道徳授業の定石事典 低学年編
―確かな指導観に基づく授業構想―

道徳授業の定石事典 低学年編―確かな指導観に基づく授業構想―

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ISBN:
978-4-18-034711-7
ジャンル:
道徳
刊行:
2刷
対象:
小学校
仕様:
B5判 164頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
理論編
1. 道徳の時間の特質
2. 確かな指導観に基づく道徳授業の創造
3. 道徳授業の充実は,低学年からの道徳授業とのよき出会いから
実践編
内容項目1−(1) 資料名 かぼちゃのつる
わがままをしないで生活しようとする児童を育てる
内容項目1−(2) 資料名 シロクマのクウ
自分がやらなければならないことはしっかりと行おうとする児童を育てる
内容項目1−(2) 資料名 まめたろう,がんばれ
最後まで努力してやろうとする心情を育てる
内容項目1−(3) 資料名 みみずくとお月さま
よいと思うことを進んで行おうとする児童を育てる
内容項目1−(3) 資料名 どんな 一ねんせいに なるのかな
善悪を判断し,よいと思うことを進んで行おうとする児童を育てる
内容項目1−(4) 資料名 うそをついたひつじかい
うそをついたり,ごまかしたりせず,正直に生活しようとする児童を育てる
内容項目2−(1) 資料名 おじいさん こんにちは
気持ちのよいあいさつ,言葉遣い,動作などに心掛け,明るく接する児童を育てる
内容項目2−(2) 資料名 はしの上のおおかみ
身近にいる人に温かい心で接し,親切にしようとする児童を育てる
内容項目2−(3) 資料名 ゆっきとやっち
友達と仲よくし,助け合おうとする児童を育てる
内容項目2−(4) 資料名 きつねとぶどう
身近な人々の愛情や善意に気付き,それに感謝する児童を育てる
内容項目3−(1) 資料名 ハムスターのあかちゃん
生命のあたたかさを感じ,自他の生命を大切にする児童を育てる
内容項目3−(2) 資料名 りすとひまわり
自然に親しみ,生き物を大切にしようとする児童を育てる
内容項目3−(3) 資料名 しあわせの王子
人の美しい心を美しいと感じる自分を実感・自覚できる児童を育てる
内容項目4−(1) 資料名 きいろいベンチ
みんなで使うものの大切さを認識し,大切に使える児童を育てる
内容項目4−(2) 資料名 みんなの ニュース がかり
働くことの良さを感じ,みんなのために働こうとする児童を育てる
内容項目4−(3) 資料名 おかあさんの つくった ぼうし
家族の愛情に触れ,家族を敬愛する児童を育てる
内容項目4−(4) 資料名 もんた先生大すき
学級や学校の生活を楽しくしようとする児童を育てる
内容項目4−(5) 資料名 ぎおんまつり
郷土の文化や生活に愛着をもとうとする児童を育てる

はじめに

 学校の道徳教育の要としての道徳の時間

 今回の学習指導要領の改訂において,道徳の時間は道徳教育の要として明確に位置付けられた。道徳教育を「要」としたことについては,次のような大きな意義をもつ。

 1. 道徳の時間の道徳教育における中核的な役割や性格を明確にしたこと

 2. 道徳の時間を道徳教育の「要」としたことで,道徳の時間以外の道徳教育の重要性を再確認したこと

 道徳の時間の役割は,昭和33年に道徳の時間が設置されて以来5回の学習指導要領の改訂が行われているが,一貫して変わっていない。それは,道徳の時間の指導が道徳の時間以外の道徳教育を「補充,深化,統合」するということである。つまり,道徳の時間の指導の充実は,道徳の時間以外の道徳教育をいかに補充,深化,統合するかにかかっているのである。日常の道徳教育の充実なくして道徳の時間の充実はないということである。しかし,これまで,「道徳教育は学校の教育活動全体を通じて行うもの」とされ,各学校においては道徳教育の全体計画を作成してきたが,これが画餅になりかねない状況も少なくなかった。

 今回の学習指導要領の改訂に際しては,学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の重要性を鑑み,これまで道徳教育のかかわる記述は第1章総則と第3章道徳だけであったが,新たに第2章各教科から第6章特別活動まで,すべての教科等における指導計画の作成と内容の取扱いに道徳教育にかかわる記述が示されたところである。これは,正に学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の重視に他ならない。さらに,道徳教育の全体計画の作成に当たっては,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動における指導の内容及び時期を示す必要があることが示されたことも確認しなければならない。

 このように,学校における道徳教育と道徳の時間は,言い古された言葉ではあるが車の両輪であり,共に充実することで子どもの道徳性が確かに養われることを再確認したい。


 道徳の時間の特質を生かす

 道徳の時間は,学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育を補充,深化,統合し,道徳的価値の自覚及び自己の生き方について考えを深めることで,道徳的実践力を育成することがねらいである。つまり,道徳の時間に欠くことができない学習は,道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深めることである。そして,道徳的価値の自覚を深めるためには,道徳的価値の理解を自分とのかかわりで行い,道徳的価値にかかわる思いや課題を培うような学習展開がなされなければならない。今回の改訂で加えられた「自己の生き方についての考えを深める」ことは,道徳的価値の自覚を深める段階で同時に行われていることでもある。

 道徳の時間の学習については,ともすると,子どもに感動を与えるとか心に響くような学習を展開するなど,漠然とした表現で述べられることがあるが,子どもが感動することがどのように道徳的価値の自覚を深めることにつながるのか,心に響く学習とはどのような学習で道徳の時間の特質とどのような関係があるかを明確にしなければならない。

 各学校においては,学校の教育活動全体を通じた道徳教育の重要性を再認識し,その上で道徳の時間の特質についての理解を十分に深めることを期待したい。


 明確な指導観に基づく授業の創造を

 望ましい道徳の時間の授業は,道徳の時間の特質を生かすことが大前提であるが,他方,学校の実情や児童の実態に即して行われることが大切である。学校で行われる授業は,教育課程の実施であり,学習指導要領に基づいて行われるものであるが,各学校の実情や児童の実態等が異なれば,当然授業の様子もそれに応じて違ってくる。

 このときに,ぶれのない指導を行うために明確にしなければならないものが,「授業者の指導観」である。1時間の授業を行う際には,授業者が明確に指導の意図をもつ必要がある。授業を構想する際になされる様々な工夫は,すべて指導観に基づいた道徳的価値の自覚を深めることにつながるものでなければならない。例えば,資料提示の工夫や話合いの工夫,書く活動の工夫等が,すべて道徳的価値の自覚を深めることにつながるものであることが求められるのである。授業者は,1つ1つの指導の目的を明確にして授業を展開する必要があるのである。このことが,ぶれない指導につながり,確かな授業評価,授業改善につながるものである。

 全国の学校において,道徳の時間のいわゆるよい授業を数多く参観する。よい授業とは,道徳的価値の自覚を深める授業である。しかし,授業者が自身の1つ1つの指導について,その意義や価値を十分に把握できていない場合も少なくない。同じような指導の工夫であっても,仮に,授業者が,明確な指導観を基に行った指導の工夫とそうでない工夫とでは,その効果は大いに異なるであろう。多くの授業で,明確な指導観に基づく意図的な指導が展開されたとしたら,児童は道徳的価値の自覚をより一層深めることができるであろう。

 全国の先生方が,明確な指導観をもち,道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深めるという道徳の時間の特質を生かした授業を展開することで,確かに道徳的実践力を育成することを期待したい。

 本書は,このような期待の下に,道徳の時間の特質を生かしたより質の高い授業実践を基に作成したものである。全国の先生方の,日々の授業構想に役立てていただければ幸いである。

 なお,本書を上梓するに当たって,ご執筆いただいた先生方,とりわけ,集約にご尽力いただいた鈴村邦夫先生及び茅野 現氏をはじめとする明治図書出版の皆様方に心より御礼申し上げたい。


  文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 教科調査官   /赤堀 博行

著者紹介

赤堀 博行(あかぼり ひろゆき)著書を検索»

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。

国立教育政策研究所教育課程研究センター 教育課程調査官。

東京都公立小学校教諭,東京都教育委員会指導主事,同主任指導主事等を経て現職。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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