- 特集 子ども同士の関係をどうつくりかえるか
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- 子ども同士の関係をどうつくりかえるか
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- 子ども同士の関係をどうつくりかえるか
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今月のメッセージ
大震災に直面した今、生活指導に求められること
岡山大学(指名全国委員) 住野 好久
今、深い悲しみの中にある。この原稿を依頼されてまもなく起こった巨大な地震と津波、そして原発事故。多くの命が失われ、多くの方の生活が奪われた。また、多くの教師と子どもたちの命も失われた。全生研の教師も。ぎりぎりまで子どもたちを守りながら。
この原稿が公にされる六月、復興は進んでいるだろうか。原発はどうなっているだろうか。想像もつかない。ただただお見舞いの気持ちと復興に向けて支援したい気持ちでいっぱいである。
この未曾有の大震災に直面し、全生研に求められることは何か。改めて大切にしたい生活指導の原則を確認したい。というのも、こうした状況だからこそ、これまで全生研が大切にしてきた生活指導・集団づくりが必要になると考えるからである。
一 子どもたちの権利を守る地域生活指導―福祉との結合
被災した子どもたちは健康で文化的な生活を営む権利、教育を受けて学ぶ権利が侵害されている。被災して間もなく、インタビューに答えた子は「今ほしいものは……おうち。今したいことは……学校に行きたい。」と答えた。こうした子どもたちの権利を守るには、福祉と手をつないだ「地域生活指導」の取り組みを広げることが求められる。「子どもの最善の利益を守る」ために、教師、保健師、医師、ソーシャルワーカー、NPO、ボランティア等々がつながって、子どもたちの権利を守るネットワークを構築していくこと、地域社会において集団づくりを推進していくことである。その際、近年全生研が展開してきている「反貧困」の視点も欠かせない。
二 子どもたちのケアしあう関係を築く集団づくり
肉親を失った子、目の前で友だちが津波にのみ込まれていくのを見た子、多くの子どもたちがひどく心を痛め、傷ついている。また、頻発する余震の度に津波の恐怖をフラッシュバックさせられている。不安とストレスを抱える子どもたちに対して求められるのは、相互にケアしあうことで相互にケアされる関係である。それはケアしようとする側が一方的に働きかけ、ケアしている気になっているような関係ではない。ともにケアしあい、共感しあい、癒しあい、励ましあう関係である。子ども集団づくりがつくり出す子どもたちの関係は、強者が弱者を助けてあげるような関係ではなく、活動や生活を共にしながら、仲間の存在に癒され、励まされ、自己効力感を高めていける関係なのである。
三 参画と学びを通じて子どもたちを生活主体に育てる
傷ついた子どもたちを、次第に生活再建の営みに参画できる主体に、将来にわたる地域の復興の担い手に育てていくことも求められる。生活指導は、子どもたちが仲間に支えられながら生活主体へと発達していく過程を支援し、エンパワーする機能を果たすことが求められる。そのための生活指導は、学級生活に閉じたものとなってはならない。それは社会現実への参画と豊かな学びを通じて、今自分たちは何をすることが求められているのか、それはどのようにすれば実現可能なのかをみんなで解き明かし、共有し、実践していく生活指導である。
こうした生活指導の原則を、被災した子どもたちに対してだけではなく、すべての子どもたちに対する生活指導に貫くこと―震災に直面した今だからこそ訴えたい。
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