障害児教育双書
生活をひろげる子
子どもの「学び」を確かにする授業

障害児教育双書生活をひろげる子子どもの「学び」を確かにする授業

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親や教師の傘がなくても社会で生きていける力を身に付ける。

生徒一人ひとりを「身辺自立・基礎学力の習得・社会適応・職業人の育成」という方向で、より健全な社会生活を送ることのできる能力の獲得を目指す。教師集団の日々の研究活動と粘り強く、そして、個に応じた授業を展開。力強く成長する子どもとの姿を報告する。


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ISBN:
4-18-020811-3
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
対象:
小・中・高
仕様:
A5判 180頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
序章 生活をひろげる子を育てる
わたし,一人でできるもん/友達と「カルタ取りあそび」をしたよ
第1章 子どもの生活と「学び」
1 生活をひろげる子
2 子どもの「学び」
(1) 「学び」を生かす子ども
(2) 授業で「学び」を確かにする
(3) 授業と生活とのつながり
第2章 子どもを見つめて
1 動き出す子ども
2 子どもの今の姿
(1) 香の動き出す姿を見つめる
(2) 香の今の姿
3 子どもに願いをかける
(1) 生活をひろげる姿を願う
(2) 保護者とともに願う
(3) 子どもの願う姿と「学び」
第3章 願う姿に迫る学習活動
1 願う姿に迫る子ども
(1) 子どもの願う姿
(2) 願う姿に迫るために
2 子どもの願う姿に迫る学習活動
(1) 学習活動をつくる
(2) 授業で願う姿に迫る子どもたち
高等部 音楽科 ■比べる
鈴のついたリストバンドを選び,手にはめて踊った芳子
芳子の願う姿/芳子の学習活動をつくる/授業の実際
中学部 美術科 ■参考にする
海の中の岩や海草の図柄を見て,いろいろな模様をつけた鈴美
鈴美の願う姿/鈴美の学習活動をつくる/授業の実際
小学部 タイム学習 ■参考にする
教師がすべるのを見て,台車に乗ってすべり台で遊んだ久也
久也の願う姿/久也の学習活動をつくる/授業の実際
中学部 数学科 ■状態を見る
8匹のカニを指で3匹,3匹と押さえた後,貝を3個,3個,2個と取り出した加寿男
加寿男の願う姿/加寿男の学習活動をつくる/授業の実際
小学部 音楽科 ■状態を見る
2つのコンガを両手で打って鳴らした篤史
篤史の願う姿/篤史の学習活動をつくる/授業の実際
高等部 国語科 ■想起する
野球をして遊んでいるときの写真を見て,「バットで打って,走りました。」と言った節夫
節夫の願う姿/節夫の学習活動をつくる/授業の実際
中学部 保健体育科 ■想起する
ラケット型のバットを大きく振りぬいてボールを打ったみゆき
みゆきの願う姿/みゆきの学習活動をつくる/授業の実際
第4章 「学び」を確かにする学習場面
1 「学び」を確かにする子ども
(1) 「学び」を確かにすること
(2) 「学び」を確かにするために
2 子どもが「学び」を確かにする学習場面
(1) 学習場面を用意する
(2) 授業で「学び」を確かにする子どもたち
小学部 音楽科
曲の一部で,速さに合わせてカスタネットを鳴らした順平
順平の「学び」/授業の実際
小学部 体育科
川や岩を跳び越えて遊んだ隆之隆之の「学び」/授業の実際
中学部 数学科
もとのブロックが7個あることを確認して,続けて,「はち。」「きゅう。」と数えた茂男
茂男の「学び」/授業の実際
中学部 国語科
様子を表すことばを,変化をつけて読んだ友子
友子の「学び」/授業の実際
中学部 職業・家庭科
面からはみ出た布を,別の面へ押しつけて貼った省吾
省吾の「学び」/授業の実際
中学部 美術科
形を中心にして,お城の壁にいくつかの色を塗り広げた邦夫
邦夫の「学び」/授業の実際
高等部 数学科
ランチボックスごとに2ずつ数えて,4体の人形分のおにぎりを「はち。」と言った伸行
伸行の「学び」/授業の実際
高等部 タイム学習
お面を長机の上に置いて並べた後,壁にも掛けて並べた忠夫
忠夫の「学び」/授業の実際
3 作業学習で学ぶ子ども
(1) 本校の作業学習
(2) 高等部の作業学習
(3) 中学部の作業学習
(4) 作業学習で「学び」を確かにする子どもたち
高等部 窯業班
角度を変えて見て,正確に取っ手を取り付けた安彦
風鈴・ディナーベル作り/安彦の作業学習における願う姿と作業内容
高等部 縫製班
針を刺す印の近くの布を,左手で持ってししゅうした孝江
ティッシュカバー作り/孝江の作業学習における願う姿と作業内容
高等部 木工班
切断面の上部を見て,少しずつ板を押して切った敏哉
鍋敷き作り/敏哉の作業学習における願う姿と作業内容
第5章 生活をひろげる子どもたち
公園のすべり台を最後まで一息にすべり下りた佳代(小学部)
その友達と一緒に落ち葉を掃き取った康志(中学部)
「いいこと思い出した。」と,ピーマンを10個ずつ列に並べて数えた明美(高等部)
「いっしょだね。」と言って,湯飲みの模様までお茶を注いだ緑(小学部)
手を大きく動かして,友達と一緒に踊った妙子(中学部)
「みんな,あってよかったね。」と,友達に声をかけた真知子(高等部)
友達に向かって,足の前からボールを投げた守(小学部)
友達とのかかわりを増やしていった利美(中学部)
あとがき
研究同人

まえがき

 本校の総合治療室には,『教育方針』を記した額が掲げられています。そこには「生徒一人ひとりを伸ばす」として,「身辺自立・基礎学力の習得・社会適応・職業人の育成」が謳われています。本校は昭和42年6月に開校して以来,39年目を迎えた今日まで,知的障害のある子どもの,豊かな社会生活を送ることのできる能力の獲得を目指し,教育研究活動を進めてきました。


 わたしたちは「生活をひろげる子」の育成をテーマとして,教育研究を続けてきました。4年間の研究のまとめとして,『生活をひろげる子−子どもの「学び」を確かにする授業−』を上梓することができました。わたしたちは,「生活をひろげる子」をどのように育もうとしているのでしょうか。


 運動会でY子は,玉入れをして入った玉の数をみんなで数えるときに,教師が投げる玉を指差す姿を見せた。

 Y子は,友達のA子を追いかけて鬼ごっこをしたり,かくれんぼをしたりするなど,友達と遊ぶことが大好きである。さらに,友達の動きをまねる子でもある。そして,大好きな曲にある言葉を聞いて歌ったり,楽しく踊ったりして夢中になっているとき,言葉を発することがある。

 このようなY子には,大好きな遊び,一緒に遊ぶ友達,指差す場面を用意することで,Y子が今伸びようとしている1つ1つのものへの認識が確かになると考えた。そこで,算数の授業で,いつも一緒に遊び,まねるA子を隣にして,かごに入った玉をみんなで数えることにした。

 Y子は,1つずつ玉を指差し,「いち,に,さん,……。」と数えていくようになった。

 子どものいくつも見せる姿をとらえ,そのときの内面を押さえ,それぞれの点を結んで線にすることが,生活をひろげる子を育てることになるでしょう。

(平成16年4月5日の日報より)


 わたしたちは,子どもたちが自分の社会における生活をひろげ,豊かに生きることを願い,さまざまな学習や体験活動を試行錯誤をして,研究を進めてきました。1年次は「授業と生活とのつながりを探る」,2年次は「子どもに願いをかけてつくる授業」,3年次は「『生活にひろがる学び』を確かにする授業」,最終年次は「子どもの『学び』を確かにする授業」を副題として,研究を重ねてきました。


 子どもにかけた願いの実現のために,子どもとともに遊び,作業をし,活動することで,その子が今できることを手掛かりに,一歩ずつ願う姿に近づいていけるように教師は日々考えを巡らせ,子どもが生き生きと動き出す授業を工夫しています。そんな教師集団の温かい眼差しの下で,子どもたちが伸び伸びと明るく活動している様子を読み取っていただき,少しでも参考にしていただければ,これ以上に嬉しいことはありません。


 この間に多くの先生方から,温かくかつ時に厳しいご指導・ご支援をいただくことができました。また,本書の刊行に際して明治図書の石塚嘉典様・庄司進様にご協力をいただきました。心からの感謝を申し上げます。


  平成17年9月   愛知教育大学附属養護学校長 /目黒 克彦

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      明治図書

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