- まえがき
- CHAPTER1 たくさんの経験をする
- 01 全体像の把握に近づく
- 02 多くの学年を経験する
- 03 多くの校務分掌を経験する
- CHAPTER2 一芸を身につける
- 04 「在り方」を意識する
- 05 分を知る
- 06 自分に厳しい眼差しをもつ
- CHAPTER3 時間と労力と金を惜しまない
- 07 十年後を考える
- 08 コスパを考えない
- 09 先の見えない方を選ぶ
- CHAPTER4 学びの対象をしぼらない
- 10 柔らかい自我をもつ
- 11 外に目を向ける
- 12 ピン芸人を目指す
- CHAPTER5 よく学び、よく遊ぶ
- 13 チューニング能力を高める
- 14 教師冥利に尽きる遊びを想定する
- 15 仕事を道楽と心得る
- CHAPTER6 先輩教師にかわいがられる
- 16 場の雰囲気を共有する
- 17 適切にいじられる
- 18 仕事を通じて仲良くなる
- CHAPTER7 スキルを身につける
- 19 自分なりの語りを身につける
- 20 ニッパチの指導力を身につける
- 21 その年の目標をもつ
- CHAPTER8 他者に対する想像力をもつ
- 22 自分の世界観を疑う
- 23 時代への想像力をもつ
- 24 他者性を意識する
まえがき
こんにちは。堀裕嗣と申します。四十九歳です。
実はここだけの話なのですが、僕にもかつて二十代の頃がありました。勢いがあって、口が悪くて、世界が自分を中心にまわっていて、すぐに人を責めて、すぐに人を馬鹿にして、だけど実践研究だけはまったく手を抜かずに資料だけは百枚も二百枚もつくって、研究会で三枚くらいの資料で発表する人を見ては「まじめにやっていない」と断罪して、まったくいけすかないヤツでした。もしも当時の僕がいま自分の同僚にいたら……、でも、やはり「こいつは見込みのあるヤツだ」と可愛がるでしょう。
若者で有望なヤツというのは、須(すべから)く、いけすかないヤツであることが多いように感じています。教師という職業は、若いうちからと言いますか最初から一国一城の主になれる稀(まれ)な職業ですから、その分、一人で突っ走りやすい職業ですし、若いうちから自分はいっぱしの者だと勘違いしやすい職業でもあるわけです。
しかも、能力が高くて、将来大物になる可能性を秘めている教師ほどそういう勘違いに陥りやすい。長年、若手教師を観察していて感じるのは、教師の成長には、その勘違いを謙虚に戒めて成長する場合と、その勘違いに実質を伴わせて勘違いではなくしてしまう場合と、二つの道があるということです。前者の道は人間関係を重視しながらストレスに見舞われる日常を過ごすことになりますし、後者の道はだれも文句を言えないほどの実績を上げ続けるわけですから、血の滲むような陰の努力が必要になります。いずれにせよ、若者の道は「茨の道」なのだということでしょう(笑)。
僕の教員人生は自分で言うのも何なのですが、後者の道を二十代・三十代で、前者の道を四十前後から意識し始めたという感じです。いまは五十歳を目前にして、バランス感覚をもってほどほどに……を信条に生きています。とても楽です。
でも、よく思うのは、若い頃にがむしゃらにやった「溜め」があるから現在(いま)があるのだな……ということです。若い頃から「ほどほどに感覚」で教師をやっていたら、いまごろは自信を失って毎日が地獄だったかもしれない、周りに迷惑ばかりかけていたかもしれない、そんなことを感じるのです。
読者の皆さんは、おそらくいま、若手真っ盛りのはずです。どうぞ、自分なりの「茨の道」を突き進んでください。本書があなたの「茨の道」を少しでも充実させることに役立つなら、それは望外の幸甚です。
/堀 裕嗣
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