理数脳をつくる授業 理科&算数4
“理数の思考回路”をつくる導入発問

理数脳をつくる授業 理科&算数4“理数の思考回路”をつくる導入発問

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理科と算数のコラボ研究から探る導入発問のヒントが満載!

理数脳をつくるにはすぐ答えが出るQがいいのか、ナゾかけ的Qがいいのか。導入発問としては「電気を通す・通さない」「どちらが重い?」など様々な導入発問の具体例を紹介しながら算数と理科でつくる理数的思考の基礎基本を提示。


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ISBN:
978-4-18-984443-3
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小学校
仕様:
B5判 64頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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特集 “理数の思考回路”をつくる導入発問
医療最前線 「うつ」 /森田 豊
提起文 「曖昧」と「明確」の導入発問 /佐々木 昭弘
理科
実践@ なるほど!が広げる世界
―6年「てこのしくみとはたらき」― /大井 隆
実践A ものづくりに取り入れる算数的活動
―6年「てこのはたらき」― /佐藤 陽一
「導入発問」に関する小ネタ
てこのきまりをイメージするための導入 /鷲見 辰美
調べ活動における課題意識を高める導入 /鷲見 辰美
おもいっきり体験!不思議だと思う“科学の芽”が出る導入@ /上田 享志
おもいっきり体験!不思議だと思う“科学の芽”が出る導入A /上田 享志
同じうすい物なのに…?―3年「明かりをつけよう」― /白岩 等
あれっ,本当にみんな同じ月なの…?―4年「月と星」― /白岩 等
「どちらが重い?」からの導入〜天秤の歴史も〜 /込山 宏
人類と月へのかかわりを導入に /込山 宏
算数
実践@ 数の観察と帰納的な見方が本質に迫る
―6年「度数分布表の導入」― /盛山 隆雄
実践A 「なぜ」…現象のおもしろさから数理へ
―5年「体積」― /千々岩 芳朗
「導入発問」に関する小ネタ
4年「垂直平行と四角形」あれ?曲がっているよ! /小松 和久
「見通し(予想)」を自ら確認し直す態度を育てるために /熊谷 純
飛べ!ジャイロペットボトル!!〜感覚的な発問で子どものもつ算数ツールを引き出す〜 /高瀬 大輔
資料提示は順番が命! /大桑 政記
『速さ』〜子どもたちの予想を裏切るチョロQとバスの速さ〜 /江橋 直治
関数の思考回路を育てるために /種市 芳丈
敷き詰めてびっくり!!全ての四角形は敷き詰められる!〜第4学年「いろいろな四角形」での敷き詰めの活動〜 /青木 弘明
ゴンドラの数はいくつ?〜角度を基にして求める〜 /舘山 英貴
第1回理数脳セミナー全国大会報告 /小松 信哉
リレー連載T 授業で育つ科学する言葉
〈理科〉まずは,いかに素朴概念を引き出していくか? /増田 和明
〈算数〉「式に表す・式を読む・式を変形する」で思考力・表現力を伸ばす /細水 保宏
生活科好きにする教材紹介
1年 「いっしょにあそぼう」 /木村 光男
2年 「昔の遊び」 /内藤 博愛
理科好きにする教材紹介
3年 「植物を育てよう」(ジャンボヒマワリ) /山元 一哉
4年 「もののかさと温度」 /仁科 篤弘
5年 「ふりこの運動」 /八百板 恵理子
6年 「季節と生き物のようす」 /菅野 望
算数好きにする教材紹介
1年 「大きさくらべ(かさくらべ)」 /大野 桂
2年 「三角形と四角形」 /池田 照美
3年 「重さ」 /赤川 峰大
4年 「垂直と平行」 /石川 和彦
5年 「平行四辺形と三角形の面積」 /金澤 英子
6年 「起こりうる場合の数」 /古久保 功
リレー連載U 理数というけれど 理科と算数 何が同じなの?
理科と算数ここが同じ,ここが違う
〈理科〉 「わかったつもり」の修正過程に違いが表れる /森田 和良
〈算数〉 単元「重さ」について考えてみたこと /橋本 良平
理科的算数授業のすすめ
〈理科〉 不思議な現象を提示する /鈴木 健二
〈算数〉 “観察”を生かして問いをつくる〜観察によって表出する子どもの実態のズレを思考の対象に〜 /志田 倫明
算数的理科授業のすすめ
〈算数〉 子どもの問いを引き出す単元の導入の仕方 /齋藤 昭
〈理科〉 数値やグラフで「ものが溶ける」規則性を実感する /奥村 豊美
理数教育への挑戦
授業に生かしたい 子どもが感じとるもの /森本 明
第3回“理数大好き”セミナー報告 /鳴川 哲也
編集長連載
〈理科〉 「算数的理科授業」への挑戦@─理数脳セミナー全国大会 /佐々木 昭弘
〈算数〉 「理数脳セミナー全国大会」「理数大好きセミナー(in福島)」での提案授業 /夏坂 哲志
有識者からの提言
〈理科〉 体験・探検と本物の基礎・基本を /左巻 健男
グラビア /小松 信哉…表2・1
編集後記/ 理数おもしろ導入発問 /冠木 誠…表3/ 次号予告…表4

特集 “理数の思考回路”をつくる導入発問
   「曖昧」と「明確」の導入発問

   筑波大学附属小学校 /佐々木 昭弘


◆昨年の6月,理数教育に取り組んでいる東京目黒区にある不動小学校の校内研修会に,夏坂と出かけた。不動小学校とすれば,本誌を編集している夏坂と佐々木から話を聞けば,今後の研究の方向性を見いだすことができるだろうという期待があったのだと思う。

 しかし,その時の夏坂と佐々木は,理数のコラボ研究をどのような視点で推進していけばよいのか,さらには,どのような研究成果が期待できるのかについても,明確に示すことのできるものは正直ほとんどもっていなかった。ただ,理科と算数それぞれの立場から議論し合う中で,研究すべき方向性や内容を見つけ出したいという熱い思いだけはもっていた。

◆不動小学校の先生方を前に,佐々木と夏坂は,具体的な実践事例を交えながら,現在の理科教育と算数教育が目指す方向についてレクチャーした。

 その時,わたしの理科の事例を聞いていた夏坂が興味深い話をした。


  理科は,違いがはっきりしたものを子どもに提示することから学習がスタートしているような気がする。でも,算数は,違いが曖昧なものを提示することから学習をスタートさせることが多いと思う。


 不動小学校で話した,代表的な理科の実践事例と算数の実践事例を比較してみよう。


理科

 金属棒の真ん中に糸を結びつけ,釣り合わせる。そして,棒の片方を下に折り曲げて,「棒の釣り合いはどうなりますか?」と問う。子どもたちの多くは,「曲げた方が下がる」「釣り合ったまま」と予想する。

(図省略)

 実際に棒の片方を曲げて釣り合いを確かめると,曲げない方の棒が下がることに子どもたちの多くは驚く。

 この現象を,学んだ「てこのきまり」を使って説明することが本時の課題である。子どもたちは,次の式を頼りに考える。


左の棒を傾けるはたらき 右の棒を傾けるはたらき

おもりの重さ×支点からの距離=おもりの重さ×支点からの距離


 左の棒を傾ける働きが大きくなったということは,右の積が小さくなったということであり,「おもりの重さ」か「支点からの距離」あるいは両方の値が小さくなったことを意味する。(ここで言う「おもりの重さ」とは棒の重さを指す)

 棒の重さは,たとえ形を変えても変化しないことは3年生で学習済みである。つまり,右の棒の「支点からの距離」の値が小さくなったということになる。ここまで追究が進むと,棒を曲げるということは,曲げた棒の部分が支点に近づいたという,今まで見えなかったことが見えてくる。


算数

 コンピュータを使って,2台のスクーターが1台ずつ走る様子を子どもたちに見せる。そして,「どちらのスクーターが速いですか?」と問う。(2台のスクーターは,どちらも等速運動をしている)

(写真省略)

 すると,子どもたちから「別々じゃなくて一斉にスタートさせればわかる」という考えが出てくる。そこで,一斉にスタートさせるのだが,どちらのスクーターが速いのかやっぱりわからない。スタートする場所も違うし,走っている距離も違うからである。当然,子どもたちからは「スタートする場所を同じにしなくちゃだめ」という意見が出てくる。また,「スタートの場所は違っていいけど,走らせる距離を同じにして,最初に止まった方が速いスクーターだとわかる」という考えも出てくる。

 同じ道のりを走る場合には短い時間でゴールに到着した方が速い。また,同じ時間内では長い道のりを進むことができた方が速い。このことは,子どもたちが日常生活の経験を通して既にわかっていることであり,そのことを曖昧な速さ比べを通して引き出したことになる。

 次に,車を走らせる。上の車は8目盛り分を5秒で,下の車は12目盛り分を8秒で進むようにコンピュータで設定してある。最初は目盛りのない状態で,設定してある時間も教えないで,別々に走らせる。だから,たとえ同時に走らせても速さの違いはわからない。

 すると子どもたちから,次のような考えが出てくる。「並んで走るある所に直線を引いて同じ距離にして,その間を進む時にかかる時間をストップウォッチでそれぞれ測ればいい」。これは,既に子どもたちがもっている「道のりをそろえて比べればよい」という考え方に結び付けることができる。また,「上の車が5秒でゴールに着くことがわかったら,下の車が5秒で進んだところに印をつければよい」という発想もわく。これは,「時間をそろえて比べればよい」という考え方に結びつく。

(写真省略)

◆これまで,理科教育では「事象の提示」をはじめとした導入指導の方法が研究されてきた。授業の中で子どもたちが比較するのは,「燃える・燃えない」「磁石に引きつけられる・引きつけられない」「成長している・成長していない」など,目に見えるはっきりとした事物・現象の違いであり,その違いをもたらした要因は何かを考えることから学習をスタートさせるのが基本である。

 ところが,算数の導入では,「どちらが長い?」「どちらが広い?」「重さの順番は?」という具合に,理科と同様に目の前の対象の比較はさせるものの,その違いは極めて曖昧であることが多いように思う。その曖昧さを,算数的ツールを使って明確にしていくことが算数授業学習の基本なのかもしれない。

 理科と算数,教科の違いによる導入指導にはどのような違いがあるのか,どのような共通点があるか。そして,その背景となる理論にはどのようなものがあるのか。

 本特集で紹介されている具体的な実践例をもとに考えてみたい。

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