- まえがき
- T 漢字を覚える
- 1 TOSS型漢字指導マニュアル完全版
- 2 覚える指導の原理■「指書き」がなぜ大切なのか
- 3 覚える指導の原理■「指書き」を指導する時のポイント
- 4 覚える指導の原理■「なぞり書き」のポイント
- 5 覚える指導の原理■「なぞり書き」を指導する時のポイント
- 6 覚える指導の原理■「写し書き」がなぜ大切か
- 7 覚える指導の原理■筆順を声に出しながら書かせる
- 8 覚える指導の原理■「空書き」はなぜ必要か
- 9 覚える指導の原理■「空書き」を指導する時のポイント
- 10 覚える指導の原理■「筆順」はなぜ大切なのか
- 11 十問テストで発達障がいの子の自尊感情を高める■どの子も百点がとれる漢字テストのやり方
- 12 十問テストで発達障がいの子の自尊感情を高める■プレテストで発達障がいの子の自尊感情を高める
- 13 十問テストで発達障がいの子の自尊感情を高める■十問テストで個別に確認する方法
- 14 十問テストで発達障がいの子の自尊感情を高める■隣同士の答え合わせで意見が違った時
- 15 十問テストで発達障がいの子の自尊感情を高める■子どもに得点を発表させると伸びる
- 16 十問テストで発達障がいの子の自尊感情を高める■テストの裏を有効に使う
- 17 十問テストで発達障がいの子の自尊感情を高める■間違ったところだけをテストする
- 18 十問テストで発達障がいの子の自尊感情を高める■早くできた子の時間調整が大切
- 19 十問テストで発達障がいの子の自尊感情を高める■保護者へのお願いの仕方
- 20 まとめテストのやり方■学年始めの「実態調査」が大切
- 21 まとめテストのやり方■五十問テストの予告と練習のさせ方
- 22 まとめテストのやり方■まとめテストの完全マニュアル
- 23 まとめテストのやり方■向山実践「二学期最初の漢字テスト」を再現する
- 24 まとめテストのやり方■三学期最後のまとめ学習の一工夫
- 25 まとめテストのやり方■三学期最後のまとめテストのやり方
- U 漢字を読む
- 1 輪郭漢字カードの教え方完全マニュアル
- 2 「素読」のフラッシュカードの使い方
- 3 「読み先習」がなぜよいのか■「読み先習」で漢字と物を対応させる
- 4 「読み先習」がなぜよいのか■ルビをつけて読ませることの意味
- 5 「読み先習」がなぜよいのか■「鷲」より「鳥」の方が難しい
- 6 「読み先習」がなぜよいのか■石井式から学ぶ「読み先習」のポイント
- 7 「読み先習」がなぜよいのか■脳科学から学ぶ「読み先習」のポイント
- 8 「読み先習」がなぜよいのか■文科省「学年別漢字配当表」の弊害
- V 漢字の文化
- 1 漢字の成り立ち■「土」の成り立ちと「生」の成り立ち
- 2 漢字の成り立ち■虫偏の漢字
- 3 漢字の成り立ち■TOSSランドのおすすめコンテンツ
- 4 漢字の面白さに触れる■口に二画付け足して漢字を作る
- 5 漢字の面白さに触れる■に隠れている漢字
- 6 漢字の面白さに触れる■一画加えて新しい漢字を作る
- 7 漢字の面白さに触れる■「飛」の筆順の原理
- 8 漢字の面白さに触れる■一日、二日、三日……日にちの漢字
- 9 漢字の面白さに触れる■漢字の字形から意味を考える
- 10 漢字の面白さに触れる■漢字仮名交じり文と漢字アルファベット交じり文
- W 漢字が苦手な子の指導
- 1 指書きを極限までスモールステップにする
- 2 学習障がいの子への漢字指導のポイント
- 3 医療と連携するためのヒント
- 4 学校としての必達目標を明確にする
まえがき
有名な向山洋一氏の授業参観での漢字指導の一場面である。
二文字か三文字の空書きをさせる。くるっと後ろの保護者の方を向かせ、空書きをさせる。「ボロが出ないうちに前を向こう。」と言うと、保護者から笑いが起こる。
ここで大事なポイントがある。帰りがけ、「うちの子、漢字ができないみたいで……」と相談してくる親がいる時だ。そう言ってくる親には発達障がいの子の親もいる。ここで、「大丈夫ですよ。」などと無責任なことを言ってはいけない。練習の仕方をアドバイスすることが大事である。
向山氏は、このような時、次のようにアドバイスしていたという。
一年間で、約百五十文字(中学年なら二百文字)を習います。ですから、二日で一文字覚えればいいのです。
親が時間を作って、一度にギューギューやっても駄目です。子どももつらいし、親もつらい。しかも、すぐに忘れます。
一日一回、二分間だけやってください。
朝食か、夕食の前、お母さんが二つ出します。
子どもは「空書き」をします。学校で見たとおり、筆順も言って書きます。
合格なら、十五秒で終了です。
間違えたら、その場で指書きさせ、できるようになったら食事です。学校で習ったことの復習ですから、すぐにできます。
一日一回、二分間で、漢字満点になります。
かわいい我が子のことであるから、親もきっと取り組んでくれる。
このような具体的な実践が本書ではいくつも紹介されている。
本書では、漢字を覚える指導の原理として、指書き、なぞり書き、写し書きの手順、そして空書きや筆順がなぜ大切なのかについて述べている。テストのやり方についても、子どもの自尊感情を高めながら指導にあたる教師の実践とシステムが紹介されている。
本書では、一つ一つの実践について、多くの教室で見られる指導との違いを挙げることでイメージしやすくした。さらに、指導スキルを明確にした。
教師である以上、どの子もできるようにさせていくことを望まない人はいないであろう。
漢字指導においてはTOSS型の漢字指導が効果を発揮する。
クラスに一人二人は、漢字の習得を苦手とする子がいる。多くの場合、空間認知能力の弱い子である。こうした事実をとらえ、現実問題としてわかるように指導していくことが大事なのである。結果、どの子も漢字ができるようになり、成功体験を積んでいくことができる。このような実績を積んでいくからこそ、信頼関係も生まれてくる。
漢字文化もいくつか紹介した。一つ一つバラバラの実践でも極めて知的で楽しい授業になる。子どもたちの知識を豊かにしていくために役立つのは、このような内容の学習かもしれない。また、読み先習、脳科学の視点、発達障がいの子への対応など現代の教育課題にも目配せをしているので活用いただきたい。
本書に紹介したスキルを使って漢字の授業をすると、教師自身に漢字指導の方法が身につくだけでなく、漢字が苦手な子どもも正しく読み書きができるようになるだろう。まさに一石二鳥の書である。
今まで漢字指導が苦手だった教師にとってはおすすめの書となるだろう。
漢字指導という学習内容を一つとっても、さまざまなバリエーションと指導上の工夫が見えてくる。どのような方法で授業をすれば、子どもたちに力のつく授業ができるか本書を参考にさらにさぐっていただきたい。
本書の実践が全国の先生方の役立つものになれば、こんなに幸せなことはない。その先生方の向こうには、多くの子どもたちがいるのだから。
本書を執筆するにあたり、明治図書の樋口雅子編集長、企画を進めていただいた玉川大学教職大学院教授谷和樹氏に執筆の機会を与えていただき、ご指導いただいたことに感謝の意を表する。
/三浦 宏和
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- 明治図書
- 向山先生にシリーズもの役に立ちます。2021/1/1060代・高校教員