時々、“オニの心”が出る子どもにアプローチ
学校がするソーシャルスキル・トレーニング

時々、“オニの心”が出る子どもにアプローチ学校がするソーシャルスキル・トレーニング

好評7刷

オニの心を鎮め方を教えるために効果のあるアプローチを紹介

子どもが時々出す「オニの心」を鎮める・鎮め方を教える時期は、児童期をおいて他にない。学級集団という、人と人がかかわる場を活用しながら、「教えるべき時に教える」「人とかかわる楽しさの中で教える」を大切にするソーシャルスキル・トレーニングを紹介。
 


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ISBN:
978-4-18-020613-1
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
7刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 104頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年4月22日

目次

もくじの詳細表示

はじめに
T 現代の子どもたちの姿と支援の基本方策
1.子どもたちを囲む背景
2.子どもたちの姿
3.子どもを支援する基本方策
U 学校現場からの発信;誕生! SST(ソーシャルスキル・トレーニング)タイム
――愛知県岡崎市立矢作北小学校の実践
1.「人間関係づくり」に視点を当てた研究のスタート
2.誕生! SSTタイム
3.軌跡(日々の取り組み)が奇跡(予想を超えるうれしい変化)を生んだ!――SSTによる子どもたちの変化
V 「オニの心」の鎮め方を教えるアプローチ
――学校でするソーシャルスキル・トレーニング 5つのポイント
1.全校体制で取り組む・発表の場を設定する
2.年間計画を立てる
3.無理せずに取り組む
4.楽しい雰囲気の中で取り組む
5.日常に広げる
W これぞ最強・最高のソーシャルスキル・トレーニング
――教師によるモデリング
1.秋田県小学校教師(A先生)のモデリング;気になる子が気にならない学級1
2.愛知県中学校教師(B先生)のモデリング;気になる子が気にならない学級2
3.私のモデリング;養護学校の子どもたちとのかかわり
4.教師という「最高の教材」を用意する
X これは納得! ソーシャルスキル&ソーシャルスキル・トレーニングに関する理論・言葉
1.行動理論
2.欲求階層説
3.してみせて,言って聞かせて,させてみて,褒めてやらねば,人は動かず
4.子どもが出す「オニの心」を鎮める・鎮め方を教えるのは大人の役目
5.10歳までの教える生徒指導,10歳からの考えさせる生徒指導
6.日に用いて知らず
7.個性を捨てろ,型にはまれ
Y 「オニに金棒」のチーム支援
――専門家同士の作戦会議(コンサルテーション)
1.三重県津市立K小学校におけるコンサルテーション
2.愛知県岡崎市立矢作北小学校におけるコンサルテーション
3.コンサルテーションが機能する条件
4.専門家同士の連携をしていこう
おわりに

はじめに――時々子どもが出す「オニの心」の鎮め方を教える

 私は,平成元年から19年までの18年間,秋田県の養護学校(現特別支援学校)および教育委員会に勤務した。秋田では,子どもたち,保護者の方々,先生方から多くの学びを得,育てていただいたという感謝の気持ちでいっぱいである。その秋田が,平成19年度全国学力調査でトップというニュースを耳にしたとき,うれしさよりも「えっ,本当?」という驚きの気持ちがわいたのが正直なところである。それは,県をあげて「学力,学力!」と子どもたちや先生方のしりを強くたたいたという印象がなかったからである。しかし,そうした驚きの気持ちは徐々に「なるほど。そうかもしれない」という納得の気持ちに変わっていった。それは,特別支援教育担当指導主事として県内の多くの学校を訪問したときの印象が,「学級のルール・マナーがあり,落ち着いた学級」,「子どもと先生,子ども同士の関係があたたかい学級」が多くあったと思い出されたからである。

 秋田県教育委員会は,文部科学省が実施した生活状況に関する質問項目のうち,全国平均を上回った項目を組み合わせ,「秋田わか杉っ子 学びの十か条」をまとめている。その中で,特に目に留まったのは,「七 きまり,ルールは守ってあたりまえ」,「八 いつも気をつけている言葉づかい」の2項目である。秋田の子どもたちは,学習面,生活面,対人関係のルール・マナーを身につけているのである。学校,家庭,地域の教育力がうまくコラボレートし,当たり前のことを当たり前のこととして教え,子どもたちもそれを当たり前のこととして受け止め,身につけているのである。河村茂雄教授(早稲田大学)の言葉を借りれば,秋田の子どもたちは,「群衆」ではなく,一定の行動様式とルール・マナーを共有する「集団」の中で学んでいるのだといえよう。ルール・マナーは,子どもたちの安全・安定の欲求を満たすことになる。安全・安定感のある学級集団の中では,子ども同士のふれあいが生まれ,個々の承認感も高まっていく。そのようにはぐくまれた学級集団は,お互いを高め合う居心地のよい場所となり,学力もまた高まる「教育力のある集団」となるのは必然であろう。あらためて,学校教育のすべての土台が「学級(集団)づくり」にあることを教えてくれた秋田の子どもたち,先生方,関係するすべての皆さんに感謝したい。

 冒頭に掲げた「時々子どもが出すオニの心の鎮め方を教える」という言葉は,あるドキュメンタリー番組に出演された住職の言葉である。私自身,担任として子どもたちとかかわっていたとき,子どもたちの「オニの心」,つまり,自分勝手な振る舞い,わがままに翻弄された経験があるだけに,住職の言葉の大切さがよくわかる。先に挙げた秋田の子どもたちであれば,さながら「なまはげの心を出す」ということになろうか。子どもたちが時々出す「オニの心」を鎮める・鎮め方を教えるのは,教師や親などの大人の役目である。そして,その鎮め方の達人も各地に多くいるに違いない。しかし,本書では,学校という場で出会う子どもたちが出す「オニの心」を鎮める・鎮め方を教えるために,教師であればだれもが使え,しかも効果がある方法を提示したい。具体的には,発達障害のある気になる子等も含め,すべての子どもたちに適用可能なアプローチ技法として,現在,多くの学校で実践が展開されつつある「ソーシャルスキル・トレーニング」を取り上げたいと考えている。

 児童期(小学生)段階の子どもの発達特徴の一つに,「知識生活の黄金時代」がある。学習環境等の条件が整備されれば,子どもたちは学ぶことが楽しくて仕方がないといった意欲的な姿を見せるのである。その整備すべき条件の筆頭格がルール・マナー,特に人と気持ちよくかかわるためのルール・マナーとしての「ソーシャルスキル」であると考えている。「オニの心」の鎮め方を教えるのがなじむ時期は,児童期をおいてほかにない。学級集団という,人と人とがかかわる場を活用しながら,「教えるべきときに教える」,「人とかかわる楽しさの中で教える」等を大切にするソーシャルスキル・トレーニングを紹介したい。

 本書は,読者が「へぇ,なるほど」,「明日から使ってみよう」等の気持ちがわいてくるよう,理論と具体実践を織り交ぜ,「面白くて,ためになる」内容構成に仕上げてある。ぜひ,最後までお読みいただきたい。

 本書は,恩師である國分康孝先生・國分久子先生からさまざまな機会にご指導いただいたことが骨子となっている。具体的には,「教えることをためらわない」,「能動的であり,集団を対象とする」,「子どもを治すのではなく,育てるという視点をもつ」等がキーワードの「育てるカウンセリング」の考え方に基づき,内容をまとめたものである。実践及び理論の両面において拙い私をここまで導いてくださった両先生には,この場をお借りし,心よりお礼を申し上げたい。

 また,本書は,私の実践に目を留めてくださった明治図書の樋口雅子氏のお声かけがなければ世に出ていない。このような貴重な機会を与えていただいたことに謝意を表したい。

著者紹介

曽山 和彦(そやま かずひこ)著書を検索»

名城大学教職センター准教授。1961年群馬県生まれ。

東京学芸大学教育学部特殊教育科卒業,秋田大学大学院教育学研究科学校教育専攻修了(教育学修士)。東京都及び秋田県にて養護学校教諭,秋田県教育委員会指導主事,管理主事を経て,現職。学校心理士,上級教育カウンセラー,学校におけるカウンセリングを考える会代表。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    •  学級で手のかかる子に困ってみえる先生だけでなく、全ての学校の先生にお薦めの本です。支援の必要な子どもとの接し方、ソーシャルスキル・トレーニングの実践の仕方など分かりやすく書かれている、今すぐ役立つ本です。
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