生活指導 2009年3月号
特別なニーズを持つ子と集団づくり

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生活指導 2009年3月号特別なニーズを持つ子と集団づくり

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2009年2月9日
対象:
小・中
仕様:
A5判 123頁
状態:
絶版
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目次

もくじの詳細表示

特集 特別なニーズを持つ子と集団づくり
特集のことば
特別なニーズを持つ子と集団づくり
井本 傳枝
実践・小学校
「カメ」になってもいいよ
都築 一郎
実践・中学校
リッキーの居場所
猪俣 修
実践・小・通級
「おいらがいないと困るとナイト」
真咲 倫子
分析とコメント
育てたい「ちから」に見通しをつける実践を
白桃 敏司
論文
特別支援教育の転換と集団づくり
湯浅 恭正
第2特集 人々の生活権を守る〜地域生活指導へのアプローチ〜
人々の生活とソーシャルワーカー
スクールソーシャルワーカーの動向を中心に
鈴木 庸裕
人々の生活と健康〜診療所づくり〜
地域の要求から出発した診療所づくり
小林 義次金勝 武鑑
若者自立支援の現場で
「ひきこもり」「ニート」とよばれる若者たちとのかかわりあいの中から
藤井 智
人々の生活支援としての学童
父母会あっての学童保育―みんな一緒だからやってこれた―
山川 浩章
今月のメッセージ
“喋り場”提供してます
佐藤 くみ子
論考
「道徳教育」と生活指導
大和久 勝
〜「私の道徳授業」の連載に寄せて〜
実践の広場
学級のイベント
みんなで創ったお化け屋敷
辻原 良一
学年・学校行事
学年のまとめは学年で
細江 剛
学びの素材
「徳目」や「説教」ではなく
土居原 和子
部活動・クラブ活動の工夫
生徒がよかったと思える部活づくり
永井 徹
心に残る子どもとの対話
「ハッとする自分」に気づく時
重茂 雅宏
職員室の対話
みんなで支えあう
本山 陽一朗
手をつなぐ―親と教師
保護者とつながるために
齋藤 修
コーヒータイム
私の出会い・発見
清水 裕紀子
私のオフタイム
曽根原 朗
掲示板Y・O・U
若者からの発信の広場
大谷 晋ほか
案内板 集会・学習会のお知らせ
教育情報
こころと命の学校
橘岡 正樹
〜貝塚養護学校・寄宿舎の存続・発展の取り組み〜
風の声―この人に聞く
アメラジアンスクール・イン・オキナワ
浅野 誠久留島 理夫
読書案内
『伝承遊び考』
竹内 常一
読者の声
1月号を読んで
シリーズ/各地の実践
東京
外波山 弘恵
〜子どもを信じる・親とつながるすてきな学級を目指して〜
2008年度既刊目次
編集後記
井本 傳枝

今月のメッセージ

“喋り場”提供してます

常任委員 佐藤くみ子


初冬の或る夜、早月から電話がかかってきました。翌日の土曜日、家に来て話がしたいと言うのです。「なんか、たまっちゃって。先生に話を聞いてもらいたいんです。都合いいですか?彩香と希も行きたいって言ってるんですけど……」

本当は別の用事のある日でした。でも、私の脳裏にはすぐさま三人の少女の顔が思い浮かんで、「大人との約束は破っちゃう」ことにしました。中学二年生の冬、大人になりかかっている子たちに無関心ではいられません。それに、この子たちは、私の最後の教え子なのです。定年退職がわかっているのに担任して、一年こっきりでさよならした子たちには、なんだか負い目もあります。

早月は、一年生の時、班長会のリーダーでした。姉御肌の背後に「がんばりすぎると壊れちゃう」一面も持っていて、頼もしくもあり、気がかりでもある子です。

彩香は、昨年、半不登校だった子です。「ちゃんとしなければならない」呪縛と、そうは出来ない現実の自分との葛藤で疲れてしまうのです。今年も欠席がちだと聞いています。

希は、隣のクラスの子だったのでよくわかりませんが、ピアノを弾ける子がいなかった私のクラスのために、合唱コンクールのピアノ伴奏者をかけもちしてくれた優しい子です。

三人の相談ごとって何なのだろう――。

翌日、早月と希がやってきました。彩香は都合が悪くなったとのことでした。何かがひっかかって来られなくなったのでしょう。後日のケアが必要だなと思いました。

さて、やってきた早月と希は、まずは、学校の様子をおもしろおかしく喋り始めました。自分たちが持ってきたお菓子をムシャムシャ食べ、私の用意したお茶をガブガブ飲みながら。

話は部活の心配ごとに進みました。三年生が引退した後、部をしっかり運営できなくて情ないというのです。「あんな三年生に負けないように吹(奏楽)部をちゃんとしていきたいのに、男子がダメ。一年と一緒にフザケてる。部長が頼りない。注意できないんだもん」と、口をとんがらせます。

「部長に毅然としろと言ってもムリ。人間、そう簡単に変わんないよ」「早月さんだってしとやかになれと言われたってムリでしょ?」「部長を変えるんじゃなくて、今のままの部長でもやっていける吹部にするのよ」「部長ひとりが部をシキルんじゃなくて、二年生みんながリーダーになって、リー会でいろいろ相談したらどう? 目標とか、一年のだれを二年のだれが面倒みるとか」

去年の班長会みたい!と早月の目が明るくなりました。そして、三つ目のケーキをパクつきました。

相談て部活のことだったの? と聞くと、進路もかな、という返事でした。

「希は音楽の道かもしれないけど、私は公務員。絶対に正規で勤める」と早月。早月の家は畳屋さんです。希も「音楽はシュミ」と言い切ります。現在のような状況では、進路学習も様変わりしそうです。そう言えば、先々週やってきた高二の子たちも「求人がある職種ということを考えて専攻や大学を決める」と言っていました。やりたいことよりやれそうなことを探る青春か――と思ったものです。

その後、話題はあっちこっちにとんで、喋りに喋った三時間。「なんか喋れちゃうんだよね」と、二人はせいせいした表情で帰っていきました。「また来る。今度は男子も連れて」――。

中学生や高校生がおせんべいをかじりながら愚痴プラスαの話をする――そんな場を提供する近所のオバアサン役をしばらく務めたいなと思っています(大人も歓迎しますのでどうぞいらして下さい)。

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