- 刊行のことば
- はじめに
- T 教育相談にかかわる学校教育の機関・分野
- 1 学校経営・学級経営
- 2 学校内ライフサイクル
- 3 帰国生徒(子女)
- 4 教育委員会
- 5 教育研究所・教育センター
- 6 教師のメンタルヘルス
- 7 校則
- 8 校内研修
- 9 校務分掌
- 10 個人内評価
- 11 就学相談(就学猶予・免除)
- 12 シュタイナー教育
- 13 性教育・エイズ教育
- 14 大検
- 15 定時制高校・通信制高校・単位制高校
- 16 適応指導教室
- 17 特殊教育
- 18 特別活動
- 19 フリースクール
- 20 ホーム・エデュケーション
- U 教育相談の形態・運営
- 1 親面接
- 2 ガイダンス
- 3 開発的・予防的カウンセリング
- 4 カウンセリングマインド
- 5 学校医
- 6 家庭訪問
- 7 環境調整
- 8 教育相談係
- 9 クライエント
- 10 広報活動
- 11 コーディネイティング
- 12 紹介(リファー)
- 13 事例研究(会)
- 14 進路相談・進路指導
- 15 スクールカウンセラー
- 16 スクールサイコロジスト・スクールソーシャルワーカー
- 17 生徒指導
- 18 相談記録
- 19 相談室
- 20 相談のプロセス
- 21 秘密保持
- 22 保健室登校
- 23 養護教諭・ヘルスカウンセリング
- 24 呼び出し面接・定期相談
- V 教育相談にかかわる心理学的基礎
- 1 愛着(アタッチメント)
- 2 アイデンティティ
- 3 アダルトチルドレン(AC)
- 4 アドラー心理学
- 5 アンビバレンス(両価性)
- 6 意識・無意識・前意識
- 7 学習性無力感
- 8 カタルシス
- 9 葛藤
- 10 基本的信頼感
- 11 基本的生活習慣
- 12 ギャング・エイジ
- 13 空想
- 14 グループ・ダイナミクス
- 15 クレペリン精神作業検査
- 16 原始的防衛機制
- 17 攻撃性・破壊性
- 18 コミュニティ心理学
- 19 コンプレックス
- 20 自我・エス・超自我
- 21 自我理想
- 22 自己愛(ナルシシズム)
- 23 自己概念・自己像
- 24 自己顕示
- 25 自己効力感(セルフ・エフィカシー)
- 26 自己実現
- 27 自己受容
- 28 自己心理学(セルフ・サイコロジー)
- 29 自己分析
- 30 自尊心(セルフ・エスティーム)
- 31 しつけ
- 32 嫉妬
- 33 疾病利得
- 34 職業適性検査
- 35 心理検査
- 36 心理・性的発達
- 37 スケープゴート
- 38 ストレス
- 39 性格検査(質問紙法)
- 40 性格検査(投影法)
- 41 性格検査(描画法)
- 42 性格特性論
- 43 性格類型論
- 44 成熟拒否
- 45 青年期・思春期
- 46 セルフ・コントロール
- 47 創造性
- 48 ソシオメトリー
- 49 ソーシャル・サポート
- 50 対象関係論
- 51 対象喪失
- 52 ダブルバインド(二重拘束)
- 53 知能検査
- 54 通過儀礼
- 55 適応
- 56 テストバッテリー
- 57 同胞葛藤
- 58 ドクターショッピング
- 59 内発的動機づけ
- 60 乳幼児健康診査
- 61 ノンバーバル・コミュニケーション
- 62 パーソナリティ
- 63 白昼夢(白日夢)
- 64 反抗期
- 65 万能感(全能感)
- 66 P−Fスタディ
- 67 不安
- 68 父性・母性
- 69 フラストレーション
- 70 フロイト
- 71 文章完成法(SCT)
- 72 分離−個体化
- 73 防衛機制
- 74 母子相互作用
- 75 ホメオステイシス
- 76 マターナルデプリベーション
- 77 モデリング
- 78 ユング心理学
- 79 養育態度
- 80 要求水準
- 81 ライフサイクル
- 82 リーダーシップ
- W 教育相談にかかわる精神医学・心身医学
- 1 アトピー
- 2 アパシー
- 3 アレキシシミア(失感情症)
- 4 LD(学習障害)
- 5 解離性障害
- 6 過換気症候群
- 7 過敏性腸症候群
- 8 関係妄想・関係念慮
- 9 鑑別(診断)
- 10 気管支喘息
- 11 吃音
- 12 境界例
- 13 強迫神経症
- 14 恐怖症
- 15 起立性調節障害
- 16 幻覚
- 17 現実検討力(現実吟味力)
- 18 向精神薬
- 19 視覚障害
- 20 自殺
- 21 思春期妄想症
- 22 自傷行為
- 23 自閉症
- 24 常同行動
- 25 心因反応
- 26 人格障害
- 27 心気症
- 28 神経症
- 29 心身症
- 30 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 31 睡眠障害
- 32 精神鑑定
- 33 精神遅滞
- 34 精神病
- 35 精神分裂病
- 36 性別同一性障害
- 37 摂食障害
- 38 躁うつ病
- 39 ダウン症候群
- 40 脱毛症・抜毛症
- 41 チック
- 42 注意欠陥・多動性障害
- 43 聴覚障害
- 44 重複障害
- 45 DSM−W
- 46 てんかん
- 47 脳性麻痺
- 48 脳波
- 49 発達障害
- 50 場面緘黙
- 51 パラフィリア
- 52 ヒステリー
- 53 肥満
- 54 病識
- 55 病態水準
- 56 不安神経症
- 57 片頭痛(偏頭痛)
- 58 未熟児
- 59 妄想
- 60 夜尿
- 61 養護診断
- 62 抑うつ神経症
- 63 予後
- 64 離人症
- X 保健・福祉・矯正にかかわる問題
- 1 親の会(自助グループ)
- 2 家庭裁判所
- 3 教育基本法
- 4 子どもの権利条約
- 5 児童自立支援施設
- 6 児童相談所
- 7 児童養護施設
- 8 情緒障害児短期治療施設
- 9 少年院
- 10 少年鑑別所
- 11 少年法・児童福祉法
- 12 精神保健福祉センター
- 13 精神保健福祉法
- 14 ノーマライゼーション
- 15 BBS運動
- 16 保護観察所
- 17 補導
- 18 民生委員・児童委員
- 19 メンタルフレンド
- 20 ユニセフ・WHO
- Y 教育相談にかかわる行動上の問題
- 1 いじめ(心理機制)
- 2 いじめ(対応)
- 3 学業不振
- 4 家庭内暴力
- 5 虚言癖
- 6 近親姦
- 7 校内暴力
- 8 サブカルチャー
- 9 児童虐待
- 10 情緒障害
- 11 触法行為・虞犯
- 12 神経症的習癖
- 13 性非行
- 14 セクシャル・ハラスメント
- 15 怠学
- 16 注意引き行動
- 17 反社会的行動・非社会的行動
- 18 引きこもり
- 19 非行
- 20 不純異性交遊
- 21 不登校(状態像・要因)
- 22 不登校(回復過程・教育的支援)
- 23 偏食
- 24 マスターベーション
- 25 マンガ・ゲーム・ファミコン
- 26 万引き(窃盗)
- 27 薬物乱用
- 28 離婚
- Z カウンセリングの理論と技法
- 1 アサーション・トレーニング
- 2 イメージ療法
- 3 インフォームド・コンセント
- 4 エンカウンターグループ
- 5 親業・教師業訓練
- 6 解釈
- 7 カウンセラー的家庭教師
- 8 家族療法
- 9 危機介入
- 10 基本的応答技法
- 11 キャンプ(療法)
- 12 教育分析(個人分析)
- 13 芸術療法
- 14 ゲシュタルト・セラピー
- 15 現実原則・快感原則
- 16 構成的グループ・エンカウンター
- 17 行動化(アクティング・アウト)
- 18 行動療法
- 19 交流分析
- 20 コンサルテーション
- 21 サイコエデュケーション(心理教育)
- 22 作業療法
- 23 CAP(子どもへの暴力防止)
- 24 自己開示
- 25 修正情動体験
- 26 集団療法
- 27 自由連想(法)
- 28 自律訓練法
- 30 心理アセスメント
- 31 心理劇(サイコドラマ)
- 32 心理リハビリテーション
- 33 心理療法
- 34 スーパービジョン
- 35 スピーチ・セラピー
- 36 精神分析
- 37 ソーシャル・スキル・トレーニング
- 38 直面化
- 39 治療教育的アプローチ
- 40 治療構造
- 41 沈黙
- 42 デイケア
- 43 抵抗
- 44 転移・逆転移
- 45 転移性治癒
- 46 電話相談
- 47 洞察
- 48 動作法
- 49 内観療法
- 50 認知療法
- 51 箱庭療法
- 52 ピア・カウンセリング
- 53 被害者相談 非指示的カウンセリング
- 54 風景構成法
- 55 フォーカシング
- 56 ブリーフ・セラピー
- 57 プレイ・セラピー(遊戯療法)
- 58 森田療法
- 59 夢分析
- 60 来談者中心療法
- 61 ラポール(ラポート)
- 62 ロール・プレイ
- 事項索引
- 執筆者一覧
はじめに
現在わが国の教育の現場では,戦後すぐの学制改革に匹敵するような大きな出来事が起こっているように思われる。それは小学校から大学に至るまで,「不登校」「非行・暴力」「注意散漫」「学級崩壊」「校内暴力」といった様々な形で示されている心の荒廃の姿である。明治からの学制や新制度となった戦後の学制が一貫して強調してきたのは,知的な教育であった。訓育や道徳教育が主張されてきて,学校の中ではそれなりに時間をとって教育がなされてきたが,心の教育に関してはほとんど意味をなしてこなかった。それは上に述べた心の荒廃の姿が証明しているのではないだろうか。
戦後教育を受けた世代が親世代となり,その子どもたちが学校で教育を受けるようになると,戦後の教育制度の特性がはっきりと表面化するようになった。戦前の美徳とされてきた規律,秩序,先輩を尊敬すること,ものを大切にすること,他人の意向を尊重することなどはすべて,若い人々からなくなってしまったように思われる。それは家庭に自分の子どもたちを教育する力がなくなったことが大きいと考えられる。教育力の低下は家庭内だけでなく,家庭を支える地域にも見られなくなり,地域の重要な集合的存在としての学校にもなくなってしまっている。教育の現場では個性や自由は強調されるが,支えあいや助けあいといった人と人との大事な関わりの意識はほとんど欠如しているのではないだろうか。
このような家庭や学校の中から生み出された病理現象は今に始まったものではなく,以前からあったものだとして,これまで本気に取り組もうとしてこなかった。そしてもはや手遅れの状態になって何とかしなければならないという意識が芽生えて来ているのが,わが国の現状ではないだろうか。
文部省も学校の問題のために,養護教員制度を充実させたり,学校カウンセラー制度を導入しようとしたりしている。また,相談機関を充実させたりしてこの問題に対応しようとしている。これらの処遇で問題が片付くとは思われない。しかし,何らかの応急処置なしでは傷を大きくするばかりであろう。教育の問題を養護教諭や学校カウンセラーなど専門家のみで解決しようとしてもそれは不可能であろう。必要なことは,家庭や学校において心の教育力をどのように回復していくかについて真剣に取り組むことである。しかしそうは言っても,学校の現実の様々な不適応の問題を放置してよいことにはならない。可能な限り,親や教師のひとりひとりが子どもに真剣に正面から向き合うことが現在求められている。
それではどのように向き合えばいいのであろうか。これは言うは易く,実行は難しい問題である。必要なことはまず,心の問題は何なのか,心のどんな仕組みが難しくなっているのかをしっかり掴むことであろう。
私たちが本書で意図したのは,子どもたちの心に起こっていることを少しでも理解できるようにすることであった。そして子どもを持つ親や教育に携わっておられる教師や地域で子どもに接して援助活動をしておられる人々に何らかの情報を提供して,子ども理解に役立てていただくことであった。
子どもたちへの教育問題は,私たちひとりひとりの問題である。わが国のすべての大人ひとりひとりが真剣に取り組まねばならない問題である。ただ学校や教師だけの問題ではない。その点で,わが国の教育に関心のあるすべての人に,必要に応じてこの本を手にとって読んでもらいたいと考えている。
本書は多くの人の手によって書かれている。専門家の共同作業で出来たものである。その著者名は巻末に示してある。また,編集に当たって,労をとってくださった明治図書出版の樋口雅子さん,樋川薫さんにお礼を申し上げたい。
1999年6月1日 編者 /鑪 幹八郎 /一丸 藤太郎 /鈴木 康之
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- 明治図書
- 教員時代に自分の勉強のために購入しましたが、今は教育相談にかかわる仕事をしており、職場に置いてます。この本を購入した時期はデジタル書籍は非常にマイナーでした。現在はデジタル書籍がかなり定着しており、子どもの心理に対する研究も進んでいるので、デジタル版として定期的に内容が更新されていくといいですね。2015/10/840代・教委