- はじめに
- 1章 日記指導を成功に導く3つの柱
- 1 子どものありのままの姿を受けとめる
- 子どもの思いに共振する
- 子どもの思いに寄り添う
- 子どもの生活に目を向ける
- 2 正しく、豊かな文章表現力を培う
- ポイントを押さえ、継続的に行う
- 3 一人ひとりの日記を学級全員の共有財産にする
- 日記指導と学級通信を連動させる
- 2章 子どもの鉛筆が止まらない! 発達段階に応じた日記指導の実例30
- 1年
- 1 日記の素地となる話題づくりと伝え合う場づくり
- 日記指導は入学したその日から始まっている!
- 2 入門期の日記メニュー
- 「話す」ことから始めよう!
- 3 日記の題はズバリ「一番書きたいこと」
- 子どもの思いを素直に表現させよう!
- 4 行間や表現の背後に隠された子どもの思いを読み取る
- 子ども自身も気付いていない価値に目を向けさせよう!
- 5 見たこと、したこと、聞いたことを落とさず書かせる
- 五感でとらえて表現させよう!
- 6 1年間の日記帳を振り返らせる
- 日記を通して成長を自覚させよう!
- 2年
- 7 日記の題につながる具体的なヒントを与える
- 子どものアンテナを高く伸ばそう!
- 8 取組に変化をつけてマンネリ化を防ぐ
- 1週間続けて日記にチャレンジ!
- 9 日記指導の基礎としての視写活動
- 1日1ページずつ物語を視写させよう!
- 10 家族との会話を切り取って書かせる
- 家庭は日記の題材の宝庫!
- 11 日記を通してコミュニケーションを図る
- 書くことで自分の気持ちを見つめ直させよう!
- 12 日記指導と学級通信は車の両輪
- 子どものがんばる姿をどんどん取り上げよう!
- 3年
- 13 「とっておきの話」で日記指導を始める
- 学級通信第1号を大切にしよう!
- 14 会話文の取り立て指導を行う(1)
- 会話文だけで日記を書かせてみよう!
- 15 保護者懇談会で子どもの日記を話題に
- 家族との会話の大切さを保護者に実感してもらおう!
- 16 小見出しをつけ、文末を現在形で表現させる
- 発達段階に応じて表現レベルを上げよう!
- 17 比喩的な表現を活用して書かせる
- 子どもの上手な表現を生かそう!
- 4年
- 18 書き出しを工夫して書かせる
- 最初の一行で日記が変わる!
- 19 人やものの動きをとらえて書かせる
- 平板な文章から抜け出させよう!
- 20 日記を教科の学習と関連させる
- 「学習日記」を書かせよう!
- 21 保護者と連携して子どものやる気を引き出す
- 日記指導は保護者とのつながりも深める!
- 5年
- 22 日記を通して書き言葉で高学年生と対話する
- 子どもの気持ちを共感的に読み取ろう!
- 23 会話文の取り立て指導を行う(2)
- 会話文の後の表現を工夫させよう!
- 24 授業で得た知識を日記で意図的に活用させる
- 共通の課題を与えよう!
- 25 日記をクラスのシリアスな話題を考えるきっかけに
- 友だちのがんばりに目を向けさせよう!
- 26 子どもの日記はクラスの共有財産
- 年間を通して学級通信に取り上げよう!
- 6年
- 27 身近な生活の中から日記の題材を見つけさせる
- その子らしい感性で日常生活をとらえさせよう!
- 28 文末表現を意識して使い分けられるようにする
- 文章表現の違いに着目させよう!
- 29 日記を通して子どもの担任への不満や批判を受けとめる
- 子どもの本音をオープンにしよう!
- 30 体験、調べ学習で「特別版日記帳」を活用する
- 形にこだわらず自由に思いを表現させよう!
- おわりに
はじめに
毎日がんばって日記を書き続けている5年生の子が、ある日、次のような日記を書いてきました。
私は、このごろ日記を続けています。日記の種を見つけて、夜そのことを書きます。書いているときは、もう種じゃなくて花がさいています。自分の思ったことを全部書きます。今は、花がとてもきれいにさいています。そのうちに実がなります。実がなって、とてもうれている時に出します。そしたら私の作ったおいしい実を先生が新しい種に変えて私に返してくれます。私はその種をまいて、実がなりうれたのを先生にわたします。すると新しい種をくれます。いつも、このくり返しです。
日記を書いている瞬間を「今は、花がとてもきれいにさいています。」と表現しているところに、書くことの喜びや充実感を体いっぱいに感じ取っている気持ちが伝わってきます。この子は日記を続けることが大きな自信になり、書くことだけにとどまらず、学校生活の他の場面でも積極的な姿勢を見せるようになりました。
このように、日記指導を中心とした日常的・継続的な書く活動の実践は、子どもの自信や意欲につながることを長年の経験から実感してきました。
私は公立小学校教員として、22年間にわたり、1年生から6年生まで全学年の学級担任を経験しました。その間、学級づくりの核としたのが日記指導を中心にした「書く活動」でした。国語の時間だけでなく、日常的・継続的に書く機会をつくるために、担任したクラスでは、どの学年でも必ず日記を書くように指導していました。日記といっても大人のそれとは違い、担任に向けて書かせるものですから、子どもの日記には必ず一言添えて返しました。また、時宜を外さずに学級通信に掲載して、クラスのみんなで読み合い、学級づくりに生かすようにしました。
今、改めてそれらの日記を読み返してみると、そのたびに当時は気付かなかった新たな発見があります。同時に、子どもの思いや気持ちを十分に理解し、受けとめきれていなかった担任としての未熟な自分の姿も見えてきます。それだけ、子どもの書いた文章の背後には、深いものが隠されているのではないかと思います。
そして、何よりも強く感じさせられるのは、日記を通して子どもとコミュニケーションを深めたり、子どもの豊かな感性にふれたりすることができた経験が、教師としての喜びや支えであり、生きがいであったということです。
昨今の学校教育をめぐる状況は、いじめ、不登校、学級崩壊など難しい課題が山積し、教師という仕事がもつ複雑さ、困難さをより一層深刻なものにしています。それだけに、教育の原点ともいえる子ども理解のあり方が、これまでにも増して問われています。今、学校現場の教師に求められていることは、一人ひとりの子どもを内面から理解することができる力量と、子どものありのままの姿を受けとめられる度量ではないかと感じています。
本書は、私が学級づくりの核にしてきた日記指導の実践を振り返りながら、子どもの実生活に生きて働く書く力をどう培っていくかはもちろん、子ども理解のあり方や教師としての生き方について考え、まとめたものです。
1章では、日記指導を実践するに当たって土台となる考え方、基本的な指導のあり方についてふれています。2章では、発達段階に応じた日記指導の実例を全学年にわたって取り上げました。
本書が、日々子どもと真剣に向き合いながらがんばっている先生方や、教師をめざす学生のみなさんへのエールとなれば幸いです。
2013年1月 /竹田 文夫
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- 明治図書