- まえがき
- T章 文部科学省通知が示した自閉症教育の方向
- 1 「発達障害のある児童生徒等への支援いついて(通知)」の内容と意義
- 2 学校教育法施行規則等の改正による通級による指導の拡大
- U章 自閉症教育の今後の課題と対応
- 1 局長通知とこれまでの自閉症教育
- 2 義務制実施直後に出された調査結果の分析と具体的な対応の考察
- 3 個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成
- 4 特別支援学校における自閉症児の指導の充実
- 5 特別支援学級における自閉症児の指導の充実
- 6 巡回による指導,スーパーバイザーの導入
- V章 養護学校における指導の要件とモデル事例
- §1 知的障害養護学校小学部における自閉症児の指導
- [1] 今後の対応への指針
- 1 アセスメント(発達の状況・状態像等の理解,把握),指導計画の作成
- 2 教育環境の整備(教室などの場,時間,手順など)
- 3 集団の工夫
- [2] 実践/知的障害養護学校小学部におけるモデル事例
- 1 1年生の学習指導の手だてとは /宮城教育大学附属養護学校
- (1) 学校の概要と自閉症児の在籍状況
- (2) 自閉症教育の基本的な考え方
- (3) 指導の実際
- 2 持てる力を発揮し,生き生きと活動してほしい… 〜自閉症の障害特性を踏まえた教育〜 /東京都立中野養護学校
- (1) 学校の概要と自閉症児の在籍状況
- (2) 自閉症教育の基本的な考え方
- (3) 指導の実際
- (4) 最後に
- 3 チーム支援による学校生活づくり /長野県長野養護学校
- (1) 学校の概要と自閉症児の在籍状況
- (2) 自閉症教育の基本的な考え方
- (3) 指導の実際
- 4 子どものWANTSをはぐくむために /香川大学教育学部附属養護学校
- (1) はじめに
- (2) 本校の研究について
- (3) 自閉症教育の基本的な考え方
- (4) WANTSを引き出すことで,コミュニケーション力をはぐくむ実践事例 ―給食場面にVOCAを使って確かな要求表現にー
- 5 コーディネーターも一緒に! /高知県高知市立養護学校
- (1) 学校の概要と自閉症児の在籍状況
- (2) 自閉症教育の基本的な考え方
- (3) 指導の実際
- 6 ものや人とのかかわりを広げる指導 /筑波大学附属久里浜養護学校
- (1) 学校の概要と自閉症児の在籍状況
- (2) 自閉症教育の基本的な考え方
- (3) 指導の実際
- §2 知的障害養護学校中学部における自閉症児の指導
- [1] 今後の対応への指針
- 1 コミュニケーションスキルの獲得
- 2 集団の工夫(人間関係を大切にした編成)
- 3 家庭や地域資源の教材化
- 4 保護者・関係機関との連携
- [2] 実践/知的障害養護学校中学部におけるモデル事例
- 1 こころの声を,ことばにだそうよ! /埼玉県立大宮北養護学校
- (1) 学校の概要と自閉症児の在籍状況
- (2) 本校の個別の指導計画及び学部及び学級の取り組みの基本姿勢
- (3) 指導の実際
- 2 A君が安定した学校生活を送るために 〜保護者・周囲との連携の中で〜 /石川県立明和養護学校
- (1) A君の実態
- (2) 視覚的な支援による言語指導
- (3) A君に受け入れられるように(課題への取り組み)
- (4) スクールバスの再開
- (5) 取り組みを振り返って
- 3 家庭・地域を巻き込むサテライト学習 /京都市立西総合養護学校
- (1) 地域のニーズを探るアンケートの実施
- (2) 保護者のニーズを聞く地域資源の利用調査の実施
- (3) 実践事例―ハンバーガーショップの利用―
- (4) まとめ
- 4 主体的に生き生き取り組む花作り /兵庫県立姫路養護学校
- (1) 学校の概要と自閉的傾向児の在籍状況
- (2) 本校の自閉症児への対応について
- (3) 中学部の教育について
- (4) 中学部の作業学習について
- (5) 個別の教育支援計画について
- (6) 指導の実際(A君の事例)
- §3 知的障害養護学校高等部における自閉症児の指導
- [1] 今後の対応への指針
- 1 作業学習
- 2 現場実習
- 3 進路指導(保護者,関係機関との連携)
- 4 余暇活動
- 5 社会性(マナー)の学習
- [2] 実践/知的障害養護学校高等部におけるモデル事例
- 1 固執性の強い自閉症生徒の指導事例 /山形県立上山高等養護学校
- (1) 学校の概要と自閉症生徒の在籍状況
- (2) 自閉症教育の基本的な考え方
- (3) 指導の実際
- 2 将来を見据えた自力通学支援 /千葉県立我孫子養護学校
- (1) 学校の概要と自閉症生徒の在籍状況
- (2) 自閉症教育の基本的な考え方
- (3) 自力通学に向けた取り組み
- (4) まとめ
- 3 「暮らす・働く・楽しむ」力の育成を目指した生徒Aの指導事例 /宮崎県立宮崎養護学校
- (1) 学校の概要と自閉症生徒の在籍状況
- (2) 自閉症教育の基本的な考え方
- (3) 生徒Aの指導の実際
- §4 都道府県教育委員会の対応
- (1) 「自閉症の児童・生徒のための教育課程の編成について」のポイント
- (2) 「自閉症の児童・生徒のための教育課程の編成について」の活用
まえがき
自閉症の幼児児童生徒に対する教育は,昭和54年4月に養護学校教育の義務制が実施された前後から注目を集めるようになったのである。それは,昭和55・56年度にわたって,当時の全国精神薄弱養護学校長会(現在の全国知的障害養護学校長会)が,自閉症もしくはその疑いのある児童生徒の実態を調査し,公表したことからもうかがえる。
自閉症の児童に対する教育は,昭和44年4月,東京都杉並区堀之内小学校に情緒障害学級が設置され,通級による指導が始められたのが,最初である。養護学校教育の義務制が実施されるまでの間は,養護学校,特殊学級等の一部の関係者,全国情緒障害教育研究会など,限られたところで,自閉症についての実践研究が行われていたのである。
知的障害養護学校・特殊学級,情緒障害学級等において,自閉症の児童生徒に対する指導は,今日まで続けてられてきており,一定の成果はあげてきている。例えば,文部省の実験学校・教育課程研究指導校において,情緒障害(自閉症を含む。)の児童生徒に対する教育内容・方法についての実践研究が継続して行われてきたが,その結果が全国的に普及し,一般化するところまでは至らなかったことも事実である。
平成17年4月1日,「発達障害のある児童生徒等への支援について」という文部科学省の局長通知が,各都道府県教育委員会に出された。
その中で,「(2) 盲・聾・養護学校,小学校等の特殊学級及び通級による指導においては,自閉症の幼児児童生徒に対する適切な指導を推進すること。
その際には,「個別の指導計画」及び「個別の教育支援計画」の作成を進めること。」と示している。
前述のように,養護学校,特殊学級,通級指導教室等において,自閉症の児童生徒に対する指導は行われてきたが,“より適切な指導の推進を図ること”が求められている。
そして,平成18年4月から学校教育法施行規則の一部が改正され,通級による指導において,自閉症者が,情緒障害者から独立したのである。関係者の長年の懸案であり,夢であったことが実現し,平成18年,2006年はまさしく“自閉症教育元年”として特筆すべきである。
このような流れの中で,本書は,編集され,養護学校編として,まとめられたのである。
本書の構成は,T章,文部科学省通知が示した自閉症教育の方向,U章 自閉症教育の今後の課題と対応,V章 養護学校における指導の要件とモデル事例である。事例として知的障害養護学校を中心にまとめたが,今後病弱養護学校等他の校種における自閉症の児童生徒への指導についての情報を収集,整理する必要を感じている。また,幼稚部における情報を収集し,提供する必要性も考えている。
本書の編集に当たり,ご多用の中原稿をご執筆いただいた先生方には,心から謝意を表する次第である。また,本書の企画,編集等に直接たずさわられた明治図書出版編集部の安藤征宏氏には,たいへんお世話になり,改めて謝意を表す次第である。
平成18年11月 編著 /大南 英明
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- 明治図書