- はじめに
- 序章 いま学校で何が起こっているのか
- 1 教育への関心
- 2 教師になりたいという純粋な思い
- 3 大学教員として思うこと
- 4 学校見学から考えてみると
- 5 同僚性の大切さ
- 6 教師の多忙化と同僚性の切り崩し
- 7 教育における即戦力とは
- 第1章 子どもと向き合う教師の心構え
- 1 どうやって子どもを理解すればいいの?
- 1.教師に繰り返し訴えかけてくる子
- 2.「原因論」から子どもを理解する
- 3.「目的論」から子どもを理解する
- 4.仮説を立てて対応する
- 2 なかなかよいアドバイスができないのだが?
- 1.登校しぶりの子
- 2.子どもはどうなりたいのか?
- 3.解決構築という発想
- 4.例外を探してみる
- 5.観察するときのポイントにもなる
- 3 子どもにうまく指示が通らないのだが?
- 1.行動への注目
- 2.実行モードに移りやすい目標や指示とは
- 3.行動とは
- 4.否定形では行動目標にならない
- 5.受身形も行動とは呼べない
- 6.状態を表している場合
- 7.記録できるように定義する
- 8.「明確な指示」を意識する
- 4 教師とカウンセラー,聞き方はどこが違うの?
- 1.ぎくしゃくした仲間関係
- 2.聞く側の立場と話の聞き方
- 3.「解決指導」という先生の聞き方
- 4.解決指導,その前に
- 5.カウンセラーと先生の聞き方の違いを知る
- 6.解決以前に必要な信頼関係
- 5 子どもとの距離に困ったときどうすればいいの?
- 1.適切な距離感のとりにくい子
- 2.「この子は苦手」という気持ち
- 3.苦手意識のしくみ
- 4.苦手意識は自分を知るチャンス
- 5.時には教師も相談する
- ◆コラム◆不適応とインターネット
- 第2章 気になる子どもの行動の奥にあるもの
- 1 注意すると機嫌が悪くなってしまう子どもへの対応は?
- 1.注意するとすぐに「キレ」てしまう子
- 2.「キレ」てしまう子どもの視点で想像する
- 3.先生も一緒になって考えてみる
- 4.叱りっぱなしにしない
- 2 落ち着きがない子どもへの対応は?
- 1.集中して課題に取り組めない子
- 2.「わがまま」なのか「障害」なのか?−ADHDという障害−
- 3.環境要因の改善と発想の転換
- 4.長期的視点をもって対応する
- 3 身の回りの整理整頓ができない子どもへの対応は?
- 1.整理整頓ができない子
- 2.注意欠陥優位型というタイプの子ども
- 3.家庭のしつけが問題なのか?
- 4.一人ひとりの子どもの問題に向き合いましょう
- 4 物を投げたり,他人を傷つけるのをやめさせるのには?
- 1.友だちとのトラブルが絶えない子
- 2.「生徒指導」か「特別支援」か?
- 3.対人関係の問題と発達障害
- 4.「いつも見守っているよ」という姿勢が大事
- 5.教師がまず落ち着き,自己の言動を振り返りましょう
- 5 一斉授業についていけない子どもに支援できることは?
- 1.授業についていけない子
- 2.脳内の情報処理に目を向けてみると
- 3.時間がない中での特別支援
- 4.自信を失わせない
- ◆コラム◆「脳トレ」で子どもが変わる?
- 第3章 教科指導の難しさと大切さ
- 1 「どうして勉強するの」と子どもに尋ねられたら?
- 1.教科の指導における「基礎」
- 2.社会の変化と「知識基盤社会」の到来
- 3.勉強するための力を育てる
- 2 「教科を教える」とは何を教えることなの?
- 1.教科指導における疑問
- 2.「学び方を学ぶ」教育について
- 3.「しっかり積み重ねる」教育について
- 4.再び「学び方を学ぶ」教育へ
- 5.「確かな力」をつける教育へ
- 3 国語や算数をなぜ教える必要があるの?
- 1.小学校で勉強する科目の特徴
- 2.人が何かを考えるとき
- 3.人が何かを考える能力を高めるには
- 4.バランスのよい人間形成に向けて
- 4 技術・家庭や体育,音楽,美術はなぜ必要なの?
- 1.小学校と中学校の教科指導の違い
- 2.自分の進路が決定できない若者
- 3.深い知識を広く勉強すること
- 4.やっておくこと,知っておくことが大切
- 5 よい授業をつくる教材研究の「基本」とは?
- 1.よい授業をつくるためには
- 2.「授業の目標」について
- 3.「教材の内容」について
- 4.授業に参加する子どもについて
- ◆コラム◆ノーベル賞と学校の教育
- 第4章 生徒指導を通して子どもを理解する
- 1 個を大切にしながら集団を指導する方法は?
- 1.クラス経営の「指針」を示すことの大切さ
- 2.「困ったときはお互い様」という雰囲気づくり
- 3.子どもに「得意」「不得意」を意識させる
- 2 ルールを守らせることが先決なのか?
- 1.校則を守らせたい!
- 2.生徒の内面を多角的に分析する
- 3.「共同性」の中で社会性を指導する
- 3 「いじめ」をどう理解し,どう指導するか?
- 1.「いじめ」問題の基本姿勢
- 2.いじめる子どもの本当の気持ち
- 3.「いじめ」問題解決への三つの視点
- 4 勉強のできる子と遅れている子を一緒に指導するには?
- 1.グループ分けの前に考えること
- 2.現代の子どもに求められている能力とは?
- 3.「学び合い」の組織と教師の指導性
- 5 上下関係を生まない習熟度別指導の方法は?
- 1.「序列意識」が生まれる背景にあるものは?
- 2.学習内容を「選択」できる指導に変える方法
- 3.「カリキュラムを立てる」ということ
- ◆コラム◆職員室の立ち話に耳を傾ける
- 第5章 困難場面に対処してメンタルヘルスを高めよう
- 1 虫を殺したり,突然暴れたりする子はどんな心理なの?
- 1.発達障害への過剰反応
- 2.子どもの問題行動を説明する概念
- 3.ベテランの余裕と若手の余裕
- 2 学校を休む子たちへの支援とは?
- 1.不登校対応の基礎知識
- 2.不登校に対する認識の世代差
- 3.不登校対応の現実
- 4.不登校はどうなればよいのか?
- 3 保護者と良い関係を築くにはどうすればいいの?
- 1.教師を志望した理由
- 2.サービス業としての教職
- 3.保護者と良い関係を築くには
- 4.向かい合うのではなく横に並んで
- 4 出勤したくない…。そんなときどうすればいいの?
- 1.まず専門医に相談
- 2.自分の偏見をなくす
- 3.職場復帰のコツ
- 4.一番避けたいのは自殺(自死)
- 5.うつ病を悪化させない職場環境づくり
- 5 楽しい教師生活を送るためには?
- 1.大いに楽しみましょう
- 2.好きなことを活かして教育をする
- 3.教育そのものを楽しむ
- 4.横のつきあいを楽しむ
- 5.仕事以外で楽しむ
- 6.すでに楽しんでいることを見つける
- ◆コラム◆マスコミ報道の中の先生イメージ
- 終章 教職キャリアを積み重ねるために
- 1 教師のキャリア教育を考える
- 2 キャリアとは「つながる力」と「選択する力」
- 3 大切なことは「価値判断」ができること
- 4 教職キャリアを身につけるために
はじめに
希望に燃えて教師になったけれど,「子どものことがわからない」と悩んでいる先生はいませんか? また,いろいろな本を読んで試してみるのだけれど,「子どもが自分のほうを向いてくれない」と悩んでいる先生はいませんか? この本はそうした先生が,いろいろな角度から自分の教育実践を見つめ直し,自分なりの考え方をもって実践できるようになるための入門書です。
学校には,教師が対応に苦慮する子どもが多くいます。こうした子どもに直面したときに,あなたはどのような解決方法を見つけ出すでしょうか。関係する専門書を探し,専門家のすすめる対応方法を試してみる,というのも一つの方法かもしれません。
しかし,多くの専門書で示されている困難児への対応は,「学級」を念頭において書かれていないことも多くあり,初学者には読んでもどのように応用してよいかわからないことも多いでしょう。逆に,Q&Aのようなマニュアル本では,対応の方法は知りえても,それをどのように考えて実践すればよいかが書かれていないので,その場限りの対応になってしまうことも多いのが現実です。
本書は,こうした専門書とマニュアル本をつなぐ本として編集しました。特に若手教師が学校の指導で悩む項目を25項目挙げ,それぞれの項目ごとに子どもの困難の状況を理解できるよう平易に理論的背景を解説しました。その上で,できる限り具体的にどのように対応すればよいのか,そのとき教師はどんなことに留意すればよいのかを述べ,明日からの実践で活用できるように編集されています。
そのため,この本はどの章から読んでもらっても理解できるようになっています。項目ごとに若手教師がベテラン教師に質問するように「問い」が立てられていて,筆者がその「問い」に答えるように考え方や子どもへの対応方法を解説しています。
第1章と第2章では,子どもの様子がより鮮明に理解できるように,教室でよく見かける子どもの事例を挙げ,具体的な対応方法を解説しました。また,第3章から第5章では,「教科指導」「生徒指導」「教育相談」の各側面から,困難を抱える子どもへの対応を解説しました。この本を一通り読み終えたとき,教師はクラスにいる子どもをいろいろな角度から見つめられるようになっていて,どのようにふるまえばよいかを冷静に判断する力が身につくように編集しました。
本書は茨城大学教育学部の教育心理学・臨床心理学・教科教育学・教育方法学・脳科学の専任教員が共同で執筆しています。執筆者5人は,同じ学部でいつも同じ問題を共有しているため,基本的な教育に対する考え方は同じであると考えています。しかし,同じ方向を向いていても,対応方法は一律ではなく,「子ども」をさまざまな角度から見つめ,多様なアプローチを展開していくことの重要性を述べてきました。
これからの教育実践では,日々変化する状況の中で,自分がどのように子どもに応対すればよいかを考える力が教師に求められます。当然,一つの角度からでは対応しきれないほど,教育現場の問題は複雑です。そのため,本書も一度読んで終了というのではなく,学校で子どもに関するさまざまな問題に直面するたびに読み返し,考える素材にしてもらえればと考えています。本書が「子どものことをより深く知りたい」と切に願う先生たちの参考書となれば幸いです。
2009年4月22日 執筆者一同
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- 明治図書