- まえがき
- 第1章 中・高等学校の英語教育との違いは何か?
- 1 新企画に対する教員の対応力
- 2 英語学習の7つの目的
- 3 児童期における言語教育の重要性
- 4 小学校の英会話学習に期待されること
- 1 「実用性の重視」ということ/ 2 「外国文化への慣れ」ということ/ 3 「日本文化の再発見」ということ
- 5 中・高等学校の英語教育との違いは何か?
- 1 「体験目標主義」による指導/ 2 「遊び主義」による指導
- 6 小・中学校の「学習指導要領」における英語の位置づけ
- 7 英会話学習の教室を面白くするもの
- 第2章 児童の英語コミュニケーション能力を育てるもの
- 1 英語コミュニケーション能力とは何か?
- 1 英語コミュニケーション能力の意味/ 2 表現の能力,理解の能力との違い
- 2 英語コミュニケーション能力を高める指導
- 1 英語の文が生きるとき,死ぬとき/ 2 英語コミュニケーションの場面と工夫
- 3 アンケート結果に見る子ども達の思い
- 4 英語コミュニケーション能力を育てる指導者の心得
- 5 英語コミュニケーション能力を育てる指導原則
- 1 英語をシャワーのように浴びさせる/ 2 英語を気軽に,たくさん話させる/ 3 質を大切にする練習と,量を大切にする練習を区別する/ 4 コミュニケーション活動に絵や写真,実物を多く取り入れる/ 5 児童と児童が対話する場面を多くもつ/ 6 ペア学習やグループ学習を取り入れる/ 7 教師の肯定的評価を多くする/ 8 機器を使って自己評価する場面をつくる
- 第3章 “プリーズ・イヤフォン”に学ぶ英会話学習の環境づくり
- 1 英語教育をめぐる最近の動向
- 2 “プリーズ・イヤフォン”の何がいいのか?悪いのか?
- 3 英語コミュニケーション能力を育てるもの
- 1 英語コミュニケーション能力が求めること/ 2 英語コミュニケーション能力を育てる3要件
- 4 言語学習の環境づくり「3つの視点」
- 5 人的環境としての教師と子ども
- 1 小学校英会話の指導者の発掘/ 2 小学校英会話の指導ポイント/ 3 共同学習者としての子ども
- 6 英語がいっぱいの教室環境のつくり方
- 第4章 「英語って楽しい!」と言わせる英会話カリキュラムづくり
- 1 カリキュラムづくり,最初の一歩
- 2 「明るい,楽しい,やさしい」の意味
- 3 「英語活動」を核にした計画づくり
- 4 「英語遊び」がねらっていること
- 5 小学校英会話のカリキュラム構成の基本
- 1 「遊ぶ」「歌う」「会話する」の3基本活動/ 2 「3時間+ゆとりの1時間」によるユニット構成/ 3 「3セクション」による1時間構成
- 6 小学校英会話・35週の主題
- 第5章 英会話ティーム・ティーチングの組み方・生かし方
- 1 英会話のティーム・ティーチングは必要なのか?
- 2 英会話ティーム・ティーチングの3役割
- 1 英語のモデルを提示すること/ 2 英語コミュニケーションや英語遊びの相手を演じること/ 3 個別指導と個別支援をすること
- 3 英会話ティーム・ティーチングの組み方
- 1 共同型ティーム・ティーチング/ 2 補助型ティーム・ティーチング/ 3 分担型ティーム・ティーチング
- 4 日本人教師と外国人講師の生かし方
- 5 英会話ティーム・ティーチングにおけるPDS
- 第6章 1時間の「英語活動づくり」の前に考えておくこと
- 1 ごくプリミティブな授業成立の課題
- 2 一般的な「授業づくり」の心得
- 1 指導目標が明確であること/ 2 面白い学習材が選択されていること/ 3 教師の説明や問いかけに納得があること/ 4 指示や発問が明確であること/ 5 発言や発表のKR伝達が適切であること/ 6 板書がていねいでカラフルであること/ 7 学習展開が多様であること/ 8 学習規律を指導すること/ 9 学習過程に「遊び」があること/ 10 子どもとの間に温かい人間関係があること
- 3 英語学習の指導理論から学ぶこと
- 1 「出会いから15分」が英語活動の分かれ目/ 2 絵,実物などで「視覚効果」を生かす/ 3 「実用的な単語」を使う/ 4 「意味のある英文」を使う/ 5 聞く子どもでなく,「発話する子ども」をめざす/ 6 「間違えながら学習」させる/ 7 知識・技能より「態度」を育てる
- 第7章 「英語遊び」を核にした英語活動づくりの考え方
- 1 小学校英会話学習の位置づけ
- 2 小学校英会話学習の方法論的な課題
- 3 アクティブな「英語遊び」のプラン
- 1 「英語ゲーム」を利用した英語活動/ 2 「英語の歌」を取り入れた英語活動
- 4 「英語遊び」を左右する学習材の選択
- 5 「英語遊び」のカリキュラム構成
- 6 間違いに大らかな言語指導
- 第8章 コミュニケーション能力が高まる「英語遊び」の実際
- 1 「遊び」の条件と「英語遊び」の条件
- 2 ゲーム感覚で楽しむ「英語ソング」
- 3 体を使って楽しむ「英語遊び」
- 1 「英語のナンバーコール」/ 2 「フルーツ・バスケット」/ 3 「神経衰弱遊び」
- 4 数,色,動物の「英語面白ゲーム」
- 1 「数字の線むすびゲーム」/ 2 「風船の色ぬり遊び」/ 3 「シッポで見ーつけたゲーム」
- 5 なぞなぞ風,「英語面白トーク」
- 6 自分の宝物を説明する「Show & Tell」
- 7 英語で演じる「エプロンシアター」
- 8 笑いオチのある「英語スキット」
- 9 英語で対話する「お店屋さんごっこ」
- 10 英語コミュニケーションに使える「英語面白クイズ」
- 11 英語看板や標識の「解説クイズ」
- 12 児童に読み聞かせる「英語のお話」
- 第9章 「英語遊び」におけるパズル・クイズの効用
- 1 「遊び」の条件と「英語遊び」の条件
- 2 パズル・クイズの教育的意味
- 1 「遊び」のオアシス機能/ 2 「遊び」の動機づけ機能/ 3 「遊び」の知識獲得機能
- 3 小学校英会話学習の視野と枠組み
- 1 「関心・意欲・態度」としての学力/ 2 「知識・理解」としての学力/ 3 「スキル(技能)」としての学力
- 4 パズル・クイズによって向上するもの
- 5 パズル・クイズの守備範囲と限界
- 第10章 「話せる英語」への近道,回り道
- 1 中学校英語の全否定で「話せる英語」が果たせるか?
- 2 児童がしたいことをさせれば,事足りるのか?
- 1 英会話学習でしたいこと,したくないこと/ 2 「話せる英語」に避けられないこと
- 3 2人の大学生の英会話力が逆転したとき
- 1 初歩的な英語コミュニケーション能力/ 2 学習が進んだ段階の英語コミュニケーション能力
- 4 「いろはカルタ式」の覚え方の効用
- 1 最近の学習指導理論の落とし穴/ 2 英会話を詠みこんだ「英語カルタ」
- 第11章 英会話学習における「国際理解」の考え方・進め方
- 1 小学校の英会話学習と「国際理解」
- 2 「異文化を豊かに浴びる」という視点
- 3 「自文化を理解する」という視点
- 4 「国際理解」に対する「国際表現」という視点
- 5 「国際理解」の実践に,何を学ぶか?
- 1 千葉県成田市立成田小学校の「みんなで遊ぼう!」/ 2 大分県大分市立荷揚町小学校の「ハロウィンパーティー」/ 3 石川県金沢市立森本小学校の「ABCふれあい集会」/ 4 島根県松江市立城北小学校の「ダンス ダンス ダンス」
- 第12章 児童の英会話学習を支援する「評価」の方法
- 1 誤解されやすい「評価」の意味
- 1 「診断機能」としての評価/ 2 「動機づけ機能」としての評価
- 2 授業のPDSにおける「評価」の視点
- 3 ALTに学ぶ「評価の原則」
- 4 「内発的動機づけ」という考え方
- 5 「よいところを見つける」の意味
- 6 英会話学習における「相互評価」の役割
- あとがき
まえがき
どんな理由があるにしても,中・高等学校で6年間も英語を勉強していて,海外で買い物をしたり食事を注文したりする英語が話せないというのは,やはり,間違っているのだろう。
小学校で英会話学習を始めようという動きは,国際化社会といわれる今日,ごく当然のなりゆきである。
また,日常生活にこれだけ多くの外国語が氾濫し,名実ともに国際化が進んでくると,中学生になるまで外国語の学習をさせないで放置しておくわけにはいかない。
この意味において,時間をかけて論議されてきた小学校英会話が導入されることになったのは,長年,英語教育にたずさわった者としてうれしいことである。
一方,諸外国に目をやると,多くの国では早期の外国語教育に力を入れている。
たとえば,アジアの優等生と言われるシンガポールでは,小学校教育課程の約80%が英語,母語,数学にあてられている。
隣の韓国では,1995年施行の第6次教育課程において,日本の小学校にあたる国民学校で,英語,漢字,コンピュータ教育の活性化が教育改革の柱になっている。
言葉の学習は,他の学習の基礎となるばかりでなく,考える力やコミュニケーションの能力を育てる。
日本では,国語や外国語を含めて,児童期にもっと言語教育に時間をかけるべきである。
しかし,これから始まる小学校の英会話学習が,いままでに行われてきた英語教育をトレースするだけなら意味がない。
小学校で行われる英会話学習は,常に「実用性」と「コミュニケーションの態度」を念頭におきたいのである。
そして,英語でコミュニケーションをすることに対して,児童も教師も,もっと大らかで積極的になりたい。
かつて,日本の元首相が,海外演説の冒頭に“プリーズ・イヤフォン”と言って,物議をかもしたことがあった。
氏は,参加者に,テーブル上に置いてあるイヤフォンを耳につけるよう促したのである。
後に,これが外国語の専門家(?)の間で,あれこれ話題になるのであるが,とっさのサービス精神で,ためらいなく英語で話しかけたことが何より高く評価されるべきである。
それを,もとは英語の先生であるのに発音がいま一つであるとか,“プリーズ・イヤフォン”ではなく“イヤフォン・プリーズ”であれば正しかったのになどと面白がっているから,自分の番がくると英語を話したくなくなるのである。
日本人が,これまで英語を話すことに積極的でなかったのは,こうした「揚げ足とりの体質」が,ほかならぬ日本人同士のなかにあったからである。
また,外国語教育を推進する研究者のなかにもあったからである。
これから導入される小学校の英会話学習では,私達日本人がもってきた,この悪しき体質を追放することから始めなければならない。
そして,小学校英会話を成功させるためには,これまでの中・高等学校の英語教育に目をそむけることなく,その長所や短所を明らかにしながら,新たな指導法を考える必要がある。
それらを,全面的に否定したり,全面的に肯定したりしてはならないのである。
児童が,教室で行われる英会話学習を面白く感じるためには,いくつかの条件がある。
たとえば,
1 指導者の明るい人柄,キャラクター
2 歌,ゲームなどの面白い英語遊び
3 絵,写真,小道具を使った英語活動
4 面白く,役に立つ英語の使用
5 英語知識の定着の認知
6 英語コミュニケーション能力の向上の認知
7 指導者や周囲の人達からの認められ感
などは,小学校においても中・高等学校においても,大切にされなければならない英語学習の条件である。
小学校英会話では,これまでに行われてきたわが国の英語教育を振り返り,また,諸外国の例を参考にしつつ,よりよい早期英語教育の在り方を探りたい。
そのために,まず「英語遊び」をとおして,英語に親しみ,英語の音にふれることを目的とした,「明るい」「楽しい」「やさしい」がいっぱいの英語活動を展開したい。
本書では,児童の体験的実践的な英語活動としての小学校英会話学習の基本的考え方と授業プランについて述べた。
多くのご意見やご批判をいただき,小学校の英会話学習の発展に少しでも寄与することになれば幸いである。
本書の刊行にあたっては,明治図書出版の江部満氏に,企画から編集の細部にわたり的確なご助言と温かい励ましをいただいた。あらためて,ここに感謝申し上げたい。
2001年4月 /長瀬 荘一
-
明治図書















