- はじめに
- [T] キャリア教育の進め方
- 1 キャリア教育,こう捉える
- 2 職業観・勤労観を育てるプログラムとは
- 3 キャリア教育のための新教科の開発
- [U] 現代社会を身近にするための新教科
- ―アントレプレナー・サイエンス・ランゲージ―
- 1 新教科の考え方
- 2 新教科の実践事例
- アントレプレナー
- やさしいくらしをつくろう/使える商品開発/あたらしい八ッ橋を開発しよう/職場体験に行ってきました
- サイエンス
- 動きの科学/見えない動きの科学/物体の動きを予測しよう/ビンゴゲームの科学/風力発電機の性能を測定しよう
- ランゲージ
- 〈Jランゲージ〉百人一首の魅力を探る/ストーリー性のある「詞」を作成し発信しよう
- 〈Eランゲージ〉いろんな工夫をして仲よくなろう/テーマを選んでディベートしよう
- [V] 各教科で取り組むキャリア教育
- 1 各教科にキャリア発達支援の視点を取り入れる
- 2 キャリア教育を中核にした各教科のカリキュラム
- 3 各教科の実践事例
- 国語科
- 大事なことをたしかめよう/人・自然・社会を見つめて書こう/調べて報告しよう
- 算数・数学科
- 1000までの数/平面図形(作図)/図形と証明
- 社会科
- きょう土をひらく/古代までの日本/かしこい消費者になろう
- 理科
- ものの温度とかさ/土地のつくりと変化/物質と化学反応の利用
- 英語科
- 計算できるかな?/どうしたの?/英語で報告しよう
- 家庭科
- 見つめよう! 家庭生活/見直そう,わたしの食生活/子どもの成長に関わる職業について
- 図画・工作科
- 心を届けるラッピングシートのデザイン
- 体育科
- 「投げる」ことを楽しもう!
- 道徳
- 自分のかがやき/自らの生き方を探求する
- 特別活動
- 学年集会
- [W] 取り組みの成果とこれからの課題
- 資料─アンケート・通知票の記述より
- 執筆者一覧
はじめに
本書は,京都教育大学附属京都小学校と京都中学校が共同で取り組んできた研究開発の成果をまとめたものである。平成15 年度より3 年間,文部科学省の研究開発指定を受け,「9 年制義務教育学校の設立に向けた小・中学校9年一貫教育システムの確立に関する研究開発」をテーマに,小・中連携教育から小・中一貫教育を展望する新しい義務教育学校をデザインするものとして,教育課程の研究開発だけでなく,学習組織や児童・生徒集団編制,教職員組織や教授組織,また学校運営組織や施設・組織の共用,拡充に関する研究開発を進めてきた。
小・中連携教育は全国各地で様々な取り組みが進められてきているが,その形態や教育内容を問う以前に,その必要性認識を明確にすること,そしてそれに基づいた実現課題を教育課程編成や子どもの教育活動,教職員組織や学校運営組織等において具体的に検討することが求められている。本校での取り組みでは,9年間の義務教育の枠組みを前提に,子どもの成長発達や教育課程の構造,教員の専門性等から4−3−2の学習組織を設定したが,それ自体固定的なものではない。子どもの実態や社会的な教育課題に対応すべく,9年間を1つの連続したものとして捉え,その中で弾力的に学習集団を編制するところに小・中一貫教育の意義と意味があると考えている。そして弾力的に接続される9年間を枠組みとすることによって,一人一人の子どもが自己の成長課題を自覚して,主体的・自律的に自己実現を図っていくことが可能になるとの認識から,この9年間を「キャリア教育」として展開することを特徴としている。
「9 年間義務教育学校」という新しい制度設計をめざしつつ,子どもの主体性,自律性の確立と,それによる意思決定能力や社会適応能力の形成を「キャリア教育」として図ることが本研究のねらいであり,その実践的取り組みをまとめたものが本書である。この遠大な課題に対して3年間の取り組みは極めて小さなものであり,本書で提示できているものも設定した課題にとって端緒的かつ仮説的なものに止まっているかと思う。ただ本研究はさらに3年間の継続を予定しており,本書で示す成果をいっそう確かなものにしていきたく考えている。そのために本書について忌憚のないご批判,ご叱正を賜われれば幸いである。
最後に,本研究を進める上で,仙ア武先生,亀井浩明先生をはじめとする運営指導委員の先生方,また様々な形でご指導,ご支援いただいた文部科学省,京都府・京都市教育委員会や京都教育大学の関係各位には,この場を借りて御礼申し上げたい。そして本書の刊行に当たってご尽力をいただいた明治図書の樋口雅子氏,阿波理恵子氏に対して,両校の教職員を代表して謝意を表したく思う。
平成17年12月
京都教育大学附属京都小学校・中学校校長 /堀内 孜
キャリア教育の理念を平常の教科の授業にちょっと取り入れたら、立派なリテラシー育成になると言うのが、本書を読んだ感想です。
学力低下論争で語られてこなかった、生活知に結びつく学力保障のあり方について、非常に示唆的な内容でした。
どの時間を使う? 効果はあるのか? 現場でははっきりしない
ことが多すぎます。
この本で述べられているキャリア教育の考え方や、教科の中で
実践するやり方は大いに参考になりました。
キャリア教育のための新教科も、私個人としてはとてもおもしろいと
思います。公立の学校で、附属の学校と丸々同じように取り組む
ことは難しいかもしれませんが、何かやってみたいという意欲を
いただきました。