- はじめに
- 用語解説
- 1章 コロロメソッドと療育
- 1 コロロメソッドとは?
- 2 教室での療育
- 3 成人施設・海外での療育
- (1) コロロ学舎(成人施設・瑞学園)
- (2) Hさんのケース
- (3) マレーシアのコロロメソッド
- 2章 家庭でできる療育
- 1 家庭で療育する
- (1) 家庭療育の記録
- (2) 家庭療育で気をつけること
- 2 始めよう! コロロメソッド
- (1) 日々の家庭生活
- (2) 歩行トレーニング
- (3) 行動トレーニング
- Let’s行動トレーニング
- 正座/ 立位/ 腕立て/ スクワット/ 踏み台昇降/ 腹筋/ 台所でトレーニング
- (4) 作業
- Let’s作業学
- リング・ビーズ通し/ 洗濯バサミ留め/ いろいろな手の動き
- (5) 初期学習
- 3 家庭療育Q&A
- 問題行動について
- 小学校1年生男児の母親から
- 常同行動について
- 小学校4年生男児の母親から
- パニックについて
- 6歳女児の母親から
- 日常生活について
- 小学校3年生男児の母親から
- 特別支援学校高等部1年生男子生徒の母親から
- 中学校2年生女子生徒の母親から
- 学習について
- 小学校1年生男児の父親から
- 通学について
- 中学校1年生男子生徒の母親から
- 3章 くらしの力を育てる療育
- 1 自閉症児の生活習慣
- (1) 排泄
- (2) 入浴
- (3) 歯みがき
- 2 自閉症児の食行動
- (1) 自閉症児と肥満
- (2) 摂食行動ケーススタディ
- (3) 偏食指導
- 3 こんなときどうする?
- (1) 病院・健康診断
- (2) 公共の乗り物
- (3) 買い物
- (4) 散髪・理容室
- (5) 学校行事―入学式・卒業式
- (6) 旅行・宿泊
- おわりに
はじめに
ある場面でできた一つのよい行動が,いつでもどこでも誰とでも再現できるようになることを汎化(般化)と言います。
多動で聞き分けがないためになかなか指導の効果が上がらなかった子どもが,コロロ発達療育センター(以下,コロロ)の玄関を入ってしばらくすると,集団の流れに沿いすんなりスタッフの指示に従って行動しているのを見て,たいがいの人は驚きます。
このときの行動が,ただちに家庭や学校で同じようにできるわけではありませんが,その子がこのような適応能力を持っていることが証明されたわけです。私たちは数多くの実践の中から,障害を持つ多くの子どもたちが,その置かれた生活環境や社会的条件下で,ごく普通に生活することができるようになるという,しっかりとした手応えをつかみました。ここを出発点として,汎化へのプログラムを家庭や学校で実践していただくようにするのが,私たちコロロの役割であると自負しています。
コロロでの指導は,通常週1回2時間です(毎日通室のフリースクールなどのコースもあります)。1週間は168時間ですから,168分の2ということになります。このわずか2時間で,スタッフは何を,どのように教えたらできるようになるかを実証します。まだ能力的に無理だということも,実際にやってみて確かめます。そのことを親に説明し,家庭ではできにくいいろいろな事情があることを考慮した上で,プログラムを作成するのが168分の2の仕事です。そして,そのプログラムを実行するのは家族です。ですから,成果が上がるか上がらないかは,家族の努力にかかっています。家族のがんばりで,コロロと家庭の両方でできるようになったよい行動が,学校やそれ以外のところでもできるようになることが,汎化の次の目標です。
学校への不満を口にする親は少なくありませんが,学校は訓練(治療教育)の場ではなく,ごく普通の一般社会です。学校は,家庭での訓練の成果が外で発揮できるようになったかどうかを見る,「テストの場」と考えてみてはいかがでしょう。実際に多くの親は,このテストに子どもを合格させているのです。
ここで紹介するのはコロロの療育のほんの一部ではありますが,汎化が可能であること,可能になる具体的なよい方法があることを,自閉症児者の療育にたずさわる一人でも多くの方々に知っていただき,お役に立てていただければ幸いです。
/コロロ発達療育センター
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