- はじめに
- T ここまで進んでいるタバコの低年齢化
- 一 中学生・高校生の喫煙経験率は?
- 二 日本は「喫煙者の天国」である
- 三 小学校で禁煙教育をきちんと行う
- U タバコに手を出さない子を育てるために、何を教えるか
- 一 低年齢からの喫煙は、深刻な害をもたらす
- 二 タバコを止めるのは難しい
- 三 周りの人にも害を与える
- 四 最初の一本に「嫌だ」と言え
- 五 広告のウソを見抜け
- 六 家庭にも広める
- V 総合的な学習の時間で、禁煙教育を行う
- 一 年間一時間で十分か?
- 二 総合的な学習の時間に行う
- 三 「二〇歳になった時タバコを吸っていない」という自信がある人?
- 四 保護者の反応「タバコの授業を再び行ってほしいと思われますか?」
- W 授業実践
- 一 タバコは全身病
- 二 こんなにひどい、副流煙の害
- 三 「タバコを吸ってみろ」と誘われたら
- 四 禁煙ポスターを描こう(七時間)
- 五 タバコの広告のウソを見抜け
- 六 酒井式シナリオ「禁煙ポスター」(九時間)
- X 薬物乱用防止の授業
- 一 薬物乱用防止の授業では何を教えるか
- 1 薬物乱用の恐ろしさを教える
- 2 依存性があることを教える
- 3 罪が重いことを教える
- 4 断り方も教える
- 二 薬物乱用防止の授業実践
- おわりに
はじめに
生活習慣病の低年齢化が問題になっています。
二一世紀の教育の在り方を示している新学習指導要領と、今までの学習指導要領を比べてみても、そのことがよく分かります。
まず、今までの学習指導要領の方から紹介します。
(3)病気の予防について理解できるようにする。
イ 生活行動や環境が主な要因となって起こる病気の予防には、望ましい生活習慣を身に付けること、住まいや衣服を整えることなどが必要であること。
第9節 体育 [第5学年及び第6学年] G保健
次に、新学習指導要領の方を紹介します。
(3)病気の予防について理解できるようにする。
ウ 生活習慣病など生活行動が主な要因となって起こる病気の予防には、栄養の偏りのない食事や口腔の衛生など、望ましい生活習慣を身に付けることが必要であること。また、喫煙、飲酒、薬物乱用などの行為は、健康を損なう原因となること。(傍線:筆者)
第9節 体育 [第5学年及び第6学年] G保健
新学習指導要領では、「生活習慣病」という言葉が明確に書かれているように、生活習慣病の予防について、それまでと比べて強調されていることが分かります。
平成八年の厚生省の調査では、生活習慣病のため病院に受診している患者数の合計は千四百万人以上に上っています(平山宗宏・村田光範共著『生活習慣病』〈少年写真新聞社〉)。
このまま放置すれば、患者はさらに増加するでしょう。だから、生活習慣病の予防が強調されているのです。
生活習慣病は、食生活の乱れ、運動不足、喫煙・飲酒の常習化など、子どもの時からの生活習慣の乱れに発病の原因があることが明らかになってきています。
本書は、その中の一つ、喫煙に焦点をあててまとめたものです。
タバコは、「史上最大の発ガン物質」と言われています。タバコの煙の中には、約四〇〇〇種類の化学物質が含まれており、約二〇〇種類の発ガン物質や発ガン促進物質が含まれているからです。
よって、喫煙が常習化してしまうと、非喫煙者に比べ、喉頭ガン、口腔咽頭ガン、肺ガン、肺気腫、心臓病など様々な病気にかかる可能性が高くなります。
特に、低年齢からの喫煙は、害を深刻にさせます。子どもの頃の体はまだ未成熟です。そのため、タバコの発ガン物質などを取り込みやすく、ガンの芽を早くから育ててしまうことにつながってしまうからです。
日本は、欧米と比べてタバコ対策が遅れています。
日本ではタバコの広告が週刊誌や雑誌、電車の中吊り、町や駅の看板などにたくさんあります。タバコの自動販売機も多くあります。薬局の前に自動販売機が置いてあるところもあります。大人の喫煙者も多くいます。
日本では、子どもたちが喫煙を始めやすい環境になっているのです。
このような環境の中では、小学校からの禁煙教育が大切です。そして、
タバコに手を出さないようにさせることが大切です。
本書には、禁煙の授業で何を教えるかについて紹介してあります。授業づくりの視点になると思います。
また、追試できる禁煙の授業が、資料とともに具体的に紹介してあります。友達にタバコをすすめられた時の対処法を考えさせたり、タバコの広告を分析させたり、禁煙ポスターを描かせたりするなど、一歩踏み込んだ禁煙の授業も紹介してあります。さらに薬物乱用防止の授業も紹介してあります。
体育の時間をはじめ、総合的な学習の時間に活用していただければ幸いです。
一人でも多くの子にタバコの害を教え、タバコに手を出さないようにさせてほしいと願っています。さらに、子どものうちから良い生活習慣を身に付けさせてほしいと願っています。
本書は、明治図書教育書編集部編集長の江部満氏の力強いおすすめで、まとめることができました。厚くお礼を申しあげます。
二〇〇一年六月 /上木 信弘
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- 明治図書