人間教育学自立のための社会的人間形成

投票受付中

個性の伸長、いじめ問題の解決、福祉教育の発展などの今日的課題を人間教育の視点に立ち、理論面と実際面から人間形成の方向と内容を論じる。


復刊時予価: 2,959円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-016119-2
ジャンル:
教育学一般
刊行:
対象:
小・中・他
仕様:
A5判 216頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第1章 人間教育とはなにか
1 教育を基本的にどうとらえるか
2 教育は人間形成である
1) 豊かな人間性のある人間
2) 調和のある人間
3) 個性のある人間
4) 自主性のある人間
5) 社会性のある人間
第2章 児童生徒の実態をどう理解するか
1 児童生徒の実態とはなにか
1) 発達と能力
2) 興味,関心
3) 経験
4) 情意
2 児童生徒の実態をどう理解するか
1) 児童生徒を人間的に理解するための基本的視点
2) 児童生徒の実態を把握する方法
第3章 なにを教えるか
1 教育課程とはなにか
1) 教育課程とは
2) 教育課程の2つの性格
3) 教育内容は,なにによって規定されるか
2 学習指導要領とはなにか
1) 学習指導要領とは
2) 教育課程の編成について
3 教育計画とその再編成の必要性
1) 人間尊重の教育計画とは
2) なぜ再編成が必要か
4 指導計画作成上の配慮事項
1) 小・中学校および障害児教育諸学校における共通事項
2) 小・中学校および障害児教育諸学校における固有事項
第4章 どのように教えるか
1 子どもが生き生きと活動できる方式とは
1) レヴィンの行動様式
2) 子どもを高める学習条件
2 子どもが人間的に成長する方法とは
1) 人間的教化をはかる方法
2) 人間的教化の実証例
3 人間向上のための7つの指導原理とは
1) 子どもとの共在の原理
2) 直観を通した理解の原理
3) 活動促進の原理
4) 称賛強化の原理
5) 合自然の原理
6) 興味,関心の原理
7) 環境変化の原理
第5章 評価をどうするか
1 教育における評価のあり方
1) 人間形成に必要な評価とは
2) 個人のための絶対評価とは
3) 新学力観にもとづく評価のポイント
2 学習における評価のタイプと時期
1) どのようなタイプの評価があるか
2) どこで評価するか
3 評価をどう生かすか
1) 子どもの実態の見直し
2) 新しい指導計画の作成
第6章 魅力のある教師とはなにか
1 魅力のある教師の資質とは
1) 人間としての教師
2) 使命感を堅持する教師
3) 情熱と英知をかね備えた教師
4) 授業の専門家としての教師
2 有名人の心に残る教師とは
1) 吉野源三郎の恩師,芦田恵之助先生
2) 椋鳩十の指導者,正木ひろし先生
3) 山田太一の心をとらえたS先生
4) 黒柳徹子が慕う小林宗作先生
5) 東山魁夷を変えた出会いの先生たち
第7章 現代学校教育の10の課題とは
1 心の通いあう人間教育をどう進めるか
2 児童生徒の個性をどう進展させるか
3 いじめの問題をどう解決するか
4 地域交流教育をどう進めるか
5 教育内容,方法等をいかに適切なものとするか
6 国際理解を深め,国際交流を進めるにはどうすべきか
7 健康教育をどう発展させるか
8 同和教育をどう推進し,充実させるか
9 障害児教育をどう充実させるか
10 福祉教育をどう発展させるか
あとがき

まえがき

 現代が教育の荒廃の時代であるといわれてから久しい。われわれは,戦後,教育基本法において,「平和的な国家及び社会の形成者として,真理と正義を愛し,個人の価値をたっとぴ,・・・・・自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成」を教育目的に掲げた。以来,半世紀が過ぎたが,はたして,学校が平和的社会のなかで,個人の価値を尊重し,心身ともに健康な人間形成をはかることができたであろうか。それは,大いに疑わしい。

 今日の学校では,いじめが自殺へと急展して,きわめて深刻な社会問題となっていて,かけがえのない子どもの命を守るための,人間としての連帯的なかかわりが,強く求められている。登校拒否や心身症の児童生徒も増加し,校内暴力,高校の中途退学者も多く,無気力化や無感動化の現象も目立つ。あるいは,挨拶や感謝などの意を示す基本的習慣が欠如するなど,人間関係におけるさまざまな教育問題が生じている。

 これらの問題の背景には,過熱した受験競争がもたらす異常な事態,子どもをとりまく家庭・社会環境の変化,学校における人間関係の稀薄化,学習上の不適応化,あるいは家庭・社会の教育力の低下など,さまざまな要因があげられる。さらには,教師の側の問題もある。わが国のすべての教師が,教職に格別の使命感をもち,児童生徒の人間形成にひたすら情熱を傾け,子どもを人間的に高めるための教育実践を行って成果をあげているのだろうか。

 現代教育のこうした危機を打開するには,もちろん,受験体制の抜本的見直しや,教育制度上の改革もあるが,いま,現実に目の前の子どもたちを,人間的にどう育成するかといった切実な課題への対処が,なんといっても当面の急務なのである。いまこそ,すべての子どもを人間として高めるための人間教育が,教育上の最大の課題である。

 私は,かねてより,わが国の教育の憂うべき現状をなんとしても打破したい一念に燃えて,改めて教育を抜本的に見直すため,人間教育のあり方の見地から考察を重ねてきた。その結果,あえてここに,『人間教育学』の書題を掲げて世に問うことになった。『人間教育学』は,子どもを人間として社会的に自立するための教育の研究であって,それは,副題が示すように,自立に向けた人間形成論であり,社会的人間関係学であるといえる。

 本書は,全7章から成る。第1章では,教育の本質にふれながら,人間教育について論考するとともに,人間形成のビジョンを明らかにした。

 第2章では,児童生徒の理解に関する考察をとりあげた。教育は,児童生徒に関する正しく深い理解にもとづいて,その道が開けるものである。人間としての児童生徒の理解には,なにが必要か。これをどう理解すればよいかについて考察した。

 第3章では,教育内容の適切化を,人間形成のビジョン,児童生徒の実態,地域の実情等との関連においてとらえるとともに,教育評価が内容を適切にし,教育計画を確かなものにすることを強調した。

 第4章の教育方法論については,子どもを人間として高めるための行動理論ないしは動機づけ論としての基礎理論をとりあげ,人間的強化の論法とその実証例を示した。加えて,人間向上のための7つの指導原理を提示した。

 第5章においては,教育評価が,学力観にもとづく今日の教育の充実に大きな役割を担うことを強調し,人間形成の指針としての価値を指摘した。

 第6章では,魅力のある教師の条件を述べるとともに,人間教師の実像を有名人の心に残る教師に求めて描写した。

 第7章では,現代学校教育の10の課題を指摘し,これを人間教育の現代的見地からとらえ,打開策を探った。

 全体を通じ,社会的,情緒的なかかわりのなかで,子どもを人間的に高める教育を志向してまとめたものである。

 本書の特徴は,主として,以下の6点にあると思う。

 第1点は,本書が人間教育の視点に立ち,現代的立場から,人間とはなにかを問いつつ,人間形成の方向と内容と方法と評価を論じた点である。つまり,教育計画において,社会的人間形成を意図し,教育実践において,人間向上の内容と方策を講じ,人間としての変容を確認して,的確な実態を把握する必要性を明らかにしたことである。

 第2点として,本書は,各章に子どもと教師のあり方を示し,それに環境を加えた三味一体のものとして,人間教育論を主張している点である。

 第3点として,子どもを人間として育成する教師には,あまりにも人間的な教師であるべきことから,宮澤賢治,近藤益雄,サリバン,芦田恵之助,正木ひろしらの人間教師としての資質と魅力を明示したことである。

 第4点は,本書が,小・中学校,障害児教育諸学校の教育を主としながらも,その範囲は,幼稚園から高校,大学までにおよび,人間教育の対象を広範囲のものとした点にある。

 第5点に,本書は,人間教育における理論面と実際面の調和をはかり,子どもを育てる指導者に直接役立つものとした点である。

 第6点として,現代教育の当面する10課題をあげ,これらに対処するヒントを示したことである。

 本書に,ふれることによって,わが国のすべての教師はもちろん,全国大学・大学院の教育学専攻の学生諸君や家庭の保護者らが,それぞれの分野で,人間形成に寄与することができれば,私にとってこの上もない喜びである。率直なご批評とご指導を賜われば幸いである。

 終わりに,私の宿願をここにまとめることができたのは,まわりのかたがたの温かい励ましによるものであり,さらに,本書が円滑に進捗できたのは,明治図書編集部の立花正夫氏の周到なご配意と適切なご助言のたまものであり,謹んで厚くお礼を申しあげる次第である。


  平成9年3月7日   /一宮 俊一

    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ