- はじめに
- T章 国語科授業の学習チェックと子どもの学び
- 1 学習チェックとは何をすることか
- 2 学習チェックの必要性
- 3 学習チェックをどのように行うのか
- 4 学習チェックをどう生かせばよいか
- 5 子どもの発想を見抜く学習チェック
- 6 子どもの既習事項活用の学習チェック
- 7 子どものつまずきと学習チェック
- 8 指導と評価の一体化
- U章 国語科授業の学習チェックミニ技法のポイント
- 1 子どもの反応を予想するミニ技法
- 2 支援の手立てを準備する
- 3 導入の興味・関心を喚起させるときの子どもの反応の見取り方のコツ
- 4 展開の学習の山場の場面での子どもの反応の見取り方のコツ
- 5 終末のまとめの活動での子どもの反応の見取り方のコツ
- 6 個別学習での支援の技法
- 7 話し合い活動での支援の技法
- 8 スピーチの学習での支援
- 9 作文での支援の技法
- 10 読み取りの学習での支援の技法
- 11 本時の学習の振り返りでの進歩の確認の仕方
- 12 単元の学習の振り返りでの進歩の確認の仕方
- V章 わかる・できる・つかえる学習チェックミニ技法の事例
- §1 第1学年の学習チェックミニ技法
- 1 経験したことを報告すること
- 2 対話をすること
- 3 身近な人にあいさつしたり連絡をしたりすること
- 4 経験したことを報告すること
- 5 紹介したことをメモにまとめて書くこと
- 6 本を楽しんで読むこと
- 7 物語を読んで想像すること
- 8 物語の内容を演じること
- 9 物語の読み聞かせを聞くこと
- 10 物語の感想を書くこと
- §2 第2学年の学習チェックミニ技法
- 1 身近な事物に関する説明をすること
- 2 友達の話を聞いて感想を述べること
- 3 グループで話し合って一つにまとめること
- 4 知らせたいことを紹介すること
- 5 想像したことを書くこと
- 6 観察したことを記録する文章を書くこと
- 7 伝えたいことを簡単な手紙に書くこと
- 8 事物の仕組みについて説明した本を読むこと
- 9 科学的なことに関する本を読むこと
- 10 読んだ本の好きなところを紹介すること
- §3 第3学年の学習チェックミニ技法
- 1 出来事の説明や報告をすること
- 2 学級全体で話し合うこと
- 3 図や表を読み取ったことを話すこと
- 4 身近なことや想像したことを詩につくること
- 5 疑問に思ったことを調べて文章を書くこと
- 6 目的に合わせて案内状を書くこと
- 7 物語や詩を読み,感想を述べ合うこと
- 8 図鑑や事典を読んで利用すること
- 9 紹介したい本を取り上げて説明すること
- 10 必要な情報を得るためにいろいろな本を読むこと
- §4 第4学年の学習チェックミニ技法
- 1 説明や報告を聞いて意見を述べること
- 2 学級全体で話し合って考えをまとめること
- 3 図表や絵,写真などから読み取ったことを話すこと
- 4 身近なことや想像したことを物語にして書くこと
- 5 調べたことを学級新聞に表すこと
- 6 資料を効果的に使って説明文を書くこと
- 7 目的に合わせて依頼状や礼状を書くこと
- 8 記録や報告の文章を読むこと
- 9 必要な情報に即した文章を読んでまとめること
- 10 課題に即して記録や報告の文章を読んでまとめること
- §5 第5学年の学習チェックミニ技法
- 1 資料を提示しながら説明や報告をすること
- 2 調べたことについて討論すること
- 3 事物や人物を推薦すること
- 4 経験や想像を基に短歌・俳句をつくること
- 5 課題について調べたことを書くこと
- 6 事物のよさを多くの人に伝える文章を書くこと
- 7 伝記を読んで自分の生き方について考えること
- 8 課題解決のために意見や解説を述べた文章を読むこと
- 9 記事の書き方に注意して新聞を読むこと
- 10 本を読んで推薦の文章を書くこと
- §6 第6学年の学習チェックミニ技法
- 1 話を聞いて助言や提案をすること
- 2 いろいろな形態(パネルディスカッション,シンポジウム等)で討論すること
- 3 自分の生き方と関わらせて話すこと
- 4 経験や想像を基に随想を書くこと
- 5 課題について調べた事柄を編集すること
- 6 事物のよさについて考えを明確にして文章を書くこと
- 7 6年間を振り返って思い出の深い出来事を書くこと
- 8 物語の人物の生き方と自分の生き方とを比べて読むこと
- 9 編集の仕方に注意して新聞や雑誌を読むこと
- 10 将来のことについて書かれた本を読むこと
- W章 ミニ技法を位置づけた国語科授業のモデル指導案
- 1 「話すこと・聞くこと」の学習のモデル案
- 2 「書くこと」の学習のモデル案
- 3 「読むこと」(文学的文章の解釈)の学習のモデル案
- 4 「読むこと」(説明的文章の解釈)の学習のモデル案
- 5 「伝統的な言語文化」に関する学習のモデル案
はじめに
今年は,小学校で新しい学習指導要領のもとに教育活動が展開される元年となります。今回の国語科における学習指導要領の主な改善点は次の通りです。第一は,国語科での学習過程を重視したことです。例えば,「書くこと」の領域では取材,構成,記述,推敲というように,実作する過程に即して指導事項が配列されているのです。第二は,学習内容・事項の系統性を踏まえたことです。例えば,「話すこと・聞くこと」の領域で掲げられている言語活動例をみてみましょう。対話からグループでの話し合い,学級での話し合い,討論会というように学年の発達段階に即した内容が系統的に明示されています。第三は,学習した内容や学習成果物を友だちと「交流する」ための指導事項が示されたことです。
このような改善点から国語科の授業を想定したり日常的に行われている国語科の授業を見たりするうちに,心配なことや懸念されることが生じてきました。それは,国語科の授業が「学習活動中心」になっていないかということです。例えば,対話の言語活動の授業です。二人組で互いに話題について話し合っているだけの授業になってしまっているのではないでしょうか。対話には,相手の話をうなずいて聞くこと,話の内容を受け止めて質問すること,質問するときは一つの話題についていくつか質問することなどのねらいがなくては,対話することの学びが習得できないからです。
「交流する」学習活動でも同様です。例えば,吹き出しに書いた内容をグループで発表し合う学習活動がよくあります。ここでも,友達の書いた吹き出しの内容と自分のそれとを比べて,共通点や相違点を考えるための視点や観点を子どもに示さなくては効果がでません。友だちと「交流する」学習活動を取り入れるだけでは,学ぶ力が身に付かないのです。
国語科の授業では,「すべてねらいに基づいて学習活動が展開される」ことを念頭に置いて授業構想を立案していくことが求められます。このことを踏まえて,本書では,国語科での学習活動のねらいとは何か,そのねらいがどのように定着していけばよいのか,定着の度合いをどのように測っていけばよいのかなどの課題に基づいて実践的事例が提案されています。
つまり,国語科でのそれぞれの学習活動にはねらいがあること,そのねらいを達成するためのさまざまな指導法があること,そして,子どもの学習状況に応じた学習活動の提示や評価の観点・評価方法があることを本書の内容構成としました。そして,何よりも子どもの学習状況を評価したりチェックしたりすることは,教師自らの指導のあり方に関連しているという考え方に立って「指導と評価」の一体化を目指しているのです。
本書は国語科における授業の学習活動をPDCAのサイクルに基づいた多様な手立てを例示しています。各学校ですばらしい国語教室が創造されることを願って本書をお贈りします。
平成23年6月 編者 /井出 一雄
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- 明治図書