- まえがき
- 第1章 特別支援学校の進路指導
- 1 特別支援学校の進路指導教育の現状と課題
- 2 卒業後の進路を考えた小学部からの教育体制作り
- 3 アセスメントの重要性
- 4 具体的進路指導,職業指導
- 5 特別支援学校卒業後の進路
- 第2章 夢をかなえる! 進路指導の実際
- 1 東京都立あきる野学園
- 体験を通した前向きな自己理解と支援者のチームワークによって就労したかずこさん
- 2 香川大学教育学部附属特別支援学校
- 「ヘルパーになりたい!」「一人暮らしがしたい!」夢をかなえたさとこさんへの進路指導
- 3 栃木県立栃木特別支援学校
- 教師が生徒と企業の橋渡し役になって実現!「この会社に長く勤めたい!」をかなえたかずおさん
- 4 東京学芸大学附属特別支援学校
- 障害者就労支援センターなど関係機関との連携により企業就労したまさきさん
- 5 金沢大学附属特別支援学校
- あこがれの「夢」から実現可能な「夢」へ―卒業後の生活をイメージできるようになったりょうたさん―
- 6 栃木県立今市特別支援学校
- 一人で通勤できるように! を目指したあゆみさんへの支援
- 7 静岡県立袋井特別支援学校
- 感情をコントロールする力を身につけて企業就労したさとしさん
- 8 宇都宮大学教育学部附属特別支援学校
- AAPEPなどアセスメントを活用して支援をさぐる!―老人ホームに就労を決めたたつやさん―
- 9 香川県立善通寺養護学校
- 病弱虚弱特別支援学校におけるキャリア教育―「病気に向き合いながら就労したい!」をかなえたけいこさん―
- 進路指導トピックス
- 1 障害者就業・生活支援センター
- 2 地域障害者職業センター
- 3 発達障害者支援センター
- 4 特別支援学校の新しい進路指導
- あとがき
まえがき
平成19年度より特別支援教育が始まり,障害のある児童・生徒の教育は,従来の盲・聾・養護学校および特殊学級での教育から,一般の小・中学校においても障害の特性に応じて教育していくようになりました。その結果,対象となる児童・生徒の人数も19万人から87万人となり,全児童・生徒の1割を超える状況となっています。
しかしながら,その指導内容はまだ確立されているとはいえず,知的障害児特別支援学校などで行われていた指導を踏襲するものが多いものと思われます。
知的障害児特別支援学校においても,文部科学省の通達では,高等部卒業後の進路について就職を希望する生徒の就職率を65%にまで上げるようにと指導されています。
実際,働ける能力がありながらも教育支援の不備により働くチャンスを与えられていない知的障害生徒も多いものと思われます。それは,@保護者が就労を希望していない,A生徒が将来の希望について自分の意志を伝えることができない,B教師が就労を目指す進路指導を十分に果たせていないなどの理由が考えられます。@の保護者が就労を希望していないのは,知的障害児の就労は難しいと考えており,もし就職できたとしても離職・退職となったら,行き先がないという不安もあるからではないでしょうか。しかしながら,厚生労働省は施設解体を推し進め,知的障害者の地域参加を促進しようとしているため,従来のように福祉施設で一生を暮らしていくことは難しくなってきています。
また,Aの知的障害のため自分の意志を伝えることができないというのは,そうではなく,彼ら自身働く経験をしたことがないため自分の意見をもつことができないからだと考えられます。よって,学校在学中に数多くの現場実習を経験していれば,どの仕事が好きだったかを述べることができる生徒も多いのではないでしょうか。たとえ言葉で述べることができなくとも,実習を行っているときの生徒の行動を観察することにより,その状況を把握することもできるでしょう。
そして,Bの教師の進路指導能力に関しては,従来型の経験主義,精神主義の進路指導および職業指導ではなく,米国で実施されているITP(個別移行計画)などで一人ひとりの能力や興味・関心に応じた支援を行うことにより,より適切な進路指導教育支援が実施できるものと思います。
本書では,そのような特別支援学校生徒の社会参加,職業的自立を目指すための支援方法について最新の方法論から具体的事例,先駆的な進路指導を行っている学校などを紹介しながら,一人ひとりの教師にわかりやすく進路指導のあり方をお伝えすることをめざしています。
本書が障害のある生徒の社会参加,職業的自立への参考となれば幸いです。最後になりましたが,本書を製作するに当たり,お忙しい中,事例を提供してくださった全国の特別支援学校の進路指導の先生方ならびに遅々として筆が進まなかった著者に対し,根気強くお付き合いいただいただけではなく的確なアドバイスをくださった明治図書の佐藤さんに心からお礼を申し上げます。
どうも有難うございました。
編著者 /梅永 雄二
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- 明治図書