- はじめに
- プロローグ
- 子どもたちはピアノが好きなのに
- ピアノは楽器の王様
- 多くの先生はピアノが苦手
- 幼児の楽器=簡易なリズム楽器でいいの?
- 現状を打開するモノは?
- 電子楽器はまだかなり嫌われている!
- 電子音は耳を悪くする?
- フニャフニャの鍵盤はダメ?
- デジタル・キーボードは音楽教室専用?
- 楽器の概念は変化する
- 1 デジタル・キーボードの種類
- (1) 電子ピアノ
- (2) 電子キーボード
- (3) 電子オルガン
- (4) シンセサイザー
- (5) 機能の複合化
- (6) デジタル・キーボードの基本的な機能(装備)
- (7) MIDIについての簡単解説
- (8) デジタル・キーボードはよい条件で弾こう
- (9) 楽器は目的別に選ぶのが鉄則
- 2 電子ピアノを弾こう ミュージック・データを使って
- (1) 向かい合って,どこでも子どもと音楽
- (2) たまにはピアノに演奏をまかせよう
- (3) ミュージック・データとは?
- (4) 幼稚園・保育園で活用できるミュージック・データ
- (5) ミュージック・データを使ってさあ練習!
- (6) ガイド機能を使ってみよう
- (7) テンポを変えてうたおう
- (8) スプリット機能を使おう
- (9) ピアノ伴奏を録音しよう
- (10) 音のオリジナル・アルバムを残そう
- (11) 子どもたちの声のキーにピアノ伴奏を合わせよう
- (12) 自動伴奏機能を活用しよう
- (13) 自動伴奏[基礎編]
- (14) 自動伴奏[応用編]
- (15) 自動伴奏をさらに楽しくしよう
- (16) 悩みのタネの選曲〜多重録音に挑戦!
- 3 電子ピアノであそぼう
- (1) ピアノの導入教則本を活用しよう
- (2) 黒鍵を弾こう
- (3) たくさんの音色を使って黒鍵を弾こう
- 2つの黒鍵(ド#レ#)を使って/ 3つの黒鍵(ファ#ソ#ラ#)を使って/ 隣どうしの2つの黒鍵を使って/ 鍵盤をスプリットして2つの音色で連弾/ 日本調の音楽を演奏しよう/ “お知らせ”の音楽をつくろう
- (4) 好きな音色を探そう
- 選んだ音はどんな音?/ 効果音に使える音はどれ?
- (5) 打楽器音や効果音を鳴らそう
- 打楽器音聴き比べ/ 効果音(SFX)聴き比べ/ 効果音(SFX)を使ったストーリーづくり/ オペレッタや絵本に音を付ける
- (6) スタイルを活用しよう
- いろいろなリズムを聴こう/ マーチ系のリズムで行進/ 1つの楽器の音に耳をすませば?/ ビートにのってラップ!/ 異なるリズムで替え歌をうたおう/ 音楽からお話をイメージしよう
- (7) マイクを使おう
- 弾きうたいをしよう/ 声を変化させよう
- (8) 録音機能を使ってリズムあそびをしよう
- (9) 子どもたちのサウンド・アルバムをつくろう
- 4 電子キーボードであそぼうサンプリング機能を使って
- (1) おもちゃのようなデジタル・キーボード
- (2) プリセット音で弾こう
- (3) ソング、フリーセッションの曲を聴いてみよう
- (4) サンプリングの準備
- (5) 「こんにちは」とごあいさつ
- (6) 怪獣の声をつくろう
- (7) ヘリコプターの音をつくろう
- (8) 「あかさか」を逆さまにすると?
- (9) マジカルシンガーを使ってみよう
- (10) パッドを鳴らそう
- (11) 「か」「し」「お」「か」でつくられる単語は?
- (12) ゲームやクイズの効果音をつくろう
- (13) サンプリングルーレット!
- 5 電子オルガンであそぼう エレクトーンを使って
- (1) エレクトーンを「各部分」に分けて
- (2) セカンドエクスプレッションペダルを使ってあそぼう
- “ゆうれいごっこ”/ “ラーメン屋さん”/ “救急車ごっこ”/ “ロケット発射”
- (3) いろいろな動物が出てくる森の音楽会を開こう
- (4) 重低音で振動あそび
- (5) グリッサンドを使って魔法をかける時の音をつくろう
- (6) エンディング・ミュージックをバッチリきめる!
- (7) “学校の鐘”の音楽をつくろう
- (8) クイズの効果音に打楽器音を使おう
- 6 シンセサイザーであそぼう
- (1) 「シンセは子どもには使えない」という思い込み
- (2) <音のレストラン>にようこそ!
- (3) 定番のプリセット音を鳴らそう
- (4) ピッチ・ベンド・レバーを使ってみよう
- (5) モジュレーション・レバーを使ってみよう
- (6) リボン・コントローラーをこすってみよう
- (7) カットオフ・フリケンシーで音を明るく/ 暗くしよう
- (8) レゾナンスでクセのある音をつくろう
- (9) 音の鳴り方を変えよう
- (10) アルペジエーターを使ってみよう
- (11) リアル・タイム・フレーズ・シーケンス(RPS)で演奏しよう
- (12) 音づくり【応用編】に挑戦!
- (13) 子どもたちは“サウンドコーディネーター”
- エピローグ
- コンピュータリテラシーと関連させて
- デジタル・キーボードは新しくて古い楽器
- デジタル・キーボードであそぼう
- ふろく◆保育tips集 音楽活動に役立つ電子楽器カタログ
はじめに
ゲームソフトの音楽,テレビアニメの音楽,パソコンの警告音など,多くの電子音が現代の子どもたちを取り巻いています。子どもたちは「これは電気でつくられたニセモノの音だ」なんてまったく意識していませんし,ボタン・キーを使った電子的な操作も大好き。大人よりもずっと早く覚えてしまうぐらいです。
大人がその事態を心配して「たまには本物のオーケストラの演奏を」と買ってきたCDが,実はすべてコンピュータで製作したものだったという笑い話もよくあります。大人でも音質の区別がつかないほど,現在の電子楽器は性能も高く,世界中のミュージシャンや音楽ファンに愛好されています。
しかし,幼児の教育現場には残念ながら電子楽器はあまり普及していません。これにはさまざまな理由がありますが,電子楽器の技術的な進歩がとても早すぎて,実践が追いつかなかったということがあると思います。「楽器を購入して少し慣れた頃に新しいモデルが出たのでガッカリした」こうした先生の嘆きの声も聞きました。教育というのは本質的に性急に結果を求める分野ではないので無理もありません。
頻繁なモデルチェンジのせいなのか,電子楽器に対する現場の嫌悪も少なからず見受けられます。しかし,嫌悪感の中身は少しずつ変化していて,ひと昔前の「ニセモノの音」「子どもの聴感覚に悪影響」などといったものから最近では「やってみたいけれど難しそう」といった未知のものへの不安に変わってきているようです。
この本は,電子楽器に対して少なからず不安感を抱いている先生や,音楽活動にどのように導入したらよいかわからないという先生に向けての電子鍵盤楽器,デジタル・キーボードのガイドブックです。デジタル・キーボードにしぼった理由は,子どもたちに親しみやすい楽器であるばかりではなく,「半年で性能は2倍になり,価格は2分の1になる」というコンピュータの世界と比べて,デジタル・キーボードの世界は成熟の時期を迎えているからです。機能やアイデアがある程度飽和状態であるため,仮にモデルチェンジをしてもがらっと様相が変わってしまうということはおそらくありません。だから今こそ,じっくりと実践に取り組み,定着させるチャンスであるといえるでしょう。
1冊の本にまとめようと思うといろいろと問題点が持ち上がりました。
まず,内容が浅くならざるを得ないということです。皆さんもご存知のように,最近の電子機器,たとえば留守番電話やビデオカメラを買うと,分厚い取扱説明書なるものがくっついてきますが,電子楽器も同様なのです。この取扱説明書は一般的に非常に難解であり,人気のある一部の音楽制作ソフトなどでは,取扱説明書とは別に電子ゲームの攻略本にも似た解説本が発売されています。この本ではさまざまなキーボードを取り上げるため,取扱説明書や攻略本に載っているような細かいことには触れることができませんでした。
また,キーボードを使うために必要な楽典の知識などをその都度説明していくことも紙面の都合上できませんでした。
この本の特徴を挙げると以下のようになります。
広くデジタル・キーボード全般を概説することで,デジタル・キーボードとはどういうものなのか,それらを幼児教育の現場に導入するとどういうメリットがあるのかをできるだけわかりやすく伝えることに注意を払いました。そのため,専門用語などはなるべく避けるようにしました。
デジタル・キーボードを電子ピアノ,電子キーボード,電子オルガン,シンセサイザーの4つの種類に分けて解説し,それぞれの代表的な楽器を用いた実践例を示しました。
幼稚園・保育園は早期音楽教育機関ではありませんので,五線譜を使った子どもたちの音楽活動は含んでいません。
また,ミュージシャンが使うような高性能な楽器も取り上げています。「子どもだから手軽なモノでいい」というのは間違った教育観だと思うからです。
子どもたちが集まっているところにキーボードをポンと置くとなかなか楽しそうだなぁ,自分にもやれるかもしれないなぁという気持ちが芽生えるよう,キーボードに近づきにくくさせていた「壁」を少しでも取りのぞくことができるよう配慮しました。
保育tipsでは,キーボード以外の電子楽器のなかで音楽活動に役立つと思われるものをカタログ風に載せました。
お料理のレシピをたくさん読んでも,実際にキッチンにたたなければお料理の腕は上がりません。どうか読み終えたら,是非気に入ったデジタル・キーボードで子どもたちとあそんでみてください。ピアノ・簡易打楽器に加えて電子音・電子楽器という新しいメニューレパートリーが増え,音への興味や関心がグーンと広がり,いつのまにかデジタル・キーボードと仲良しになっていることでしょう。
この本は幼稚園・保育園の先生方を主な対象にしていますが,小学校の先生やピアノの先生,音楽教室の先生,家庭で子どもとデジタル・キーボードを楽しみたいと思っているお父さん・お母さんにも読んでいただきたいと思っています。
本書をつくるにあたり,楽器メーカーの関係者の方々に,楽器の貸し出しや情報提供という形で協力していただきました。巻末にお名前を記しておきます。本文中のイラストは,私の生徒である中学3年生の久保沙葉さんにお願いしました。最後になりましたが,私に執筆を勧めてくださった富山大学教育学部の同僚,竹井史先生 (美術科教育助教授),常に適切なアドバイスをしてくださった明治図書教育出版部の石塚嘉典さん,山口由園さんに感謝を申し上げます。
1998年5月 /深見 友紀子
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- 明治図書