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巻頭論文
算数授業へのこだわり
山百マス計算の「デタラメ」なロジックを批判する
向山洋一
百マス計算の致命的欠陥は「暗算」を「体力」で強いることである。算数を論理的に理解させようとする視点がない。
シンプルな形で説明しよう。
(図省略)
このような「かけ算」の百マス計算を考えてみよう。
空のマスの中には,「暗算したかけ算九九」を,あてはめていくことになる。
8×5が,どうなっているかは考えない。
丸暗記したことを,書き込むのである。
タイムを測定して,毎日やらせれば,暗記している子はスピードはアップするだろう。
「かけ算九九」を習熟させるためには,一応の効果はある。
ただし,「かけ算九九を覚えていない子」「かけ算九九を間違えて覚えている子」には,問題が生じる。何度やっても,間違えるのだ。
だから「かけ算九九が正しく言えるようになった子」のスピードアップだけに有効と言えるだろう。
「覚えていない子」「間違えて覚えている子」には「ていねいなフォロー」が必要だ。
それをしない場合は,害の方が大きい。
教室では,突っ伏す子,反抗する子が発生する。
さらに「百マス計算」指導では,ストップウォッチを持った「体力主義的練習」が,圧倒的に多い。これは,百マス計算の本来の目的から反している。
百マス計算は,40 年昔,朝日新聞大阪版の
「勉強力をきたえる」シリーズに紹介されたものである。
執筆者は,大阪府算数教育研究会の先生方だ。その中には「百マス計算は,かけ算九九の練習法の1つ」として紹介されている。
しかも,「できない子」「間違えて覚えている子へのフォロー」の大切さも力説されていた。
その百マス計算を,後年,岸本先生が「たし算」「ひき算」等にも広げ,タイム測定を導入した。
近年, 山先生は,こうした小学校の「算数学力をつける学習」で,一流国立大学へ多数合格したと宣伝した(一流国立大学へ入学したのは,隣のクラスの子だったという元同僚の証言もあるが,この問題はひとまずおこう)。
(また,小学校の教え子が一流大学に入学しても,「それは,自分の小学校での教育のおかげである」と考えた教師はこれまで1人もいなかった。中学の先生,高校の先生,何よりも本人の努力と小学校教師なら考える。
山先生は,奇っ怪な考え方をする人だが,それも,今はおこう)。
問題は,「人格」の部分より,「学習構造」の中にある。
かけ算九九の練習法の1つとして,大阪の先生方が40年前に紹介した百マス計算を,山先生たちは,「たし算」の練習にも適用した。
素人は,「同じこと」だと思うだろう。
(図省略)
百マス計算で「かけ算」をするのと「たし算」をするのと,何も変わらないと思うだろう。
しかし,全然別なのだ。教材を作るプロなら,まったく別のことに考える。
左上段を取り上げよう。
かけ算は 8×5= 40 となる
たし算は 8+5= 13 となる
かけ算はこのままでいい。それは丸暗記だからである。
しかし,たし算は丸暗記ではない。子どもの頭の中では,次のような操作がされている。
8+5=8+(2+3)
= 10 +3
= 13
5の方を分解するのだ。8にたして10 になる数を取り出す。つまり2だ。
5を2と残りの3に分解するのである。
8に2をたして10 にして,あまりの3をつけ加えて,13 にするのである。
1年生では,このことを,きちんと教える。
大人なら瞬時にできることが,子どもはできない。
たし算の原理を理解するには時間がかかる。「指を折ってたし算をする子」を,よく見かけるが,発達の一段階なのだ。
百玉そろばんやおはじきで操作させるのも,「もの」を通して原理を理解させるためだ。
(図省略)
5の下に「サクランボ」を書き,2と3に分解させて,計算を教える「サクランボ計算」も,子どもの頭の中の考え方を整理させるためだ。
このような,さまざまな学習を通して(8+5)を理解するのである。
この方法なら,「8+6」の計算にも応用できる。
ところが,「丸暗記」には応用が効かない。
8×5= 40
ができても,次はできない。
8×6= 48
これを暗記するしかないのだ。つまり,かけ算九九は,表の中の答えをすべて暗記できている子だけができるのである。
しかし,たし算は違う。
8+5=8+(2+3)= 13 ができれば,次の問題も自分でできる。
8+6=8+(2+4)= 14
丸暗記が必要なのではなくて,たし算の原理を理解させ,身につけさせることが大切なのである。
しかし,百マス計算では,「かけ算九九」の「丸暗記」と同じ方法で「たし算」をさせようとする。
タイムをとり,何回も繰り返し,「体力主義」で身につけさせようとする。
が,これではだめなのだ。
「たし算ができない子」は,わけが分からなくなる。
できるためには,「たし算のすべてのパターン」を暗記するほかないからだ。
「かけ算九九」の暗記なら分かる。
しかし,「たし算をすべて暗記させよ」となると,これは「教育者の放棄」だ。
「一位数と一位数」のすべての場合(100 通り)をたさなければならないからだ。
(図省略)
一位数のたし算は,すべてで100 パターンがある。これを暗記させるのだ。
教室では丸暗記はさせない。
100 のパターンをいくつかのカテゴリーに分けて教えるのである。
例えば,「くり上がりがある」「くり上がりがない」で2種類に分けられる。これが基本だが,教科書はもっときめ細かい。
「たして5になる」
「たして10 になる」
「ゼロをたす」
などの分解を加える。
すると,粗く5種類に分解される。それぞれの分解を2つの「計算」で教えれば,他もできると考える。
「つまり,1桁のたし算は総計で1 0 0 問ある。それを5つに分解して,各2問,計10 問で教える」
これが「計算指導」の基本の原理だ。
総数100問の1桁のたし算のうち10 問を教えれば,他もできると考えるのである。
そのために,教材,教具,指導を工夫する。
もちろん,「あかねこ計算スキル」のように習得,習熟させるための練習帳も使う。
しかし,百マス計算は「1桁のたし算100 問を全部丸暗記せよ」という原理になっている。
それを,毎日繰り返すわけだ。
子どもも,教師も「あきる」のが普通であろう。賞やほめことばやタイムアップで少しは,興味をひきつけられる。しかし,長続きはしない。
何よりも「できない子」が反発するはずなのである。「やる気をなくす」ようになる。
それと,タイムでしばりあげる。実に「できない子」に残酷な方法だ。(最近, 山練習帳で,たし算を100 問丸暗記にさせているページを発見した。しかも,公文式ロジックを使ってである。山百マス計算はデタラメは論理で作られている。このことは別の機会に。なお,ビジネス書で山氏は,指名なし討論を自分が作ったかのように主張しているが,「指名なし」の命名は向山であり,公開した最初も向山であることをとりあえず,述べておく)。
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