向山型算数教え方教室 2002年2月号
子どものノートが美しくなるシンプルな「板書」

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向山型算数教え方教室 2002年2月号子どものノートが美しくなるシンプルな「板書」

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2002年1月
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

もくじの詳細表示

特集 子どものノートが美しくなるシンプルな「板書」
この目で見た美しい板書
根本 直樹
基本はやっぱり教科書から
福井 千彰
自習もできた板書システム
斎藤 奈美子
シンプルだからわかる
柿崎 厚子
板書の細分化でノートが美しくなる
岩田 史朗
シンプルノート,一歩進んだ活用法
松崎 力
シンプルな基本型,シンプルな板書
奈良 満
ミニ特集 向山型算数のテンポとリズム 私はこうして修業した
「ライブ」で体感し,「ライブ」で鍛える
星原 一宏
算数MLで自分の授業を分析する
伊藤 佳之
口調も息づかいも真似をする
馬場 慶典
言葉を削り,テンポとリズムを生む
佐藤 尚子
サークル模擬授業でテンポとリズムを鍛える
大澤 智
手本に学び,MLに学び,ライブで学ぶ
大沼 靖治
グラビア
リズムとテンポを正しく理解する
村田 斎
向山型算数キーワード
毎時間のノートチェック
木村 重夫
論文ランキング
11月号
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
タイル学習、問題解決学習はADHD(注意欠陥、多動性障害)の子や学習不振の子を苦しめる
向山 洋一
学年別2月教材こう授業する
小1教材こう授業する
100までのかずのけいさん
奥原 淳子
たしざんとひきざん
末宗 昭信
小2教材こう授業する
10000までの数
渡辺 佳起
1000より大きい数
星島 成壱
小3教材こう授業する
かけざんの筆算
小田 誠
かけ算の筆算
飛田 政彦
小4教材こう授業する
かわり方調べ
小峯 学
変わり方
白瀬 嗣大
小5教材こう授業する
円と正多角形
筧田 貴之
円と正多角形
橋本 幸康
小6教材こう授業する
いろいろな単位
遠藤 祥一
割合を使って
北村 聖子
向山型算数に挑戦/論文審査 (第27回)
ポイントはただの一つ。小さな点だが、その後の授業が違ってくる
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第29回)
向山型は「定義」をこう扱う
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第29回)
授業をシンプルに細分化することで,テンポをうみだす
白石 周二
〜3年生わり算 初期の指導〜
向山型算数と出会ってTT授業が変わる (第23回)
子どもの事実を作り出した実践こそが授業を変えていく
須貝 誠
向山型算数WEBサロン (第23回)
約分の表記はシンプルがよい
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第23回)
リズムとテンポが違えば,別の授業になる
井上 好文
TOSSランドを活用した算数授業体験 (第11回)
1年/「たしざん(2)」をさくらんぼ計算で攻略!
渡邉 康子
3年/説明がいらないそのまま使える熱中サイト
田中 裕美
4年/我流に気づくTOSSランド
細川 晃
5年/TOSSランドがあってこそ
山下 文廣
6年/ある日の教材研究―TOSSLANDのある生活―
黒田 武士
中学/チェックリストで我流を排す
橋本 芳治
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第29回)
低学年
荒谷 卓朗
中学年
清水 有紀
高学年
奥山 昭仁
衝撃のライブ体験「向山洋一の介入模擬授業」を受けて
シンプルな板書,授業の組み立てを学んだ
上木 信弘
「詰め」の奥深さを知った介入授業
大関 貴之
向山型算数セミナー
模擬授業や研究発表にチャレンジしよう
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
6年生,平均90の道は険しいが
龍野 牧子
向山型算数で保護者の信頼を得る
田中 由美子
目と手と口と耳と心で学ぶ!
神田 朋恵
算数の悩み一気に解消
田中 牧
黒板の魅力
岩田 貴典
A子さん,裏表100点
末廣 真弓
すぐに変化を実感!向山型算数
上堀 薫
自由投稿フリーページ
木村 重夫間嶋 祐樹
実物ノートと指導のポイント
1年生にこそミニ定規を
岡 惠子
読者のページ
鋭い読者によって本誌は進化する
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
法則化最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第29回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

タイル学習,問題解決学習はADHD(注意欠陥,多動性障害)の子や学習不振の子を苦しめる

向山洋一


30年前,算数の授業は「タイル」が大流行であった。正方形のタイルを組みあわせ,足し算,かけ算,大きな数などを教えていた。

現在も,タイルは一部で使われており,先日のNHKテレビは,体育館いっぱいのタイルを写し出していた。これで,数の概念をおさえさせるのだという。

こんなことをしていたら,時間は大幅に不足して,教科書は半分も終わらず,著しい学力低下をもたらす。事実,この学区の父母から「学力低下をなげく」投書があった。

タイルは,民間教育運動の中から生まれた。遠山啓先生を中心とした算数教育運動は,教科書批判の中から,水道方式を作り出し,算数教育の影響を広げていった。

かなり,広まったと思える。京浜教育サークルの中でも,石黒氏・井内氏をはじめ何人かの先生が,熱心にとり組んでいたのである。

確かに「大人が」「数のしくみ」を理解するには分りやすい方法であった。

問題は,タイルを子どもが操作するという点にある。

最初の頃,タイルは,ボール紙で作られた。

タイルは,子どもの机から,バラバラと落ちた。

ちょっと強い風が教室に入ると,タイルは教室中に舞い散った。

一年生を担任した教師なら,この「タイルバラバラ事件」を,いやという程体験しているはずである。

何年もしてから,タイルは,マグネットになった。

風に舞い散ることはなくなったが,あいかわらず,机からバラバラと落ちた。

風に飛ばないかわりに新しい問題が生まれた。それは,磁石のタイルをとったり動かしたりするのに時間がかかるということである。

教室の30人の子どもたちの操作を確認していると,時間がどんどんたった。

教科書は,なかなかすすまなかった。

一年生を担任した教師なら,この「タイル操作の困難,時間延長」を,誰でも体験していると思う。

その結果,「教科書は終わらない。時には1/3も残ってしまう」その上「学力が低い」という状況が生み出された。

北海道では,いくつかの議会でとりあげられ「学力低下」が問題となった。

それでも,タイルにこだわる教師はいっぱいいた。特に,民教連の教師である。

彼等は「子どもの事実」を,まるで見ようとしなかった。

「学力低下」の事実に目をふさいでいた。

彼等の頭の中は,「文部省は悪い。教科書も悪い。教科書批判から生まれたタイル方式は正しい」という,「独断」に支配されていたのである。

私も実は,タイルを使ったことがある。

使ってみて,すぐに「タイルバラバラ事件」に出会った。

私は,かな学習活動をきちんとさせる方である。その私が使って,どうしようもないほどの「バラバラ事件」が生まれる。

これは,大人が数のしくみを理解するのにはいいが,教具としては最低だと思った。

一,二回使ってみて,すぐに中止した。

従って,私の実践記録,報告,学級通信の中には,「タイル」がほとんど出てこない。

教具としての「タイル」は,かなりの欠陥教具だったのである。

最近になって,別の視点があることを教えられた。

つい先日FM東京での「向山洋一の教育ステーション」の収録のことである。

東北大学医学部附属病院医師の横山ドクターによって,「インターネットのホームページ」が紹介された。

そこには,「算数指導のタイル活用図」が,教科書の図のように示されていた。

横山ドクターは,タイルを一つ一つ操作した「このような指導方法だと,ADHDの子どもは,何をやっているか分らなくなってしまうのです」と説明した。

注意欠陥,多動性障害の子は,普通のクラスに2名ぐらいいるといわれる。

この子たちは「しつけが悪いから」そうなったのではなく,「障害」を持っているのだ。

正しく障害について理解して,正しい教育をすれば,立派に育っていく。

しかし,ADHDについて教師が理解していないと悲劇が生まれる。

さまざまな能力がありながら,教師によってそれがスポイルされ,中学生になるころには,反社会的行為をとるようになる子もいるという。

小学校時代の教育のひどさが,子どもに害を与えるのだ。

横山ドクターは,「ひどい教育とは,我流の教育」だという。

専門家の知恵,見識を持たないで,自分の思いついたことを教育することだという。

日本中の小学校で「我流の授業」によって,多くの反社会的な行為にまで至る教育がされてしまっているのである。

「タイルの授業は,ADHDの子には,駄目な授業」なのである。

それに比べて良いのは,「百玉ソロバン」である。

百玉ソロバンこそ,ADHDの子をはじめ学習障害を持った子には,すぐれた教具なのである。

百玉ソロバンは,日本の教育界が作り出した,教具の傑作である。

何十年も昔には,日本中で百玉ソロバンが使われていた。

タイルのために,学校から姿を消しつつあるが,今こそ,日本教育界が生んだ「百玉ソロバン」を復権させるべきである。

学校の教材室には,ホコリをかぶった百玉7ソロバンが,かなり残っている。

トモエソロバンの社長氏から,「先生方が個人で購入する時には,勉強させてもらいます」と言われている。

Tossの向山からの紹介ということで,お願いしたらいい。

学校用に入れば,それにこしたことはない。

「タイル」は,ADHDの子に向いていないが,もっとひどいのは,「問題解決学習」だ。

問題解決学習は,最初から最後まで,ぜーんぶ,ADHDの子をはじめ,学習障害の子,学習不振の子をスポイルしているのである。

障害を更に痛めつけ,人格障害にまで至らす悪魔の方法だ。

だから,低学年の時,テストで5点10点だった子が高学年になって,90点,100点をとるようなことが一つも生まれないのである。

問題解決学習をやっている,すべての附属小,指導主事,管理職に,私は3年前からメッセージを書き続けている。

日本中さがして,たった一人でいい。低学年の時に5点10点だった子が,高学年になって90点100点になった例を示してほしいと。

書き続けて,3年間,誰も名のりをあげない。そんな事実を作れなかったのだ。

向山型算数ではいっぱいある。

50人でも,100人でも,1000人でも,子どもの作文,教師の感動,親からの感謝の例と示すことができる。

向山型算数ことは「できない子」「障害を持った子」を何十年にもわたって研究し,普通学級の中で,「できる子」も「できない子」も,共に熱中する授業を追求した結果なのである。

5点,10点をとった子が,涙を流して「先生,ありがとう」というドラマが,全国各地で生まれている。

これこそが,「向山型算数がすぐれている」という何よりの証明だ。

問題解決学習は,「できない子をできないまま」にさせるだけではない。「障害のある子をスポイル」するひどい教育方法なのである。

私は,このことを,何度でも,何十度でも書き続ける。

今,全国のいくつかの学校では,「教科書を教えるな」「問題解決学習でやれ」という強制をする人がいる。

私は強制をする人は,犯罪を犯していると思っている。

第一は,「教科書を使うな」と,教科書を使わないのみか,それを強制する犯罪。

第二は,ADHDの子など,障害のある子をスポイルしてしまっている犯罪。

そのような犯罪を犯した教師を,教育界は許すべきではない。

私は,どこまでも,(本人が悔い改めるまで)追求する。心して,「教科書を使うな。問題解決学習をせよ」と言われよ。

私のこの文に怒った問題解決学習の先生方,再三再四いうように,公開の場で,何人かの授業者を立てて研究会を持ちましょう。

雑誌特集,マスコミ特集,学会での発表,どれでもけっこうである。

できたら,小1から中3までそれぞれ1人ずつの授業者をたてて,多くの人々の前で「立ち合い授業」をやりたいと思う。

いかが?それが公明正大な研究の場となる。

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