- はじめに
- 序章 話し合い活動とセットで使う板書見ながら“算数作文”
- 1.「話す」と「書く」をセットで鍛える
- 2.1時間目は算数,2時間目の国語で算数授業を巻き起こす
- 3.書くことをつくるために,準備しようとする心が「かかわる」姿を生む
- T 数学的な見方・考え方の評価と板書見ながら“算数作文”
- 1.数学的な見方・考え方と子どもの言葉
- 2.数学的な見方・考え方の評価
- 3.「板書見ながら“算数作文”」の必要性
- 4.授業の実際 第4学年「式と計算」の場面
- 5.数学的な考え方と板書
- 6.板書見ながら“算数作文”による数学的な見方・考え方の評価の実際
- 7.「数学的な見方・考え方」を子どもの心に意味付かせるために
- コラム
- 国語の「書く」と算数の「書く」
- ワークシートで作文の抵抗を無くす!
- U 活用する力をはぐくむ授業改善の7つのポイントと板書見ながら“算数作文”の変容
- 1.子どもの「考えたい」「調べたい」を引き出す「問題提示7つ」の方法
- 2.算数的活動を再考する〜子どもの「問い」が生まれたとき算数的活動が始まる〜
- 3.活用する力=数学的な見方・考え方〜授業中に称賛したい子どもの言葉〜
- 4.学級集団を学び合う「学習集団に高める」魔法の7つの発問〜学び合いを創造する7つの発問〜
- 5.「説明活動」を充実させる方法(音声言語と文字言語)
- 6.「聞き取り・再生する活動」で理解力がアップする
- 7.授業のまとめの「時間がたりない」を解決する〜「キーワード解説文」「キーワード問題づくり」
- 8.授業が変われば子どもの書く力がここまで高まる
- コラム
- やる気まんまん!!
- どきどきわくわく算数作文
- V 板書見ながら“算数作文”の実践例
- @第3学年 「たし算とひき算」の場面
- A第3学年 「かけ算の筆算」の場面
- B第4学年 「角の大きさの導入」の場面
- C第4学年 「計算のきまり」の場面
- D第4学年 「わり算のきまり」の場面
- E第4学年 「わり算」の場面
- F第4学年 「わり算の筆算を考えよう」の場面
- G第4学年 「わり算を筆算で考えよう〜2けたわり算〜」の場面
- H第4学年 「ともなって変わる量」の場面
- I第4学年 「変わり方調べ」の場面
- J第4学年 「カレンダーのひみつ」の場面
- コラム
- 授業が変わった! 子どもも変わった!
- 算数板書作文スモールステップ
- W 国語教師が算数作文から発見したこと
- 1.国語側から見た算数作文の意義
- 2.算数作文ではぐくむことのできる国語の力
- 3.子どもが書いた算数作文の考察
- 4.算数作文から得られた国語側の改善点
- おわりに
はじめに
新学習指導要領が完全実施された。一つひとつの教室では,この新学習指導要領の意図に適した授業が展開されているだろうか。学習指導要領が改訂されるたびに思うことである。「表現する」ことが目標に入ったことは,約50年ぶりである。この「表現する」という能力の育成は,間違いなく,日本の算数科教育では急務だと感じる。なぜなら,思考と表現は一体であり,表現することにより思考力がよりよくはぐくまれ,思考力がはぐくまれれば表現力もまた豊かになるからである。私は算数科の本質を貫く「話し合い活動」を創造していくことが大切であると考えている。ただ,話し合い活動は,音声言語での「イメージの共有」と「やさしさへの共感」が主になる。
そこで,確かな理解につなげるために,「書く活動」を「話し合う活動」とセットで適切に取り入れていくことが重要である。
○自分の考えを言葉,式,図等で書く
○友だちの考えを書く(再生する)
○友だちの考えの続きを書く(予想する)
○友だちの考えのよいところを書く(発見する)
○友だちの考えを簡単にまとめて書く(要約する)
○ヒントを書く(補助する)
このように,「授業中」の「書く活動」も様々な方法が考えられる。
そして,この書く活動に重点を置き,授業内容の確かな定着を図る方法が「板書見ながら“算数作文”」である。
今回は,特に,数学的な見方・考え方に焦点を当て,「板書見ながら“算数作文”」に取り組んでみた。それは,私の今までの授業の反省から浮かび上がったことでもある。授業中,子どもの数学的な見方・考え方を全身全霊で称賛する。子どもの言葉を,しぐさを,問い方を称賛する。黒板にも,子どもの言葉で,赤チョークを使って価値付け,記録する。しかし,「板書見ながら“算数作文”」を書かせると,その数学的な見方・考え方が記録されていない場合があった。授業の流れは再現されている。わかったことや友だちの考えも再現されている。自分の心の動きも素直に表現されている。しかし,一番大切な,そして,教師が一番伝えたかった「数学的な見方・考え方」が記録されていないのである。
この課題を解決するために,この本に取り組んだ。
つまりは,子どもの数学的な見方・考え方をはぐくみ,そして,それらが,確かに子どものなかに意味付いたのかどうかを「板書見ながら“算数作文”」で評価しようという試みである。
この趣旨に賛同してくれた私の仲間たちにも,実践例の執筆をしていただいた。素晴らしい仲間が集まった。休日は,自ら研究会に参加し,自分の授業力を鍛えている仲間である。常に「子どもが真ん中」で,子どもの心に寄り添える仲間である。福島県を中心に,宮城,山形の仲間も集まった。
「うれしい」こんなに一生懸命な仲間が私の回りにはたくさんいる。
原発問題で,まだまだ先行き不透明な福島県であるが,子どもの教育のために骨身を削り,算数の授業を考える仲間がいる。
この本を創る過程で,常に,次の3つのことが頭の中にあった。
@明日の算数の授業で子どもの笑顔が見たい。
Aせめて,算数の時間は,何もかも忘れ,数理追究に没頭してほしい。
Bわからなかったら,困ったら,隣を見てごらん。教室を見てごらん。そこには,いつもあなたを助けてくれる友だちが先生がいるよ。
数学的な見方・考え方の評価をしようとする試みは,一人ひとりの子どもをより深く理解しようとする試みである。
あの子の今に心を置き,あの子の未来に夢と希望を描く試みである。
/小松 信哉
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- 明治図書