総合的学習の研究2小学校総合的学習の新展開

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理論編では、小学校総合的学習の多様な類型を明らかにし実践編では全国各地の先進校10校の実践を紹介し、実践の考察から実践の可能性を探る。


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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-022817-3
ジャンル:
総合的な学習
刊行:
7刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 208頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
はしがき
理論編
T 小学校総合的学習の多様な類型 /村川 雅弘
1 研究開発学校の成果と総合的学習
2 総合的学習の「総合性」
3 総合的学習の多様な類型
4 総合的学習の2つの目的からみた分類
5 総合的学習カリキュラムの体系化
U なぜ総合的学習か /寺西 和子
1 「自己を創る」総合学習 生きることと学ぶことの結合
2 総合的学習とは
3 総合的学習の諸類型
V 総合的学習とメディアの活用 /山内 祐平
1 総合的学習と情報教育の関係
2 学習環境論から見た情報教育と総合的学習
3 カリキュラム論から見た情報教育と総合的学習
4 教師論・組織論から見た情報教育と総合的学習
5 まとめ
W 総合的学習の展開と教師教育 /生田 孝至
1 総合的学習と新しいリテラシー
2 教師に求められる総合的学習の力量
3 教師の変革を求めて
X 総合的学習による生活科の発展 /村川 雅弘
1 総合的学習の導入は生活科への追い風
2 生活科の大単元化・総合単元化
3 生活科を核にした合科的指導から総合的学習へ
4 豊かな体験に支えられた「思い」の総合的な表現
5 総合的な教育課題からみた生活科の内容の見直し
6 「生きる力」
7 生活科の本質を問いなおす
Y 戦後の新教育から学ぶものは /有本 昌弘
1 はじめに
2 戦後の新教育を探る
3 最後に
実践編
T 人間らしく主体的に生きる力を育てる「統合」の学習 /静岡大学教育学部附属浜松小学校
1 生きる力を育てる「統合」の学習
2 「統合」の学習
3 6年「自分ができることをしよう」の実践
4 まとめ
U 心の育ちを目指す総合的学習 /(附小タイム)の実践 /香川大学教育学部附属坂出小学校
1 附小タイムへの取り組み
2 対象を拡げ,心を育む実践化
V 生活科(野菜栽培単元)を核とした総合的学習 /徳島県松茂町立喜来小学校
1 はじめに
2 授業実践を通して
3 おわりに
W  国語科を中心にした総合表現活動 /京都市立御所南小学校
1 はじめに
2 新しい単元づくり
3 学習活動の工夫
4 ティームティーチングの工夫
X 放送を活用した総合的学習 /岡山市立平福小学校
1 生き生きと目を輝かせて学ぶ平福っ子に
2 領域での取り組みの視点
3 実践例(第6学年 環境学習の取り組み)〜理科「人とかんきよう」を柱にして〜
4 実践を終えて
Y  新しい教育課程の再構築と総合的な学習活動の展開 /上越市立大手町小学校
1 子どもの資質・能力を育む7単元群による教育課程の編成
2 今日的な課題に応える単元開発
3 総台的な学習と教育課程の評価
Z 総合学習は授業者の学力観と授業観をどう変容させたか
☆「環境」の授業過程における教師の意思決定分析を通して /東京学芸大学教育学部附属大泉小学校
1 はじめに―教科学習と総合学習に対する教師のとらえ―
2 「わたしと環境」における意思決定の実際
3 まとめ―総合学習における教師形成―
[ 子どもの価値意識や情意を生かした総合的学習
―大阪教育大学教育学部附属平野小学校―
1 はじめに
2 「l年生が○○と思う学校にしよう」(2年)
3 「学習コーナーをつくろう」一平野学習館をつくるう@―(3年)
4 おわりに
\ インターネットで一人一人の児童が情報発信 /大津市立平野小学校
1 インターネットの利用と総合的学習の結合で拓く「211f紀の授業j
2 「21世紀の授業」
3 6年総合学習「課題研究」
] 子どもが求め,追究する総合的学習 /伊那市立伊那小学校
1 はじめに
2 学習の実際「月組天竜川たんけん」(3年生)
3 学習活動の様子
4 おわりに
まとめ1 実践研究のまとめと考察 /村川 雅弘
1 実践校の総合的学習の特徴
2 実践校に学ぶ手だて
3 今後の課題
まとめ2 総合的学習の方向と可能性 /水越 敏行
1 守備範囲をもっと明確に
2 教師の指導性について
3 授業システムの変革を

まえがき

 教育界の動きが速い。本書の原稿の第一次素案を書いたのが、第16期中教育審議会の第2次答申が出た直後であった。その後に「総合的な学習」(仮称)や情報教育などの論議や実践が、一気に加速してきた。教育課程審議会は「教育課程の基準の改善の基本方向について」中間まとめを1997(平成9)年11月に出してきた。これによって環境教育、情報教育、国際理解教育、福祉教育などを主な柱にする総合的学習の輪郭が、はっきりしてきた。生活科を受けて、小学校3年生から高校に至るまで、年間に70から100時間以上を当てるという時間配当と相まって、教育界に新しい衝撃を与えている。講演会、シンポジウム、実践公開等が、立て続けに各地で開かれている。

 さらに「情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議」の第一次報告書も相前後して出された。これによってマルチメディアやインターネットの教育利用への方向性が出てきた。中学校の情報基礎の必修、情報応用の選択、そして高校には情報科の新設〜必修化といった動きが、これまた教育界に衝撃を与えている。

 こういう時に原稿をまとめるのは、まことにつらい。初稿に次いで、第2次、第3次の追加や書き換えを編集部にお願いしたが、それでもなおゲラには新しい書き込みや、削除を余儀なくされた。論文や著書を書き出して30年あまりになるが、こんな経験は、まさに初めてのことである。編集部には迷惑と知りつつも、可能な限り新しい情報と、実践事例を盛り込まないと、読者に申し訳ないと思い、あえて追加や書き換えをお願いした次第である。

 さて最初は私の単著を1冊だけを世に問うつもりであった。しかし江部満・樋口雅子という長年のコンビから、小学校編、中学校編と合わせて、3分冊で出すようにしてはどうか、とのお勧めを頂き、急瀘その方向に切り替えることにした。小学校編は村川雅弘、中学校編は木原俊行という当節の若手のホープに、編集をお願いした。そして理論編の執筆に当たられる研究者には、大阪で宿泊研修をお願いし、3分冊の構想をねり、かつ実践事例をお願いする学校を検討しあった。しかしこの面々もまた、前記したような教育界の激しい、急激な波に揺さぶられ、苦労を重ねられたことであろう。

 しかしながら動きが急速なのは、教育界だけではなく、社会全体が激しく動き、変化しているのである。しかも「不易と流行」という鉄則は、いぜんとして生きている。変わり行くものだけに目をとられるのでなく、変わらないもの、変えてはならないものをもしっかりと見据えていかねばなるまい。まして総合的学習については、「この道はいつか来た道」なのである。何が繰り返しで、何が変化したのか。どんな学力がそこで要求されてくるのか。こうしたことを実践をくぐる中で、確かめて行かねばなるまい。

 本書と他の2分冊を世に問うために、何度も執筆者が会合を持ち、学校現場を訪問して事例を検討しあってきた。そのための資金として、松下視聴覚教育研究財団から助成金を頂けたことが、大きなはずみになった。厚く御礼を申し上げる。3分冊の出版を快諾していただいた明治図書にも、重ねて感謝の意を捧げたい。

 読者の皆さまの厳しいご批判とご教示を頂き、私たちの足りない点を反省し、修正していきたい。そしてこの先の新しいカリキュラム改革、情報教育の指針を編み出すことにもつなげていきたい。


  1998(平成10)年春   /水越 敏行

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      明治図書

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