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巻頭論文
算数授業へのこだわり
なぜ算数の問題解決学習は, クラス平均30 点の大差で完敗したのか!
向山洋一
それは,問題解決学習と向山型算数のシステムの違いがもたらした。
さらには,日常の教育活動の全体システムの違いがもたらした。
前号の九州女教師の報告は,大反響であった。算数基礎学力の校内テストで,平均点が30 点も違ったのである。
問題解決バリバリの男教師は,信じられない事態に,教師が不正をしたと勘ぐった。
そこで,テスト問題は,出題した専科教師団が当日まで保管し,テストの試験官は,担任をはずし,他クラスの教師がすることになって,2学期期末テストを迎えた。
結果は,やはり同じだったのである。
向山型算数と問題解決学習バリバリの教師とでは,学力調査でクラス平均が30点も違うのである。
この男教師は,その後少しだけ変化をする。同学年4名の担任のうち,向山型算数をやる教師もいたのである。
つまり,九州女教師は,職場の中で,地道に努力を続けてきたのである。
向山型算数を宣言したり,あかねこ計算スキルの採用を主張することは,教師自身を鍛え,強くし,職場の環境を前進させるのである。旧文化は,自ら退くことはない。必ず, 新文化に敗れ,歴史の舞台から退場していくのである。
「退場させるため」に努力している教師が新しい文化を普及させるために努力している教師が,技量を向上させていくのである。
早い話が,TOSSデーに多くの友人,知人,友人の友人を参加させた教師が,やはり伸びるのである。
こういう活動は,「研究授業」はもとより「人柄」「人格」まで問われる。そして,自分の足りなさを自覚し,自己変革をしていくからなのである。
自己変革は,時につらい。しかし,生命はとられない。職もとられない。せいぜい,自分の自尊心が少々傷つけられるぐらいだ。
そのくらいのことができないようでは,自分自身の成長のためには時として少しの傷みはあることが覚悟できないようでは,プロの教師になれない。
技量の向上など,望むべくもない。
これは,いかなる道でも同じだ。
時として,少しつらいことはあるが,しかしすぐになくなっていく。その先に待っているのは,楽しくて,明るくて,すばらしい教師としての人生である。
自分の選んだ教師としての道が輝いてほしいなら,教師修業や努力は前向きにすべきなのである。少々苦しいけど,本当は楽しいのだ。みんなとなれば,もっと楽しいのだ。
問題解決バリバリの教師に,学力調査で圧勝した九州女教師は,次のような努力をしていた。
「九州女教師の日常の実践」
1.あかねこスキルを研究授業で
月曜朝のモジュールタイムは,あかねこ漢字スキルを使った漢字タイムにしています。各学年自由なので,バラバラの運用がなされています。校内研究のとき,申し出て漢字タイムの研究授業をしました。校長が,「全校揃えた取り組みを検討したい」と言い,他の学年担任もスキルに興味をもちました(前任校のときは同じ方法で,1年生以外に採用されました)
2.百人一首を休み時間に
学級で百人一首に取り組んでいます。
中休みや昼休みに,教室で百人一首の練習をしていました。他の学年の子たちが廊下からうらやましそうに見ているので,一緒にやってもいいよと言ったら,全学年にわたり,やってきました。
中でも,6年生の不登校ぎみの男の子がとても楽しみにして,毎日私の3年教室に来るようになりました。それを知った6年担任が,学級でも取り組むようにしました。
勉強が苦手で無口なその子が素早く札を取る様子に,学級の子が感心してほめたたえたことを,担任が興奮して職員室で話していました。
3.TOSSランドを,学校開放授業参観に
学校開放日が,2日ありました。算数・国語・社会・道徳の授業をTOSSランドを使って行いました。
学級通信で「パソコンを使った授業」と呼びかけていたので,27人中25人の保護者がいらっしゃいました。
校長は,近隣校の校長を連れて参観に来ました。中学の先生やサークルの他市の先生もビデオ片手に参観し,異様な人だかりとなりました。授業翌日いただいた感想は,また学級通信で取り上げました。
12月には,各学級にプロジェクターが常時設置されることになりました。
4.スマートボード・百玉そろばんを予算化
職員室でサイトを紹介していると,周りの先生が集まってきます。
その際,TOSSランドを使うと楽しく分かりやすい授業が容易にできること,スマートボードがあればより素晴らしい授業ができることを,声高に力説していました。
今年の理振で検討,来年の予算に入れて頂けることが決定しました。
その他,TOSS英会話をサークル勉強し, 勤務校で始まった英語活動の時間に取り入れています。
上手く広めることができるよう,自分に力をつけていきたいと思います。
九州女教師の実践は,部分的ではなく全体的であることが特徴だ。
個々の授業技術をパーツとしてとり入れるのではなく,全体として,システムとしてとり入れていることが特徴だ。
それでこそ,問題解決学習バリバリの教師と,算数のテストで,クラス平均が30点の大差がついたのである。
TOSSの教育実践の優秀さをあますところなく示している。
算数の問題解決学習は,子どもに学力をつけることは,できないということだ。テストで平均30点もの大差がつけば,どんな言い訳も通用しないだろう。
子どもに差があったわけではない。同じ学校の同じ学年の隣同士のクラスの比較なのである。
教師が,不正をしたわけではない。専科の教師が教科書から問題を選んでテストをつくり,当日まで秘密にして,テストのときの試験監督は,他のクラスの教師がやったのである。
ここまで,厳密にやって,クラス平均が30点違った。
問題解決学習バリバリの男性中堅教師は,向山型算数の女教師に完敗したのである。
それは,個人の能力の差ではない。
問題解決学習法と向山型算数指導法の授業システムの差なのである。
だから,全国各地で同じような状況が続発している。
向山型算数と問題解決学習と学力検査をすれば,その差は大差なのだ。
最近は,保護者,子どもにも分かってきて, 「先生のときの算数は楽しかった」「よく分かった」「もう一度担任になってほしい」という声が続出している。
本誌の読者の方でも,このような声を聞いた人は,いっぱいいるだろう。
サークルに入り,模擬授業をした人なら, なおこういう声は多く寄せられたはずである。
すべては「授業システムの差」なのだ。
算数の問題解決学習という愚劣な方法を誰がつくったかは分からない。
スキマだらけの,子ども無視の,ガタガタのシステムだ。
向山型算数は,向山が30年間の教育実践の上,4年間の算数TT時代を経てつくり出したものである。
毎年4学級の4年生(130余名)を教えた。4年間で500 名余である。
毎年授業の最後に,「算数の授業」という作文を書かせた。四百字原稿用紙で1人3枚程。
500名余の作文は,すべて校長先生に見てもらった。今も手もとにある。
500名中,499 名は,「算数が大好きになった。算数をもっと学びたい」等と書いていた。1人が,「好き,嫌い」を記入しなかった。ヤンチャな男の子である。
親からは,山のような便りをもらった。算数が苦手で,それを克服し慶應の附属中に入った子と親からは今も手紙が届く。
30年の私自身の研究とこうした事実と手ごたえの上に発表し,多くの教師によって確かめられ,「あいまいであった所」「文字にできなかった所」を明確にしてきたのが,向山型算数指導法である。
システムの優劣が,クラス平均30点の大差を生んだのだ。
法則化は,技術の時代,パーツの時代だった。だから,部分的な優秀な実践はあったが, 授業の達人は出なかった。
TOSSは,技能の時代,システムの時代である。システムを学ぶ上で,授業技量検定がつくられた。
TOSSの時代の授業技量の向上は,法則化の時代の何百倍,何千倍のスピードである。
ただし,システム全体を学ぶよう努力し, サークルで模擬授業に挑戦すればである。
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- 明治図書