生活指導 2008年2月号
今、求められるリーダー指導

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生活指導 2008年2月号今、求められるリーダー指導

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2008年1月8日
対象:
小・中
仕様:
A5判 123頁
状態:
絶版
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目次

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特集 今、求められるリーダー指導
今、求められるリーダー指導
井本 傅枝
小学校実践
みんなでクラスをつくっていこう
秋桜 佑子
コメント 秋桜実践について
今、子どもたちがつながる指導を求めて
齋藤 修
コメントを受けて
リーダーって何だろう
秋桜 祐子
中学校実践
詩織とその仲間たち
志木 亜紀子
コメント 志木実践について
集団づくりはリーダーの確立を柱にしてすすむ
栗城 順一
コメントを受けて
生きづらさを抱えた子ども達と共に…
志木 亜紀子
論文
リーダー指導と集団づくりの今日的課題
照本 祥敬
第2特集 憲法をどう教えるか―市民としての学びへ
実践・小学校
島小学校の子ども参加と憲法教育
植田 一夫
商店への思い
倉持 利江子
実践・中学校
「立憲主義」と「個人の尊重」で憲法と出会う
池田 憲一
「若者ことば」で憲法9条を
松原 憲治
論 文
憲法教育の新たな展開
子安 潤
今月のメッセージ
もうひとりの自分
藤木 祥史
【特別寄稿】特別支援教育への取り組み
道徳的責任と下からの道徳
城丸 章夫
私の授業づくり・道徳 (第11回)
小学校/子どもの作文を使っていじめを考える
古関 勝則
中学校/みんなで決めて みんなで守って みんなで創りあげる
千坂 朋広
実践の広場
学級のイベント
学級で生まれた活動を学年・学校を巻き込んだ活動に!
久留島 理夫
学年・学校行事
みんなで記録を残そう
八木 清
学びの素材
夜間中学から学ぶ
中井 康雅
子どもの生活を見る
昔の遊びを通して
手島 淳
部活動・クラブ活動の工夫
女子テニス部の指導
菊地 敬三
心に残る子どもとの対話
原点を思い出させてくれた言葉
上田 慶
手をつなぐ―親と教師
挫折から学んだこと
福田 幸子
掲示板Y・O・U
三浦 奈津子赤木 勇太
ホッと一息・コーヒータイム
私のオフタイム
中村 哲也
マンガ道場
猪俣 修
案内板 集会・学習会のお知らせ
教育情報
教員評価と成果主義賃金の行方
田代 高章
北から南から
各地の基調提案 福岡
楠 凡之
〜〈全生研福岡支部・2007年度基調報告〉いじめ・暴力を乗り越える子ども集団づくり〜
読者の声
12月号を読んで
投稿論文
〈滝花論文に応える〉集団づくりの改革
折出 健二
〜理論は照合リストではない〜
全生研の窓
編集室だより
編集後記
大和久 勝

今月のメッセージ

もうひとりの自分

京生研 藤木 祥史


「もうひとりの自分」という言葉に出会ったのは、1970年代後半の校内暴力期のことである。この言葉と出会ったからこそ、今までやってこれたと思う。

非行と向き合うとき、目の前で荒れ狂う子どもではなく、その裏にある、俺だってまっとうに生きていきたいと願う「もうひとりの自分」を信じて語りかける。徹底的にこの立場に立ちきると、不思議なことに、「もうひとりの自分」の声が聞こえてくる。

眉を剃り、パーマをあてて、特攻服を着たK男が「高校受ける」と言ったのは中3の2学期だった。「ほな、べんきょうしよか」と言うと、「勉強はせえへん、受験はする」と答えた。普通ならあきれて小言のひとつも言って終わるのだろう。しかし、これはもうひとりのK男の言葉だと思えた。すぐさま三ヶ月分の学習計画をつくり、問題集を買って家に行った。K男は無反応だった。

一月になってK男はバイク事故で入院した。私はチャンスだと思って、今度は二ヶ月分の学習計画と問題集を買って病院に行った。今回も問題集は開かれることなくどこかに消えた。

私学入試が終わった二月の中旬、一ヶ月分の計画と薄い問題集を用意してK男の家に行った。今度は少し開いて中を見た。もうひとりのK男が動き始めたように感じた。勇気がわいた。そして、公立入試の一週間前、リーダーの洋一と一緒にK男の家に行った。今度は入試直前4教科問題集を買っていった。洋一と一緒に少し取り組んだ。

この間、暴走族の集まりに参加するK男を連れ戻しに、夜の繁華街に出向いたこともあった。暴走族が集まる店の前で、中に入ってからどう言ったらいいか何度もシミュレーションをした。「K男!はよ帰って勉強しよや!」これに決めた。これなら周りと喧嘩にならないし、話も出来ると思った。何度も問題集を買っていて良かったとも思った。(店に入ったら、すでに移動していて空振りだったが……)

「もうひとりの自分」という言葉に出会ってから、どこまでも子どもに寄り添えるようになった。どんな局面でも切り抜けられる勇気を得た。

あれから約三〇年が過ぎた。T男には、私が語りかけるべき「もうひとりのT男」がない。育っていないと思った。仲間への乱暴な振る舞い、聞くに堪えない暴言、注意する教師にも「うるさい」「向こういけハゲ」「キモイ死ね」の連発で指導を拒否するT男である。「もうひとりの自分を信じて語りかける」信念が揺らぎながらの日々を送った。

教師の指導は受け付けないT男も、生徒同士の話し合いには参加した。T男が引き起こすトラブルは、紛争委員会と名付けたクラスの有志(関係した生徒とリーダー候補が集まる)で解決をはかった。これまで一年半の間に、大小併せて三〇回くらいは話し合ってきた。解決の中身はすべてクラスに報告してきたし、四、五回はクラス全体でも討議してきた。それらの話し合いを一度も逃げ出したことはないし、むしろ嬉しそうでもある。

今、私はT男の中に「もうひとりの自分」を育てているのだと思えてきた。かつて、高校は行きたいが、勉強に向き合うのが怖い、ひ弱な「もうひとりの自分」を励ましていたが、私とクラスの仲間が育てるT男の「もうひとりの自分」は、育ち始めたらたくましいかも知れない。そんな気がしている。

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