著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「自学力」がつくと、学力が着実に伸びてくる!
京都女子大学教授井上 一郎
2014/7/28 掲載
 今回は著者を代表して、井上一郎先生に、新刊『学力がグーンとアップする!自学力育成プログラム』について伺いました。

井上 一郎いのうえ いちろう

奈良教育大学助教授、神戸大学教授、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官・学力調査官を経て、現在京都女子大学発達教育学部・大学院発達教育学研究科表現文化専攻教授。国語教育学者。「全国国語教育カンファランス」「全国読書活動研究会」「国語教育公開講座」等を主宰。「小学校全国国語教育連絡会」会長。『子ども時代』『教師のプライド』等のエッセイ集を刊行。主な著書・編著書として、『読む力の基礎・基本』2003、『誰もがつけたい説明力』2005、『読解力を伸ばす読書活動』2005、『書く力の基本を定着させる授業』2007、『話す力・聞く力の基礎・基本』2008、『知識・技能を活用した言語活動の展開』2009、『言語活動例を生かした授業展開プラン低学年』『同中学年』『同高学年』2010、『学校図書館改造プロジェクト』『記述力がメキメキ伸びる!小学生の作文技術』2013他。いずれも明治図書。

―ズバリ、「自学力」とはどのような力でしょうか。

 「自学力」とは、自らの課題に基づいて解決や解明を図る自主的な学習力を意味します。それは、各教科等に通じる自ら学ぶ学習力を基盤に、各教科等の特色に応じて学習を進めることができる学習力です。義務教育段階において習得すべき学力には、各教科等の基礎・基本となる知識・技能に加え、今述べたような、学習者が主体的、意欲的に学習する学習方法を身に付けることの二つが含まれているのです。実際には、課題を解決したり、解明したり、創造したりする学習過程に必要な言語活動力、各教科等の独自な学習操作、思考力・表現力・情報機器を操作する能力等多様な内容が含まれます。

―なぜ、言語活動を充実させる中で「自学力」が育成されるのでしょうか。

 言語活動の充実は、〈思考力、判断力、表現力等をはぐくむ〉、〈基礎的・基本的な知識及び技能の活用を図る学習活動を重視する〉、〈言語に関する能力の育成を図る〉等の企図の基に提言されたものです。言語能力を高めることが中核となる言語活動の充実は、本書で述べるような取り立てて行う自学力の育成の中に統合されて、いっそう強固なものとなるのです。

―白幡小学校では、学校全体で「自学力」育成のプロジェクトに取り組んでいますね。子どもたちに「自学力」が身に付いたことで、それまでと一番変わった点は何でしょうか。

 自学力の育成によって学力が着実に伸びてきたことが挙げられますね。毎年毎年、学力調査の結果が向上しています。各教科等の知識・技能を生かし、活用する能力の基盤である記述力や思考力が高度なものとなっていることは、授業の様子を見た人が必ず驚くところです。また、質問紙等での調査項目についても、バランスのよい方向に向かっています。何より、自主的に動く子どもの様子がほほえましく、かつ頼もしいかぎりです。本校の取り組みに関わって既に6年間となりますので、児童たちにとっては、この学習形態がすべてということになります。教師主導によってあくびしたり、よく分からなくてもノートを写すだけのようなことは決してありません。

―「自学力」は、一つの教科だけでなく、すべての教科において取り組むことが大切と本書にも書かれています。「自学力」を育成するカリキュラムづくりをする際に、まず何から取り掛かればよいでしょうか。

 各単位時間の授業改善に着手することが第一でしょうね。学習計画によって見通しを与え、学習のめあてや振り返りを児童自身に進めさせること、個人で学習することとグループやクラス全体の学習によって思考を深めさせることとを、ステップを踏んで展開することが必要でしょう。

―最後に、全国の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 自主的な学習力は、すべての子どもにとって朗報となります。現在のように、教師が中心となって展開する授業では、活躍する子どもが限られるとともに、理解できる子どもの範囲も限られます。それは、長い間に子ども間の学力差を固定してしまう結果を生み出してしまいます。どうか、本書での取り組みを参考に学校改革を押し進めてほしいと思います。情熱ある教師は、すぐにも本書の問題提起に呼応して立ち上がってほしいと熱望します。すべての子どもを大切にするために。

(構成:木村)
コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • れんじ
    • 2014/8/2 0:46:53
    白幡小学校の教育実践研究のエキスを学ぶことができる名著です。子どもたちの自学力は学習だけではなく、生活全般にも実力を発揮し、自尊感情の育成にも寄与します。是非とも全国の先生方、教育関係者の皆様に読んでいただき、目の前にいる子どもたちの実力をさらなる向上を期待してご実践いただきたいです。
    • 2
    • 名無しさん
    • 2014/8/28 23:04:13
    研究自体の革新的な面と、子供達がもつ能力の育成に関しては納得いく。
    しかし、現場の教員の仕事を増やしている。
    研究のデータを取るために、通常の業務以外に研究関連の仕事が爆発的に増大した。
    現場は研究職のための個まではないことを付け加えておく。
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