- はしがき
- 第1部: 総合的学習と新教育課程
- T 総合的学習はいつか来た道
- 1 過去の実践に学んで未来を開こう
- 2 高岡市の総合的学習・今昔
- 3 総合的学習の先導的な試み〜東京学芸大学附属大泉小学校〜
- U 生活科と総合的学習の接続
- 1 両者の連続性と非連続性
- 2 生活科の内容を見直そう
- 3 生活科の授業を支える諸要素
- V 選択教科の学習と総合的学習との関係
- 1 新教育課程における選択学習重視の姿勢
- 2 中学校カリキュラムの多様な展開
- 3 中学校におけるカリキュラム開発の障害とその克服方法
- 4 教師間の対話と協力の重要性
- 第2部: 総合的学習を支える学校システム
- W 地域素材の発掘と活用
- 1 地域素材活用の意義
- 2 地域素材活用の視点
- 3 地域素材活用のルールとシステム
- X 学習環境と時間の弾力化
- 1 岐阜県池田町立池田小学校
- 2 京都市立高倉小学校
- 3 東広島市立西条小学校
- 4 香川大学教育学部附属坂出中学校
- Y ティームティーチングの展開
- 1 小学校でのティームティーチング
- 2 中学校でのティームティーチング
- Z 外部人材の活用
- 1 外部人材活用の必要性と原則
- 2 外部人材活用のアイデア
- 3 外部人材活用の実践事例
- 第3部: 「総合的な学習の時間」におけるメディア活用
- [ 放送とインターネットによる共同学習の成立
- 1 総合的学習におけるメディア活用の意義
- 2 総合的学習におけるメディア活用の実際〜東京都目黒区下目黒小学校 西山充教諭の環境教育実践から〜
- 3 総合的学習におけるメディア活用のルール〜岡山市立平福小学校 三宅貴久子教諭の環境教育実践から〜
- 4 サポート体制の重要性――何層にも及ぶ支援が必要
- \ 新しいメディアミックスのあり方を求めて
- 1 環境教育番組「みどりの地球」
- 2 三つの授業競演
- 3 3学級の授業の違い
- 4 これからの環境教育
- ] メディア活用と学校システムの整備
- 1 研究の方法
- 2 結果の考察
- 3 これからの方向は
- まとめに代えて
はしがき
教育現場では,新しい学習指導要領に向けての自主的な研究が始まっている。その中でも総合的学習をどう組み立てるのか,何を主題にとるのか。情報教育や外国語会話との関連は。また教師の指導性はどうあるべきか。こういった論議が今盛んに行われている。私たちが所属する学会でも,夏から秋にかけて,日本カリキュラム学会(名古屋大学),日本教育方法学会(金沢大学),日本教育工学会(富山大学)といずれもこの総合的学習を課題研究やシンポジウムの主題に位置づけている。附属学校の研究会でも軒並みこの主題を掲げている。流行に敏感な教育界ではあるが,これだけの「そろい踏み」がみられるのは,戦後教育史を振り返ってみても,あまり前例がない。
ただかけ声が揃ってきている割には,中身の掘り下げが足りない。全国各地を走り回って,実践の先導的な事例を紹介するだけでは,研究者はその役目を果たしたことにならない。わが校の取り組みを「〜プラン」と称して,事例発表を繰り返したり,華やかな出版物を発刊するだけでは,現場のカリキュラム開発研究とは言いがたい。そこでねらう学力は,各教科でねらうものとどんな関係になるのか。座学中心の揃える教育と,活動中心の違える教育とが,一つの学校のカリキュラムの中で,どのような関係にあるべきなのか,と言い換えてもよいだろう。またその新しい学力は,誰が,どのように評価すべきなのか。教師の新しい指導性はどうあるべきか。こういう基本的なことに,まだ正面から切り込んでいないのでないか。世紀をまたいでのここ1〜2年が,総合的学習の実践研究,学校手作りのカリキュラム開発の山場であろうと思う。
私たちはシリーズ『総合的学習の研究』として,「理論と展開」を水越が,また「小学校総合的学習の新展開」を水越・村川の編で,そして「中学校 選択と総合的学習の新展開」を水越・木原の編で,いずれも明治図書から1998年度に発刊した。幸いにもこれらが3版・4版と版を重ねることができ,各地の現場から励ましや質問を数多く受けることができた。さらに水越が明治図書の「授業研究21」に1998年4月から1年間,「総合的学習の実践課題」という連載講座を開かせてもらった。各社の月刊誌やシリーズ本にも私たちと現場との共同研究の成果をいくつも発表してきた。このあたりでもう一度研究を振り返り,総合的学習を成り立たせるための授業の諸要因をしっかりと見直してみよう。この1〜2年で発表してきたことを,初心に戻って検討し,「教育のシステム」として見直してみよう。こう考えたのである。
幸いにも明治図書の江部満,樋口雅子両氏が,新しい刊を勧めて下さったし,水越・木原という15年に及ぶコンビでの仕事を互いに確認しあえたので,もう一度チャレンジしてみることにした。各地の小中学校から,膨大な研究資料を頂き,関西大学の若い院生らと一つずつ分析し検討もした。水越と木原は意図的に視察現場を違えて,実践に参画し,その成果を定期的に持ち寄って検討してきた。98年度の3部作を超えるだけではなく,「実践の裏を掘り下げる」「比較して一般化できる点を見いだす」ように努めてみた。
読者の皆さんのご批評により更によいものを目指していきたい。
新緑映える中で /水越 敏行 /木原 俊行
-
- 明治図書