著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「本音」を語り「本音」でつながることで思春期を乗り越える
授業のネタ研究会代表河原 和之
2014/4/4 掲載
 今回は河原和之先生に、『「本音」でつながる学級づくり 集団づくりの鉄則』について伺いました。

河原 和之かわはら かずゆき

東大阪市の中学校に37年勤務。現在、立命館大学、聖トマス大学、関西大学中等部非常勤講師。中学校教科書『中学生の公民』(帝国書院)編集協力者。授業のネタ研究会常任理事。社会系教科教育学会理事・経済教育学会理事。近現代史教材・授業づくり研究会事務局長。NHKわくわく授業『コンビニから社会を見る』出演。NHK教育テレビ『世の中なんでも経済学』『世の中なんでも現代社会』番組委員。著書に『スペシャリスト直伝! 中学校社会科授業成功の極意』『100万人が受けたい! 中学社会』シリーズ『歴史リテラシーから考える近現代史 ―面白ネタ&「ウソッ」「ホント」授業―』『<活用・探究力を鍛える>「歴史人物42人+α」穴埋めエピソードワーク』などがある。

―今回の書籍は、『「本音」でつながる学級づくり 集団づくりの鉄則』ということで、先生が取り組まれてきた学級づくり・集団づくりの取り組み・ポイントと、具体的な生徒たちとの交流が描かれています。本書のねらいと、そこに流れる先生の想いについて、教えて下さい。

 思春期は、つらく、そしてせつないもの。すべての生徒が何らかの悩みをもち、誰にも相談することもなく、一人で抱え込んでいる。面白くもないのに「大声で笑い」「ギャグをとばす」ことでコミュニケーションをはかり、一人になると“寂しい”顔をしている。みんなで何かを取組み、感動を“共有”し、“共通”の悩みを語り合い、お互い“共感”することから、この困難な時期を乗り越えていく。そのために、子どもたちに、自立のためのちょっとした援助をする!これが、私がみなさんに伝えたいメッセージです。

―先生は壮絶な“荒れ”も経験され、障がいのある子や不登校の子との密な関わりも多く経験されてきたことが本書の中にかかれています。それらの関わりの中で、先生を支えてきた“信念”は何でしょうか?

 障がいのある生徒、不登校の生徒、荒れた生徒など、本書では課題のある生徒がいっぱい登場します。すべて、何らかのささえや支援が必要な生徒です。一方で、勉強もでき、家庭的にも恵まれた生徒もいます。しかし、こんな生徒もいろんな課題をもっています。いろんな課題をもつ生徒が、かかわりながら、お互いが学んでいくことが、学校教育の醍醐味です。
 教師が、率先して、その課題の克服するために関わっていくことで、まわりの生徒の価値観も変化していきます。学校は、一人一人が“学ぶ”教材(?)です。これが、私の、課題のある生徒にかかわる“信念”です。

―本書の中では、仲間づくりに有効な「ワンワールド」など、豊富な学級経営活動ネタが、学期ごとに分けて紹介されています。人間関係・コミュニケーションを高めていく活動の目的とは何なのでしょうか?

 人は誰もが自分のことを知ってもらいたいし、他人と共感したいと思っています。「一人のほうがいい、楽だから!」などと言う生徒がいます。それは集団の中にいると“ツライ”からです。だから、私は、教師が意図的に、“自分のことを語り”“他者を知る”機会をつくることが大切だと考えています。そのためのワークショップでありゲームなのです。
 単に、楽しいだけではなく、自己開示ができ他者とつながりあえる、そんな人間関係、コミュニケ―ションを高めることができる活動を紹介しました。

―子ども達をひきつけ、学級・集団をつくっていくには、魅力的な授業づくりも、必要不可欠です。先生は『100万人が受けたいウソ・ホント?授業』シリーズの中で、魅力的な授業、教材を数多く提案されていますが、これらの魅力的な教材ネタはどのようなところから生まれるのでしょうか?

 「勉強できなくても、いい子だからいいじゃない」という、なんとなくわかるけど…。でも…。という言葉があります。学力は、いろんな人生の困難や、課題を乗り越えていくのに必要なものです。また、学力は自尊感情を高めます。一日、学校で、“わからない”授業をずっと受けていたら、自分が“イヤ”になり、他人を“イジメ”たくもなります。そんな生徒にしたくない!すべての生徒が活躍でき、すべての生徒が生き生きできる場をつくる。これが私の授業づくりと学級づくりの原点です。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 退職してから、多くの卒業生と飲み会やランチタイムを楽しんでいます。生徒と教師じゃなく、大人と大人です。そうなると、教師は“教える人”ではなく、お互いが“学ぶ”関係になっています。必ず、当時の思い出話しがでてきます。あの“言葉”、あの“行事”、あのときの“怒り”が、この人に影響を与えたと、“教師冥利”を感じる瞬間です。
 毎日、事件がおこり生徒指導でへとへとになるときもあります。学校行事も疲れます。でも、その一つ一つが生徒を育て、深い関係でつながっていく関係性を培います。“たかが教師”ですが、う〜ん!やっぱり“されど教師”です。

(構成:及川)

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