はじめてつくる「個別の教育支援計画」
連携のための支援ツールをつくる

はじめてつくる「個別の教育支援計画」連携のための支援ツールをつくる

CD-ROM付き

個別の教育支援計画を初めて策定する人のための解説書

「個別の教育支援計画」の重要性は、今や誰もが認めている。本書は、できるだけ簡便に具体的に支援計画を立てるためのノウハウ(実際的知識)とハウツー(手がける方法)を解説。CD−ROMには、策定項目の解説とともに、形式の改変や項目の工夫を行える様式を収録。


紙版価格: 2,640円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
978-4-18-038817-2
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
4刷
対象:
幼・小・中
仕様:
A5判 192頁
状態:
絶版
出荷:
予定なし

目次

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 連携のための支援ツールの様式と策定の在り方
1 連携をスムーズに行う個別の教育支援計画
支援ツールとしての個別の教育支援計画/関係機関をつなぐ個別の教育支援計画と個に応じた個別の指導計画/一貫した支援をつなぐ個別の教育支援計画と個別の移行支援計画
2 個に応じ,保護者の願いに寄り添った個別の教育支援計画の様式
個別の教育支援計画の様式に記載する内容/個別の教育支援計画による記載の手順
3 個別の教育支援計画を策定する際の留意事項として
子どもの教育的ニーズ把握の方法/関係機関との連携による個別の教育支援計画の記載について/関係機関との連携の方法と内容について
4 個別の教育支援計画策定のスケジュール
入学から卒業までの期間/高等部卒業前から卒業に向けての期間
5 関係機関の支援と保護者との連携
保護者をよき支援者として協力を仰ぐ/関係機関との支援マップづくり
6 小・中学校等における個別の教育支援計画の記載事項と留意点
記載様式の特徴/関係機関の連携についての記載/長期的な支援とその目標/教育相談票の活用
7 個別の教育支援計画を効果的に行う情報管理とイントラネットの活用
はじめに/イントラネットのメリット/S校のイントラネットの概要/個別の教育支援計画作成の実際
第2章 就学前から学齢期によりよくつなぐ
1 就学前からニーズに応じた個別の教育支援計画の策定
幼稚園から小学校への連携の在り方/就学前でのアセスメントの活用/早期支援の重要性と個別の教育支援計画
2 就学前における障害のある子どもの教育相談から学齢期につなぐ様式の工夫
幼稚園,保育所・園からの教育相談事例を中心として個別の教育支援計画の様式を工夫する/「教育相談票」の活用と個別の教育支援計画の様式への統合化の試み/就学前における就学園相談指導のシステムを考える
3 LD・ADHD等の幼稚園児の事例から 〜園内支援会議と個別の指導計画〜
LD・ADHD等の幼稚園児のアセスメントと支援会議の在り方/巡回相談の活用と個別の指導計画・個別の教育支援計画の作成
第3章 障害種に対応した個別の教育支援計画の在り方
1 視覚障害者の将来の移行を念頭にした個別の教育支援計画の在り方
視覚障害者の特性理解/視覚障害者における個別の教育支援計画の作成/視覚障害者の職業的自立についての移行支援計画/まとめ
2 聴覚障害者の学校卒業後の進路選択,移行支援の在り方
聴覚障害者の自立に向けて/個別の教育支援計画と個別の移行支援カードの活用事例
3 肢体不自由児の医療・福祉等の連携による個別の教育支援計画
肢体不自由児の障害特性と個別の教育支援計画について/肢体不自由の子どもに対する個別の教育支援計画の事例/長期的な視点から見た教育的ニーズと支援内容/個別の教育支援計画における関係機関とのネットワーク
4 知的障害児の自立を念頭においた個別の教育支援計画の在り方
「自立」がさすもの/知的障害児の「支援」を巡って/知的障害のある子どもがいる家庭への「支援」/関係機関での支援分担/支援分担の実際と関係機関との連携事例
5 病気の子どもの前籍校との連携のための個別の教育支援計画
病弱の子どもの教育実態について/病気の子どもの実態とその支援の在り方/病気の子どもの教育的支援を考える/慢性疾患の子どもに対する個別の教育支援計画の策定について/まとめ
6 発達障害のある子どもへの支援に伴う個別の教育支援計画の在り方
発達障害への支援と個別の教育支援計画/発達障害の特性と早期からの支援/個別の教育支援計画の実際/個別の教育支援計画の内容と作成/最後に
第4章 医療・福祉・労働との連携による支援計画の在り方
1 医療機関との連携を図った個別の教育支援計画
早期診断における支援の重要性/発達障害児の医学的診断と教育機関への教育支援計画の策定に向けて/発達障害のある子どもの「医療・教育」からの提言と個別の支援計画策定に向けて/発達障害のある子どもの担任と専門医との連携
2 福祉機関との連携を図った個別の教育支援計画の事例
事例をもとに教育と福祉のつなぎ目を考える/福祉機関との連携を図るための視点/現在の福祉制度の課題的特徴/現行の障害福祉制度のあらまし/学校教育に期待する学齢期の教育支援計画/自立を目指した移行支援計画とは
3 労働機関との連携を図った個別の教育支援計画の策定に向けて
一般雇用への移行と就労支援の在り方/特別支援学校の生徒への就労支援と企業側のニーズ/特別支援学校と労働機関との連携/各関係機関との連携を図った事例/就労支援を見据えた関係機関との連携ネットワーク/個別の教育支援計画と関係機関のネットワーク様式
第5章 個別の教育支援計画の策定とその動向
1 個別の教育支援計画の意義
すべての学校の課題としての個別の教育支援計画/ニーズとは何か/何をすることが「支援」かを,絶えず考える/子どもは一人ひとりみんなちがうことが原点/生涯にわたる支援計画を理念として,今を考える/自立と社会参加を目指して
2 個別の教育支援計画とその背景
アメリカのIEP(個別指導計画)の衝撃/IEPと個別の教育支援計画/IEP等の「個別計画」から学ぶこと
3 ライフサイクルと教育・医療・福祉・労働等との連携
熊本県では,主として自閉症スペクトラムといわれる人のための『にじいろ手帳』が,2005年に作成されている/「紙のカルテ」と「電子カルテ」/自立と社会参加のために/本人・保護者が地域生活で不安に思うことは
4 個別の教育支援計画への5つの願い
形式にとらわれないで,できるところから,とにかくはじめる/一人で悩まない,一人でつくらない/地域の社会資源の活用/ライフサイクルの視点を忘れない/必要に応じいつでも,評価し,改善する
5 今後の課題
特別支援学校における開発の努力と,地域の小中学校等への支援/意識改革を心がける/ファシリテーションの知識・技能が必要/保護者・子どもの話をよく聞く/障害者の権利擁護(セルフアドボカシー)
おわりに
◆巻末CD資料◆
1 特別支援教育の理解と解説資料
2 発達障害関連の解説資料
3 アセスメント関連と福祉・労働の解説資料
4 記載様式集と解説資料
5 各種用語の解説資料
6 各種通知等の理解と解説資料

はじめに

 特別支援教育に関する全国的なモデル事業の開始(平成15年度)や中央教育審議会の答申(平成17年12月),学校教育法等の一部改正(平成18年6月)を経ながら,平成19年度は,特別支援教育の本格実施の元年でもあった。この特別支援教育を推進し,発展させていくには何よりも一人ひとりの教育的ニーズに基づいた支援の在り方を問うことであり,この教育的支援を行うツール(道具)として個別の教育支援計画の策定が重要であり,そのために関係者の連携が求められるのである。

 特別支援教育が目指す「共生社会の実現」は,障害のある人もない人も,いろいろな人が共に生活していこうという理念の基に,その具現化に向けての歩みといえる。特別支援教育が浸透することによって,不登校やいじめの解消,学力の向上に資することができる。一人ひとりの個に応じたニーズを原点とし,一生涯の支援を含んだ個別の教育支援計画の意義は,この脈絡のもとで把握する必要がある。

 すなわち,「地域での自立した生活を支援することを基本に,障害者一人ひとりのニーズに対応してライフサイクルの全段階を通じ,総合的かつ適切な支援を実施する」という主旨。さらに,「利用者が自らの選択により,適切にサービスを利用できる相談,利用援助などの体制づくりを推進する」という利用者本位の支援の観点が視座としてある。

 障害者や保護者にとって,ニーズを基に一貫した支援が機関から機関へ,人から人へとシステム的に引き継がれていくことができれば,この上ない喜びである。しかし,この連携には,個人情報の関係や機関同士の壁など,まだまだ超えなければならない課題も多いことは事実である。特別支援教育は,これまでの特殊教育の対象に加えて,発達障害のある子どもを含め,関係者が集い,子どもへの支援を話し合う「支援会議」の設定などがはじまり,この契機に今やっと人や関係機関同士がその動きを見せはじめ,策定における連携の在り方を模索しつつあるのが現状であろう。

 そこで,本書は学校における教育関係者と機関が「個別の教育支援計画」というツールに必要な,支援項目を記載するためのガイドブックとして編集した。このツールを活用して,保護者・当事者と学校・福祉・医療・労働等の関係する機関が連携して,障害のある子どもへのライフサイクルの視点から,それぞれの分野で何をすべきかを明確にしつつ,より効果的に支援を「つなぐ」ことができればと思う。

 昨今,「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」など,一人ひとりの子どものいわば「カルテ」を作成することは重要であると認識していても,多くの労力が必要であることに現場が苦慮していることが報告されている。しかし,当事者や保護者のニーズに基づいた支援の在り方をその様式に基づいて関係機関がよりよい支援につなぐことの重要性は否めない。そのため本書では,できるだけ簡便に具体的に支援計画を立てるためのノウハウ(実際的知識)とハウツー(手がける方法)を中心に解説することを意図した。特に就学前から学齢期へのつなぎの在り方と,学齢期から社会へのつなぎに関することと,障害種に応じた内容も重視した。また,学校・福祉・医療・労働などの各機関からも,その移行期における課題とともに策定に関する具体例を交えた。作成者へのサポートとして「巻末CD資料」を収録することによって,それぞれの学校・機関等が,そこに収録された様式や策定項目の解説などを盛り込むことによって,それぞれに合った形式に改変することや項目の工夫など,すぐに明日から取りかかれることをめざした内容とした。


  2008年1月   編著者

著者紹介

中村 忠雄(なかむら ただお)著書を検索»

(現)摂南大学教授

1941年生まれ

1980年大阪府教育センター指導主事,1983年大阪府教育委員会指導主事,2001年大阪府立盲学校長を経て現職

須田 正信(すだ まさのぶ)著書を検索»

(現)大阪府立交野養護学校長

1952年生まれ

2002年大阪府教育センター主任指導主事,2004年大阪府教育センター特別支援教育研究室長を経て2007年より現職

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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