- まえがき
- 序章 「思い」によりそう
- 「思い」によりそうとは/ 雅之のこと〈小学部にて・中学部にて〉
- 第1章 「思い」を育む
- 1 子どもの姿から
- (1)音楽に合わせて,太鼓をたたきながら踊った佳代
- (2)友達へのプレゼントを買った克幸
- (3)母親の誕生日にケーキを作った喬子
- 2 「思い」を育む
- (1)「思い」と行動の広がり・22
- (2)子どもが「思い」を育むための支援・23
- 第2章 環境づくり
- 1 「子どもが思いを育む」環境
- 2 環境を整えた授業づくり〈哲男について〉
- (1)取り上げる思いと今の姿
- (2)期待する姿
- (3)題材「つんで つんで ボールタワー」
- (4)実際の授業で
- 第3章 「思い」を育む子どもたち
- 事例1 [小学部 自立活動] 『教師と遊びたい。』という思いを育んでいった清春
- 『教師と遊びたい。』清春/ 授業の実際/ 生活や他の授業の中で
- 事例2 [中学部 職業・家庭科] 『いっしょにやりたい。』という思いを育んでいった俊和
- 『いっしょにやりたい。』俊和/ 授業の実際/ 生活の中でも思いを育み,行動を広げていった俊和
- 事例3 [高等部 生活単元学習] 『みんなで楽しみたい。』という思いを育んでいった郁男
- 郁男が思いを育むために/ 授業の実際/ 生活の中でも思いを育んでいった郁男
- 事例4 [小学部 交流学習] 『友達と遊びたい。』という思いを育んでいった省吾
- 友達いっぱい/ 省吾の思い/ 省吾に期待する姿/ みんなと笛を吹きながら踊ったよ/ 生活の中でも思いを育む省吾/ 省吾の姿から
- 第4章 こんな環境があったから
- 1 行動を広げようとする意欲を高める環境C
- (1)人
- 1教師/ 2友達
- (2)もの
- (3)こと
- 2 こんな環境で子どもは意欲を高めた
- こんな「教師」や「友達」がいたから
- 事例1 [小学部 体育科] 大好きなキャラクターに扮した教師がいたから
- 正光の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例2 [中学部 国語科] 清江の言うとおりに行動する教師がいたから
- 清江の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例3 [中学部 生活単元学習] 友達を手伝っている教師がいたから
- 敏哉の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例4 [小学部 算数科] 木の実を指差して数えている友達がいたから
- みゆきの思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例5 [高等部 音楽科] 楽しそうに歌っている友達がいたから
- 義明の思いと期待する姿/ 授業の実際
- こんな「もの」があったから
- 事例1 [小学部 図画工作科] 大きな紙があったから
- 明美の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例2 [小学部 音楽科] 動物のお面があったから
- 緑の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例3 [中学部 音楽科] もりあがりのある曲があったから
- 悦子の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例4 [高等部 国語科] 中日ドラゴンズの選手の大きなパズルがあったから
- 琢馬の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例5 [高等部 情報科] いつものテンプレートがあったから
- 久美子の思いと期待する姿/ 授業の実際
- こんな「こと」があったから
- 事例1 [小学部 音楽科] たくさんの友達がいろいろな楽器を鳴らしていたから
- 慎平の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例2 [小学部 国語科] 教師や友達が変身して目の前に現れたから
- 千暁の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例3 [小学部 図画工作科] 教師が近くで砂山に穴を掘っていたから
- 加寿男の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例4 [中学部 数学科] ゲームをクリアして喜んでいる他のチームが見えるから
- 浩一の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例5 [高等部 数学科] ボールをかごにいっぱい入れて遊べるから
- 正人の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 3 いろいろな授業で(各学部より)
- 全学級合同生活単元学習(小学部)
- 事例1 [小学部 全学級合同生活単元学習] みんなの前で「手はおなか。」と言った文彦
- 文彦の思いと期待する姿/ 授業の実際
- 事例2 [小学部 全学級合同生活単元学習] 大好きなつみ木ゲームで遊んだ妙子
- 妙子の思いと期待する姿/ 授業の実際
- グループ合同の保健体育科(中学部)
- 事例1 ボールの転がる方向に移動しボールを受けた克幸
- 事例2 がんばった友達をみんなの前で発表した誠
- 事例3 ボールを勢いよく蹴って喜んだ俊和
- 事例4 友達に,受け取りやすいボールを投げたなつ江
- 事例5 一生懸命走って,自己最高得点を出した芳子
- 作業学習(高等部)
- 事例1 [縫製班] ランチョンマットの飾りをきちんと縫いたいという思いから
- 秀敏の思いと期待する姿/ 作業の実際
- 事例2 [農園芸班] パンジーの苗をたくさん育てたいという思いから
- 徹の思いと期待する姿/ 作業の実際
- 事例3 [木工班] 折りたたみの椅子をうまく作りたいという思いから
- 次郎の思いと期待する姿/ 作業の実際
- 第5章 生活の中で
- 事例1 [小学部] 友達とかかわりをもち始めた邦夫
- 「邦夫くん,おはよう。」/ 「慎平くん,邦夫くんと手をつなぎます。」/ 「みーんな,ともだち,いえぃ。」/ 「つぎは,ひがしおかざき。ひがしおかざき。」/ 「手を合わせてください。いただきます。」/ 「邦夫くん,慎平くん,給食に行きますよ。」
- 事例2 [小学部] 歌をみんなの前で歌った晴美
- 踊るって楽しいな/ 楽器を鳴らすの,楽しいね。/ 歌を口ずさんだよ/ 初めから最後まで歌ったよ
- 事例3 [中学部] 「あそぼ。」活動的になったなつ江
- 「なけ。」/ 「いこ,自転車。」/ 「ねむれ。ねむれ。」/ 「あそぼ,ボール。」/ 「これで,」「そうじを,」「おわります。」/ 「いむらくん,いこ。」
- 事例4 [中学部] ことばで人とかかわり始めた志保子
- 思いは『ことばで遊びたい。』/ コンピュータは好きな文字がいっぱい/ ことばの使い方が広がった/ 「そうだよ。マラソンしようね。」
- 事例5 [高等部] みんなの前で友達と歌を歌った充
- みんなの前で発表会/ みんなの前で,友達と一緒に
- 事例6 [保健室] 手紙で気持ちを伝えた芳子
- それは1枚の紙から始まった/ あたためられた手紙/ [ナイスなアドバイスありがとうございました]/ 自分で手紙を渡した/ 友達のことで
- あとがき
まえがき
本校では,昭和42年の開校以来,一貫して「一人ひとりを生かす」を教育理念として,実践研究に取り組み,これまでに10冊の出版を介してそのささやかな成果を世に問い,皆様方のご批判ご指導をいただいてまいりました。そして,ややもすれば陥りがちな,子どもに学ばせる,できるようにさせるという,子どもにさせていた実践活動に反省を感じ,今までの研究をもとに「子どもによりそう」の原点にたち返りながら,平成10年度より,子どものもつ「思い」を中心に研究に取り組んでまいりました。力足らずで,不充分なことも多く,様々なご助言ご批判を仰ぎたいと思いますが,その実践記録をここに報告できますことは,大きな喜びであります。
一本の木が,種から芽を出し,大きくなっていくつかの枝を広げていくように,一つの思いからいくつもの行動を広げていく。それが,思いを育むことである。私たちは子どもが行動を広げた結果を目的にしてはならない。子どもが自分から行動を広げることができることを目的とするのである。それが,子どもの思いを育むことができた証であるから……。
4月4日の日報より
本校の子どもたちの「思い」を的確にとらえ,「思いを育む」子どもを育てることは,「行動」と結びつくことでイメージはできても,子どもが自分から行動を広げていくことができるように育てていくことであり,難しいことでした。
「心をかけて,手をかけるな」この言葉は,校長先生が入学式で話された言葉である。そのとき「その通り」と納得してしまった自分がいた。
子どもに手をかけすぎの教師をよく見る。なぜ,その子に今それをさせているのか分からないときもある。よく見ると教師の顔は笑顔でない。おいおい,子どもをよく見てくれ,もっと子どもを愛してくれと言いたくなる。
何もしないでそばによりそう教師を見かけるときがある。よりそう教師にも二通りある。子どもをじっと笑顔で見ている教師と,難しい顔で見ている教師である。どっちが心をかけようとしている教師で,どっちが手をかけようとしている教師かは,言うにおよばずである。
5月18日の日報より
笑顔で子どもたちを見守り,見つめる教師集団の実践研究である本書が,少しでも皆様のお役に立てれば幸いと存じます。
最後になりましたが,本書の出版に対して深いご理解とご支援を賜りました石塚嘉典氏・庄司進氏をはじめ,明治図書編集部の方々に,厚くお礼を申し上げます。
平成13年9月 愛知教育大学附属養護学校長 /間々田 博司
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- 明治図書