- 特集 新しいリーダー・リーダーシップ―子ども集団づくりと学校づくり(2)―
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今月のメッセージ
「選ぶ」「選ばれる」を考える
指名全国委員 植 松 保 信
今日、私の住んでいる市の市議会議員選挙が告示されました。定数を五人オーバーしての選挙戦突入です。一週間の選挙戦の後、市民は主権者として市政を託す人に投票します。しかし、市民は何を決め手に投票するのでしょうか。二七人の立候補者のうち、政党からの立候補者は四人、残りの人はすべて無所属です。選挙公報を熟読しての選択なのか、政党支持での選択なのか、演説会を聞いての選択なのか、はたまた地縁・血縁での選択なのでしょうか。多くの人が政策や公約を決め手に投票するのでしょうか。一方立候補者は、幅広い市民の声や要求を聞き、それをもとに政策や公約として訴え、当選後はその実現のために奮闘することになるのでしょう。しかし、これも心配です。
児童会役員選挙の提案をすると、必ず主張される反対意見があります。
「人気投票になって、本当にリーダー的な子どもが選ばれない」
「方針で選ぶ選挙にならないで、人気や友達関係・兄弟などのつながりで選んでしまう選挙になる」
「大規模校なので、立候補者の顔も名前もわからない子どもが多い。だから、選ぶのが難しい」
「小学校の子どもに選挙は難しいのではないか。中学校に行ってからでいい」
「落選する子どもがかわいそうだ。そのフォローが大変だし、難しい」
私は思うのです。確かにそのような状況にあることが多いし、そういう心配もわかるのですが、だからといってその状況をそのままにして、そのことを選挙反対の理由にしていいものだろうかと。
このように考えて議論を進めると、その学校の課題が明らかになってきます。たとえば、「学年が違うと顔も名前もわからない子どもが多い」という課題が明らかになり、異学年交流(兄弟学級活動やたてわり班活動など)の必要性が合意されていきます。また、リーダーを選ぶにはどんな方法がいいのか、学級ではどんな方法でやっているのか、選挙という方法が悪いのかなどと、話し合いを続けていきます。結論を急ぎません。毎年その時期になると話し合います。そうして、選挙の指導を積み重ねることが、前述のような状況を克服し、本当のリーダーシップとフォロアーシップを育てることになるのではないかと合意できたとき、児童会役員選挙を導入できるのではないかと思うのです。
このように、子どもの現実や学校の実態をもとに話し合うのと同時に、私は憲法と教育基本法をもとに提案します。日本国憲法前文「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、…中略… ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。以下略…」を取り上げ、そして教育基本法前文「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。以下略…」と第一条(教育の目的)「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、…中略… 自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」、第八条(政治教育)の第1項「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない」を引用しながら、選挙の意義や選挙を指導することの必要性を訴えます。
さきの選挙に対する反対意見のような状況は、私たち大人社会にもあることではないでしょうか。こう考えると私たちは、「憲法の理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」という教育基本法前文を重く受けとめ、小学校でも発達段階に応じた選挙の指導をきちんとする必要があるのではないかと思うのです。
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- 明治図書