向山型算数教え方教室 2004年1月号
「問題解決学習」を向山型でつくり変える

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向山型算数教え方教室 2004年1月号「問題解決学習」を向山型でつくり変える

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2003年12月
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 「問題解決学習」を向山型でつくり変える
子どもを混乱に陥れるわり算の改悪部分
大関 貴之
制御のない勝手な活動で子どもが混乱する
八和田 清秀
多様な考え方から基本型を固定し,指導に必要な部分のみ扱え
星原 一宏
悪しき常識を修正する
西田 裕之
自力解決では無理。向山型で指導せよ
楠 康司
助走問題で倍と割合のイメージを作る
鎌田 信美
問題解決型に『改悪』された悪影響の波及力は大きい
伊藤 佳之
ミニ特集 教室にプロジェクター TOSSランドで成功した算数授業
画面にくぎづけ!「かたちあそび」はゲーム感覚で
斎藤 浩康
図形はパソコン+プロジェクターを使えば一発で分かる
桜井 健一
書き方が一目瞭然,折れ線グラフの授業
渡辺 佳起
1人に1台のパソコンがあれば効果てき面!
赤木 雅美
楽しく,分かりやすくTOSSランド
小路 健太郎
フラッシュで簡単理解,三角形の書き方
西尾 豊
グラビア
自己否定に対してプロの姿勢を感じる
村田 斎
向山型算数キーワード
子どもが教えてくれる
木村 重夫
論文ランキング
10月号
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
陰山百マス計算の「デタラメ」なロジックを批判する
向山 洋一
学年別1月教材こう授業する
1年
100までのかず
西郷 幸子
100までのかず
落合 恭代
2年
1000より大きい数をしらべよう
佐藤 浩人
九九のひょう
中田 昭大
3年
重さをはかろう
深野 美保
かけ算の筆算(2)
河野 健一
4年
何倍でしょう
竹内 正宏
広さを調べよう
渡邉 康子
5年
割合
田畑 典子
くらべ方を考えよう
高橋 和夫
6年
比とその利用
辻岡 義介
形の大きさの表し方を考えよう
笠原 三義
向山型算数に挑戦/論文審査 (第50回)
ポイントを踏まえ,分かりやすく限定する
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第52回)
赤鉛筆指導の我流を排す(上)
木村 重夫
〜「赤い線はこんなにも薄いのか!?」〜
向山型算数の原理原則と応用 (第52回)
ゆれない言葉(アルゴリズム)と変わる言葉を明確に分けて指導せよ
白石 周二
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第21回)
次々と起こるドラマ…向山型算数のすごさを,腹の底から実感!
鈴木 永保子
向山型算数WEBサロン (第46回)
手順を学んだ子どもは問題解決の方法を発見する
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第46回)
授業の詰め・家庭学習用教材・導入ドリル,とっても便利な数学スキル
井上 好文
「親と子の証言!」向山型算数は公文を超える! (第10回)
印象薄く目立たぬ子が自信をつけていった2つのドラマ
松崎 力
『教え方大事典』を活用した算数授業体験
低学年/楽しい「あみだ計算クジ」
高橋 一行
中学年/わずか数秒で子どもたちを引きつけた「きつつき」の絵
藤井 優作
高学年/速さの「難問1問型」難問で知的興奮を作り出す
古川 伸一
中学/中学生も大熱中,倍数ビンゴの授業
大恵 信昭
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第52回)
低学年
川原 奈津子
中学年
古市 和臣
高学年
橋本 芳治
ライブ体験で味わう“実力づくりへの道”向山弟子の介入を受けて
大切なことは何度も何度も繰り返す
飯野 哲次
作業指示を削る―言葉が削られる
毛見 隆
向山型算数セミナー
向山氏欠席の中、講師や参加の方々みんなでセミナーを成功させた!
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
算数を嫌がる子の小さな成長
上木 朋子
シーンとした時間がおとずれた
渡邉 緑二
サークル参加で,道が開けた
池町 徹也
努力の方向が見えた喜び
山口 きみ子
どの子もできるようになる算数
池田 潤
ライブと研究会が私を変えた!
鎗田 貴子
模擬授業が自分を変える!
保土田 佳敬
自由投稿フリーページ
木村 重夫浅野 光
実物ノートと指導のポイント
堂々とバツをつける子を育てる
八巻 修
読者のページ
向山型を校内で広げる気概と行動力
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
向山型算数に挑戦/指定教材 (第52回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

山百マス計算の「デタラメ」なロジックを批判する

向山洋一


 百マス計算の致命的欠陥は「暗算」を「体力」で強いることである。算数を論理的に理解させようとする視点がない。

 シンプルな形で説明しよう。


(図省略)


 このような「かけ算」の百マス計算を考えてみよう。

 空のマスの中には,「暗算したかけ算九九」を,あてはめていくことになる。

 8×5が,どうなっているかは考えない。

 丸暗記したことを,書き込むのである。

 タイムを測定して,毎日やらせれば,暗記している子はスピードはアップするだろう。

 「かけ算九九」を習熟させるためには,一応の効果はある。

 ただし,「かけ算九九を覚えていない子」「かけ算九九を間違えて覚えている子」には,問題が生じる。何度やっても,間違えるのだ。

 だから「かけ算九九が正しく言えるようになった子」のスピードアップだけに有効と言えるだろう。

 「覚えていない子」「間違えて覚えている子」には「ていねいなフォロー」が必要だ。

 それをしない場合は,害の方が大きい。

 教室では,突っ伏す子,反抗する子が発生する。

 さらに「百マス計算」指導では,ストップウォッチを持った「体力主義的練習」が,圧倒的に多い。これは,百マス計算の本来の目的から反している。

 百マス計算は,40 年昔,朝日新聞大阪版の

「勉強力をきたえる」シリーズに紹介されたものである。

 執筆者は,大阪府算数教育研究会の先生方だ。その中には「百マス計算は,かけ算九九の練習法の1つ」として紹介されている。

 しかも,「できない子」「間違えて覚えている子へのフォロー」の大切さも力説されていた。

 その百マス計算を,後年,岸本先生が「たし算」「ひき算」等にも広げ,タイム測定を導入した。

 近年, 山先生は,こうした小学校の「算数学力をつける学習」で,一流国立大学へ多数合格したと宣伝した(一流国立大学へ入学したのは,隣のクラスの子だったという元同僚の証言もあるが,この問題はひとまずおこう)。

 (また,小学校の教え子が一流大学に入学しても,「それは,自分の小学校での教育のおかげである」と考えた教師はこれまで1人もいなかった。中学の先生,高校の先生,何よりも本人の努力と小学校教師なら考える。

 山先生は,奇っ怪な考え方をする人だが,それも,今はおこう)。

 問題は,「人格」の部分より,「学習構造」の中にある。

 かけ算九九の練習法の1つとして,大阪の先生方が40年前に紹介した百マス計算を,山先生たちは,「たし算」の練習にも適用した。

 素人は,「同じこと」だと思うだろう。


(図省略)


 百マス計算で「かけ算」をするのと「たし算」をするのと,何も変わらないと思うだろう。

 しかし,全然別なのだ。教材を作るプロなら,まったく別のことに考える。

 左上段を取り上げよう。

かけ算は 8×5= 40 となる

たし算は 8+5= 13 となる

 かけ算はこのままでいい。それは丸暗記だからである。

 しかし,たし算は丸暗記ではない。子どもの頭の中では,次のような操作がされている。

    8+5=8+(2+3)

       = 10 +3

       = 13

 5の方を分解するのだ。8にたして10 になる数を取り出す。つまり2だ。

 5を2と残りの3に分解するのである。

 8に2をたして10 にして,あまりの3をつけ加えて,13 にするのである。

 1年生では,このことを,きちんと教える。

 大人なら瞬時にできることが,子どもはできない。

 たし算の原理を理解するには時間がかかる。「指を折ってたし算をする子」を,よく見かけるが,発達の一段階なのだ。

 百玉そろばんやおはじきで操作させるのも,「もの」を通して原理を理解させるためだ。


(図省略)


 5の下に「サクランボ」を書き,2と3に分解させて,計算を教える「サクランボ計算」も,子どもの頭の中の考え方を整理させるためだ。

 このような,さまざまな学習を通して(8+5)を理解するのである。

 この方法なら,「8+6」の計算にも応用できる。

 ところが,「丸暗記」には応用が効かない。

    8×5= 40

ができても,次はできない。

    8×6= 48

 これを暗記するしかないのだ。つまり,かけ算九九は,表の中の答えをすべて暗記できている子だけができるのである。

 しかし,たし算は違う。

 8+5=8+(2+3)= 13 ができれば,次の問題も自分でできる。

 8+6=8+(2+4)= 14

 丸暗記が必要なのではなくて,たし算の原理を理解させ,身につけさせることが大切なのである。

 しかし,百マス計算では,「かけ算九九」の「丸暗記」と同じ方法で「たし算」をさせようとする。

 タイムをとり,何回も繰り返し,「体力主義」で身につけさせようとする。

 が,これではだめなのだ。

 「たし算ができない子」は,わけが分からなくなる。

 できるためには,「たし算のすべてのパターン」を暗記するほかないからだ。

 「かけ算九九」の暗記なら分かる。

 しかし,「たし算をすべて暗記させよ」となると,これは「教育者の放棄」だ。

 「一位数と一位数」のすべての場合(100 通り)をたさなければならないからだ。


(図省略)


 一位数のたし算は,すべてで100 パターンがある。これを暗記させるのだ。

 教室では丸暗記はさせない。

 100 のパターンをいくつかのカテゴリーに分けて教えるのである。

 例えば,「くり上がりがある」「くり上がりがない」で2種類に分けられる。これが基本だが,教科書はもっときめ細かい。

 「たして5になる」

 「たして10 になる」

 「ゼロをたす」

 などの分解を加える。

 すると,粗く5種類に分解される。それぞれの分解を2つの「計算」で教えれば,他もできると考える。

 「つまり,1桁のたし算は総計で1 0 0 問ある。それを5つに分解して,各2問,計10 問で教える」

 これが「計算指導」の基本の原理だ。

 総数100問の1桁のたし算のうち10 問を教えれば,他もできると考えるのである。

 そのために,教材,教具,指導を工夫する。

 もちろん,「あかねこ計算スキル」のように習得,習熟させるための練習帳も使う。

 しかし,百マス計算は「1桁のたし算100 問を全部丸暗記せよ」という原理になっている。

 それを,毎日繰り返すわけだ。

 子どもも,教師も「あきる」のが普通であろう。賞やほめことばやタイムアップで少しは,興味をひきつけられる。しかし,長続きはしない。

 何よりも「できない子」が反発するはずなのである。「やる気をなくす」ようになる。

 それと,タイムでしばりあげる。実に「できない子」に残酷な方法だ。(最近, 山練習帳で,たし算を100 問丸暗記にさせているページを発見した。しかも,公文式ロジックを使ってである。山百マス計算はデタラメは論理で作られている。このことは別の機会に。なお,ビジネス書で山氏は,指名なし討論を自分が作ったかのように主張しているが,「指名なし」の命名は向山であり,公開した最初も向山であることをとりあえず,述べておく)。

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