をほめ続ける
- 10 子どもが教室を飛び出してしまった時の対応
- すぐに連絡し、探しに行く 教室の子のフォローも忘れずに
- 掃除・給食の問題への対応
- 1 掃除中に遊んでしまう子への対応
- 正しい掃除の仕方を「教える」ことが大切!
- 2 グループ活動で、浮いてしまう子への対応
- やってみせ、させてみて、ほめてやる
- 3 給食当番がうまくできない子への対応
- 順番を守れるシステムの確立と温かな励まし
- 4 給食で好き嫌いが多い子への対応
- 無理強いせず、それでも何度かは勧めてみる
- その他の問題への対応
- 1 移動教室の際、遅れたり、来なかったりする子への対応
- 大切なのは、休み時間前に、意図的に教師が準備の時間を設けてやることだ
- 2 当番活動がうまくできない子への対応
- 朝一番の当番で、思いっきりほめて、チェックする
- 3 校外活動で勝手な行動をする子への対応
- 発生してからでは遅い! 先手を打って勝手な行動を制する
- 4 教室環境配慮のポイント
- 教室はすっきり落ち着いた雰囲気にする
- 5 黄金の三日間で関係をつくる!
- 成功体験をたくさん積ませ、信頼関係を築く!
- 6 担任としての引き継ぎのポイント
- 時間、人、記録を準備する
- V 校内体制のポイント
- 担任教師がする大事なこと
- 1 TTの先生との連携
- 手短かに打ち合わせうまくTTを機能させていく
- 2 支援学級担任、特別支援コーディネーターとの連携
- 普段の関係づくりが校内支援体制の充実につながる
- 3 学校ぐるみで特別支援の体制をつくる
- 情報を共有し、個別の支援計画に基づいた支援を行う
- W 行事指導で必要な微細技術
- 運動会に関する問題への対応
- 1 運動会での特別支援はこうする@
- エラーレスで楽しい運動会を体験させる
- 2 運動会での特別支援はこうするA
- 「見通し」と「達成感」で楽しい運動会に!
- 音楽会・発表会に関する問題への対応
- 1 音楽会・学習発表会での特別支援はこうする@
- 保護者と相談し、できることを無理なくさせる
- 2 音楽会・学習発表会での特別支援はこうするA
- 見通しをもたせて、ほめ続ける
- その他の問題に関する対応
- 1 遠足での特別支援はこうする
- 遠足ごっこをやって、見通しをもたせる
- 2 集会での特別支援はこうする
- 活動ともので集中力を持続させる!
- 3 お楽しみ会での特別支援はこうする
- 内容を厳選する 教師が近くで一緒に楽しむ
- X 診断名別 微細技術
- 基礎知識をふまえた留意点
- 1 アスペルガー児童への対応微細技術
- 周りの環境に配慮し過ごしやすい環境をつくる
- 2 ADHD児童への対応微細技術
- 認めて、ほめて、楽しんで、何回も何回も手本を見せる
- 3 LD児童への対応微細技術
- 作業を「見える化」して成功体験を積み重ねる
- 4 自閉的な傾向の子どもへの対応微細技術
- 毎朝、笑顔で迎え、コミュニケーションを取り楽しい活動の中で心を開かせる
- Y 保護者対応 微細技術
- 信頼される対応のポイント
- 1 保護者対応〜家庭学習について〜
- 本人、家庭の負担にならない学習により達成感を感じさせる
- 2 保護者対応〜発達検査をお願いする場合〜
- 保護者との信頼関係を軸に、子どもの立場に立って、お願いする
- 3 保護者対応〜支援学級入級を勧める場合〜
- 「保護者との信頼関係」と「子どもの事実」をつくり、校内体制として進めていく
- あとがき
まえがき
向山洋一氏によって、「新型学級崩壊」ということばが使われるようになった。原因は多重的だ。
新任の教師の学級は、その多くが荒れる。若い教師の未熟さゆえ、うまくいかないことがいくつも出てくるためだ。それは皆が通ってくる道である。
しかし、近年はベテラン教師の学級が荒れ、つぎつぎと倒れていく。
特別支援を要する子どもたちが増えたことも一つの要因だ。それぞれの子どもに合った指導を必要としているのに、「叱って聞かせる」という一辺倒の指導しかできない教師は、子どもたちにそっぽを向かれ、立ち行かなくなる。
注意することにやっきになると、真面目にしようとがんばってきた子どもたちもばかばかしくなり、やがて学級の皆が反乱を起こすようになる。
子どもを動かすための様々な方策を教師がもっていることが必要だ。
作文を書かせたいときに、ただ作文を書きなさいと言っても、「えーっ」という声が返ってくるだけだ。
教師がしたことを作文に書きなさいと言って、「外からドアを開け、教室の中に入ってポンと手を叩く」という向山氏の実践がある。数分後、数名の子どもたちに発表させる。「A君、Bさんの発表には違いがありました」と言って、事実だけを書くのと、自分がその様子を見て、考えたことをつけたすのとでは、全く作文の内容が変わってくることに気づかせる。そして、再度同じ行為をして、作文を書かせる。どの子の作文も長くなり、おもしろくなる。
教師は何も教えないのに、子どもたちができるようになっていく。しかも、知的な楽しさをいっぱい含みながら。そんな授業ができるようになりたいと切に思う。
教師が「〜をしなさい」という指示だけで子どもを動かそうとすると、頭から反抗的になってしまう子どもがいる。そんなとき、「先生と一緒にしようか?」「AとBのやり方があるけれども、どちらにしますか?」「今しますか? 中休みにしますか?」というように、その子が動き始めるような指示がいくつも教師のプランとして準備されていることが大切だ。
また、それが無意識のうちに取り出せるようになるには、多くの先生たちから学び続けるしかない。
本書では、学校生活で日常的に起こりうる具体的な場面をとりあげ、その対応について述べた。これがベストではない。よりよい対応の仕方がたくさんあることだろう。サークルの仲間が自分の実践をもとに特別な支援の必要な子どもたちにどう対応したかを記した。
かつて岩下修氏が「AさせたいならBと言え」ということばを教えてくれた。私たちはこれからもBだけでなく、CもDもEも、その子に合った方策が見つかるまで、探し続けていく気概をもたねばならない。
できなかったことができるようになる。どんなに小さな一歩でも、そんな一ミリほどの前進でも見逃さずに見つけ、認め、励まし、そしてほめ続けることが私たちの仕事だ。
そんな目をもてる教師になりたいと思う。若い先生たちが一人でも多く育ってほしいと思う。
私たちの実践が、そんな評価し続ける教師たちにとって、ほんの少しでもお役に立てたら幸いである。
TOSS大阪なみはやサークル代表 /奥 清二郎
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- 明治図書