- はじめに
- 第1章 上原式ゆび計算
- 1 ゆび計算とゆび体操
- 2 ゆび体操
- (1)ゆび体操と日付,助数詞
- (2)ゆび体操
- @1〜5
- A6〜10
- B10〜1
- C11〜20
- D5とび
- 3 上原式ゆび計算
- (1)たし算
- @5までのたし算
- A10までのたし算
- B20までのたし算(くりあがりあり)
- C2桁以上のたし算(くりあがりなし)
- D2桁以上のたし算(くりあがりあり)
- (2)ひき算
- @5までのひき算
- A10までのひき算
- B2桁のひき算(くりさがりなし)
- Cくりさがりのあるひき算
- D2桁以上のひき算(くりさがりあり)
- 第2章 マルチ算数プリント
- 1 マルチ算数プリントとは
- 2 さいころ計算とは
- 3 計算編
- (1)たし算
- @さいころ/ドットたし算
- TEA TIME@ 生活の中で数に親しもう
- ★マルチ算数プリントを使って〈ドットたし算〉
- Aさいころたし算/5までのたし算
- Bさいころたし算/10までのたし算
- TEA TIMEA 電卓を使うこと
- Cさいころたし算(くりあがりあり)
- TEA TIMEB 習った計算を忘れないために
- Dさいころたし算/筆算
- (2)ひき算
- @さいころ/ドットひき算―どっちが多い?
- Aさいころひき算/5までのひき算
- Bさいころひき算/10までのひき算
- TEA TIMEC ひき算を意識させるために
- Cひき算(くりさがりあり)
- Dさいころひき算/筆算
- (3)かけ算
- @さいころかけ算/かけ算九九
- Aさいころかけ算/2桁×1桁の筆算
- Bさいころかけ算/格子乗法
- TEA TIMED 子どもにあった計算方法で
- (4)わり算
- @穴あきかけ算
- TEA TIMEE わり算の導入段階に
- Aわり算
- TEA TIMEF 具体物のわり算 おすすめ教材
- Bわり算の筆算
- TEA TIMEG わり算と簡単わり算
- C簡単わり算
- 4 枠編
- (1)数の学習
- @いくつあるかな?
- Aシール貼り
- B穴あき数字
- (2)数字の学習
- @1〜10
- TEA TIMEH 数字を書く
- A10〜1
- B1〜20(30)
- TEA TIMEI 30までの数字を書く
- C10とび
- TEA TIMEJ 10とびの数字を書く
- D5とび
- TEA TIMEK 5とびの手遊び
- E1〜120
- TEA TIMEL 継続して徐々に増やしていく
- F宝探しゲーム
- Gめざせ1000 ―1〜1000―
- (3)筆算
- (4)マルチ算数プリント/マス計算
- (5)文章題
- (6)図形
- @まねっこ図形/○△□
- Aまねっこ図形/○△□と基本の色
- B模様作り
- 第3章 時計の学習
- (1)時計プリント&マス計算
- @ちょうどの時刻
- A5分ごと
- TEA TIMEM 時計プリントと数字の学習
- B1分ごと
- TEA TIMEN 時計と温度計,長さ・重さ
- C時刻と時間1(〜後,〜前)
- D時刻と時間2(くりあがり,くりさがり)
- (2)マルチ算数プリントでの時計の復習
- @ちょうどの時刻
- A30分ごとの時刻
- B15分ごとの時刻
- C5分ごとの時刻
- D1分ごとの時刻
- 第4章 授業編
- (1)段階表
- (2)授業事例
- @数字段階
- Aたし算段階
- Bひき算段階
- Cくりあがりありのたし算段階
- Dくりさがりありのひき算段階
- Eかけ算・わり算段階
- 〔付録〕
- マルチ算数プリント @〜H
- 時計プリント @〜C
- マス計算 @〜A
はじめに
本書では,「上原式ゆび計算」を使いながら,「マルチ算数プリント」で学習していく方法を紹介していきます。
〈上原式ゆび計算〉
通常の学級では,計算をするときに指を使わないという指導が一般的ですが,タイルでの操作はできるけれど,どうしても頭での操作への移行が難しい子どもがいます。「計算するときに,指は使うべきでない」ということにこだわるより,使えるものは使って,できることを増やしていくことのほうが子どもにとってよいのではないかと考えています。きっと昔の人たちも指を使って計算を始めたのではないでしょうか? 指は身近な計算グッズです。
問題は指の使い方です。普通の指の出し方では,3+3の計算で右手で3,左手で3と出してしまうため,答えも数えて出さなくてはいけなくなり,時間がかかってしまいます。また,10までしか指で表せないため,10以上だと指がたらなくなってしまうのです。1年生の算数の授業で,くりあがりの計算になると靴下を脱いで足の指も使って計算している子どもがいました。これでは,時間もかかり,10以上の計算がたいへんです。
そこで,20年ほど前に,通勤途中のバスの中で考えついたのが,「上原式ゆび計算」(以下,ゆび計算)です。これは,手遊び感覚で20までの加減ができます。20までのたし算,ひき算ができれば,あとは筆算を使えば,何桁になっても計算ができるようになります。また,繰り返しゆび計算をしているうちに,暗算でできることが増えてきて指を使わなくてもできるようになります。なぜなら,ゆび計算は,5本の指のうち2本を立てていたら残りは3本,10本の指のうち,6本を立てていたら残りは4本というように,5の合成分解や10の合成分解などが目で見てわかるからです。見てわかるということは子どもの理解を助けます。計算が苦手な子どもやLDの子どもたちにお薦めの方法です。
〈マルチ算数プリント〉
45分の授業の中で,日付,名前,四則計算,数順,時計,電卓……といろいろな要素を含んだ学習を1枚のプリントで行えるのが,この「マルチ算数プリント」です。
特別支援学級の子どもの中には,新しいことに抵抗を感じたり,苦手意識をもつ子も少なくありません。そのような子どもたちには,できるだけ「見たことがある」「やったことがある」状況を作り,安心して取り組めるようにすることが必要になります。また,たし算ができるようになった子どもにひき算を指導し始めると,たし算を忘れてしまうこともあります。このような子どもたちには,学習したことが定着していくよう,繰り返し復習をしていく必要があります。
この「マルチ算数プリント」は,1枚の中でいろいろな学習を行うことができるので,「いつものプリント」でありながら内容を少しずつ変化させていくことができます。また,たし算,ひき算,かけ算,わり算と記号を変えるだけでいろいろな計算問題を取り混ぜて指導することができるので,復習もしながら新しい学習に取り組めます。
また,「マルチ算数プリント」には,問題が書き込まれていません。子どもによっては,計算問題がたくさん印刷されたプリントを見ると,それだけでやる気がなくなってしまう子どももいます。そういう子どもたちには,さいころを使って,自分で問題を作らせます。「さいころ計算」です。さいころをころがすという操作が入ることや自分で作った問題ということで,ゲーム感覚で問題を作り,解いていくことができます。
特別支援学級では,1人の教師が段階の違う複数の子どもたちの指導をすることが多くあります。そんなとき,四角の枠に数字を入れるだけで,子どもに応じたプリントをさっと作ることができるのも「マルチ算数プリント」のよさです。
答え合わせは,電卓の使い方を教えて,電卓で行います。電卓が使えることは生活の中でも使用頻度が高く必要な技術になってきます。
子どもたちが,「マルチ算数プリント」を印刷して入れてある引き出しから,「算数やる」といって自分でプリントをもってくるようになりました。1年生から6年生までこのプリントで学習し,数字の学習段階から始め,わり算までレベルアップしていった子どもたちもいます。さいころをころがして問題を作るのがうれしく,友だちや教師と楽しみながらさいころを使った計算に取り組む子どもたちもいました。また,ゆび計算で自分で答えが出せて,うれしそうな子どもの笑顔も見られました。
〈時計プリント〉
「時計プリント」も「マルチ算数プリント」と同様に,同じ形式のプリントでレベルアップしていきます。ちょうどの時間から始め,5分ごと,1分ごと,時間と時刻の学習ができるようにしています。プリントの裏には,マス計算を印刷しておきます。裏返せば,すぐに次の学習ができるようにしておくことで,学習の流れがとぎれることなく取り組めます。「時計プリント」で学んだことを「マルチ算数プリント」の時計欄で復習します。
私が担当した子どもたちの指導の中から生まれた小さな実践ですが,みなさんが関わっていらっしゃる子どもたちの指導の一助になれば,幸いです。
2011年10月 /上原 淑枝
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- 明治図書
- ほかに類書をみたことがなく、ゆび計算について整理された内容のものを探しておりました。ゆびを使ってなんとか数の勉強に取り組める子も多く我流でも合っていれば良しとしていましたが、教える側の勉強になりました。上原式以外のゆびを使っての数の勉強について取り上げた文献などありましたらご紹介いただけると有難いです。巻末のプリントも活躍しそうです。2015/9/550代・小学校勤務