向山型算数教え方教室 2006年3月号
算数学力を保証する“年間システムづくり”

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向山型算数教え方教室 2006年3月号算数学力を保証する“年間システムづくり”

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2006年2月7日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 算数学力を保証する“年間システムづくり”
ワールド・ワイド・ウェブ型システムが力をつける
大森 修
全体の枠組みを明確にし、選択のコードを用意する
吉永 順一
向山型算数を校内に広げる
吉川 廣二
きれいなノートをとる能力を身につけるには、様々なシステムが必要である
松崎 力
向山型算数を行うために、教材採択で評価基準の話を
小野 隆行
教科書チェックの時間設定が最重要である
西田 裕之
『グレーゾーン対応の算数ワーク』早期の刊行を熱望する!
丸亀 貴彦
ミニ特集 「TOSS教材の優秀さ」をシェアする感動ストーリー
養護学級で生まれた百玉そろばんのドラマ
神谷 祐子
計算スキルの小さな成功体験が自信を生んだ!
水野 彰子
TOSSノートスキルできれいなノートを体感し、TOSSノートで実践する
末廣 真弓
子どもに自信を与える九九計算尺セット
大野 智美
百玉そろばんを空書きしたAちゃん
坂田 幸義
研究授業で子どもの事実を見せて証明した
平瀬 公士
グラビア
中学からの報告「TOSSかけ算九九計算尺セット」はやはりすごかった!
村田 斎
若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
2つの授業の違い
小倉 郁美
向山型算数キーワード
間違いの検討
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
答えるときは問題の本質をよく考える
向山 洋一
学年別3月教材こう授業する
1年
1ねんの まとめ
近藤 佳織
おおいほう すくないほう
柳田 真弓
2年
たし算とひき算(2)
捧 俊夫
三角形と四角形
大野木 一雄
3年
おもしろ問題にチャレンジ!
田中 裕美
もうすぐ4年生
宮澤 宏祐
4年
ともなって変わる量
山田 博之
かわり方
赤塚 邦彦
5年
5年のまとめ
高原 学
ジャンプ 博物館見学
行實 克彦
6年
算数卒業旅行
沖平 和生
算数ワンダーランド
高野 久昭
中学難教材こう授業する
1年/円錐の表面積
杉山 雄飛
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第72回)
「中学数学スキル」の改訂作業が終了しました
井上 好文
向山型算数に挑戦/論文審査 (第76回)
超難問こそ教師の知恵を!
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第78回)
「文章題」をどう指導するか(下)
木村 重夫
向山型算数WEBサロン (第72回)
難関「時速・分速・秒速」の変換問題は、一味加えた線分図で攻略できる
赤石 賢司
“若葉印”教師が向山型算数でダッシュするとき (第12回)
向山型算数には「できる」ようになるシステムがある
吉元 輝明
“問題解決学習”隣の教室の実態ルポ
教科書を「てこでも使わない」公開授業
斎藤 一子
教科書を見せない授業
高野 宏子
〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
『TOSS子ども百玉そろばんスキル』を個別指導で活用する
早川 広幸
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第78回)
低学年
許 鍾萬
中学年
竹本 明央
高学年
小倉 秀志
【学年別】『TOSS算数ワーク』活用事例集 (第12回)
1年/くり下がりのあるひき算活用法
上杉 圭子
2年/学力がつく大人気のワーク
森元 智博
3年/難しいけど またやりたーい!
相浦 ゆかり
4年/子どものやる気を引き出す『TOSS算数ワーク』
刀祢 敬則
5年/AD/HDの子にも大人気!!
林 宣行
6年/やっぱり…小学校の振り返り
内田 良市
向山型算数セミナー
2006年セミナーは新しい提案授業があります!!
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
向山型算数のパーツを使いこなして
井坂 広輝
毎日の授業が楽しくなった!
執行 ひろみ
シーンと集中!計算スキル
白井 明
2年MLからもらった奇跡
曽根 知珠子
本当のやる気を引き出す授業
佐藤 靖子
次の授業が待ち遠しい
田口 慎一郎
子どもの声が何よりの励み
郷 正樹
論文ランキング
12月号
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
TT教員の立場を生かして
堀 寛子
読者のページ
奇声の子・キレル子への対応を学ぶ
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第78回)
向山 洋一

巻頭論文

算数授業へのこだわり

答えるときは問題の本質をよく考える

向山洋一


 向山一門の研究会などで,質問をされるときがある。

 「この点をどうしたらいいのですか」などという,単純質問は受け付けない。というより,私に,こっぴどく叱られる。

 「質問する」ということは,問題点が分かっているのだから,「それに対する自分自身の答えを言って」から,質問するべきである。

 私は,若いときから(教育実習のときから),質問するときはそのようにしてきた。

 それでこそ質問する人は向上するし,答える側もより高いレベルで答えられるのである。

 ところで,質問にもレベルがある。

A 跳び箱が跳べない子をどうしたらいいのか

B 算数の授業が時間通り終わらないけど,どうしたらいいのか

 Aは,「小さな部分」への質問であるのに対して,Bは「大きな部分」への質問であるからだ。

 Aは,「カレーライスの作り方」を聞いているのと似ているし,Bは「フランス料理の作り方」を聞いているのと似ている。

 当然,答え方は違ってくる。

 私の弟子たちは,どのように答えるのか,聞いてみたいと思っている。

 いずれにしても,質問に対しては,「すぐに答える」のではなく,相手の「やっていること」を聞くべきだ。

 相手が,どうやっているかをつかまないで,「待っていました」とばかり答えるのは,とんでもない思い上がりだ。

 「子どもの事実」があるように,「質問する教師の事実」がある。

 それを,まずつかまえるべきだ。

 私が「相手の悩み」を理解せよと言うと,アンケートをとって,すます人がいる。

 やらないよりやった方がいいが,それでは100点中の5点だ。

 相手がどのようにやってダメだったのかを理解すること,相手は,なぜそのような方法でやっていたかを理解すること,つまり,相手の「授業実践上の弱さの原因は何であるか」を理解してから,考えることが大切なのだ。

 これは,「アンケートをとる」とは,全く別の次元での話なのである。

 Aの人は,「自分の今までの体験」で授業をしていたり,「本を読む」ことや,「インターネットで調べる」こともしない人であると推定される。

 だから,「跳び箱の跳ばせ方」を教えるとともに,「困ったときの学習方法」「追求方法」などを教えることが必要となる。

 Bは,つまり「授業の力量全体が弱い」のである。

 もちろん,授業を終わらせるためのあれこれを教えることも大切だ。

 1時間の授業記録を全部起こさせて,見てやれば,かなり分かるだろう(私は新卒1年目から,授業をテープにとり,すべて起こして,先輩に検討してもらった。40年近く昔のことである)。

 つまり「1時間の授業が終わらないのです」という質問には,「授業記録を1時間分起こして持って来てください」とか「1時間の授業をビデオにとって持って来てください」というところから始まるべきだろう。

 授業の技量をどう上げていくのかが問題なのだ。

 私の場合,TTとして教科書中心に教えた。

 教科書進度は,「教科書の進度予定の1.5倍」ぐらいであった。それを正味時間38分位で終了していた。

 4年間,4学級,のべ2800時間を教えた。2800時間で,授業が3秒たりとも延びたことは1回もない。

 むしろ,5分近く前に終了していた。

 1年間,担任として私と一緒に授業してきた筧田先生が,TOSSセミナーで何度も話してくれた通りである。

 私の教えたクラスには,「学級崩壊」状態のクラスもあったし,「できない子」もいた。

 でも,「授業が終わらない」などということは,一度としてなかった。

 学年末,子どもたちに「授業についての作文」を書かせた。

 1人が2枚も3枚も書いていた。

 みんな「算数の授業が大好きになりました」と書いていた。

 3年まで,算数が大嫌いだった子も多かったが,好きになったのである。

 この作文は校長先生にだけは見てもらってきた。ある意味で担任の授業への批判でもあったからだ。

 この作文を,私は大切にとってある。

 ずっと,しまっていたが教えた子も大学に入った。先日,セミナーで紹介をした。

 すばらしい子どもたちの作文だった。

 ということで,「授業が時間通り終わらないのは,授業の力が未熟」ということにつきるのだが,それを納得させ,伸びる方向を示してやるのは結構大変だ。

 「フランス料理を習いたい」という人に,名人シェフはどう言うだろう。

 「師匠について修業しなさい」とでも言うのだろうか。

 「とりあえず,基本は料理学校で学びなさい」と言うのだろうか。

 少なくても「その場であれこれ教える」などということは,しないだろう。

 サークルに入ってもらって模擬授業をさせ,1つ1つ伸びてもらうのが妥当なのだと思う。

 簡単そうに思えることでも,実は解決の方向は奥が深いのである。

 1月号の「挑戦問題」もそうである。

 割合を出して,グラフに書かせる問題なのであるが,「教科書通り」では,歯がたたない。

 超難問を教えるには,次のどちらかが必要だ(あるいは両方必要だ)。

(1) いくつかに分ける

(2) 原理に戻って教える

 助走問題,先生問題というのは,実はこの2つを満足させる問題を言うのである。

 さて,1月号の「挑戦問題」は難問であった。

 子どもたちに習得,習熟させるのが,極めて困難なのだ。

 しかし,困難な問題でも分解して,原理を教えればいつか分かる。ただし,「繰り返し」「繰り返し」が必要だ。

 第一は原理である。サッカーでも,踊りでも,ピアノでも,剣道でも「分解した」「原理」を,「繰り返し」「繰り返し」学習したはずなのである。

 この問題の原理は,「くらべられる量÷もとにする量=割合」ということである。

 しかし,この言葉が分からないのだ。

 子どもに「ピーン」とこないのである。

 私は,次のように教える。

 全部で10個のおはじきがある

  ○○○○○○○○○○

 一部分の3つだけ赤い

  ○○○○○○○●●●

 「赤いのは,全体のどれだけか」

@このような問題は,必ず分数にする

  部分

全体 となる。

A数字を入れる

  部分

全体=3

B分数をわり算にかえる

  3=3÷10

C答えを出す 3÷10=0.3

D0.3を割合にする 3割

 (野球で10回打って,ヒット3本は何割で

すか)

E0.3を百分率にする

 0.3×100=30(%)

F次のことは,すべて同じである

 3=3÷10=0.3=3(割)=30(%)

 私はこの例を,何度も出して授業をした。

すると,愛媛県は次のようになる。

  愛媛県

合 計=21

 このように,分数で示す方が子どもにはピッタリとくる。分かりやすいのだ。

 そこで,計算となる。第二は計算とおよその数だ。

  21=21÷128

 この計算問題を,私はていねいに扱う。特に1問目は…。計算練習の仕上げのつもりである。

 答えが延々と続く。この延々と続く数字を途中で,区切らせることが必要となる。「およそ」いくつとなるのだ。そして,グラフの表記となる。これが第三のポイントだ。

 割合という原理。計算とその処理,グラフの表記の3つが出てきて,しかも1つ1つが難しいのである。

 しかし,この問題ができるようになれば,小学校の算数は9割は合格と言っていいのである。

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