- まえがき
- T章 幼児期の身体的特徴と体育
- 1.スキャモンの発育曲線
- 2.からだの発育発達
- 3.体力・運動能力の発達
- U章 乳児期から幼児期へ
- 1.歩行への足の育ち
- 2.美しい歩き方に育てるために
- 3.生後2年の子どもの発達と保育の課題
- V章 子どもを知る(発達指標)
- 1.運動の発達
- 2.空間案内と空間位置運動
- W章 保育園・幼稚園での体育
- 1.保育園・幼稚園での体育の概要と課題
- 2.運動材料
- [体操練習の材料]
- 運動発達の順序/ 下肢の体操/ 上肢の体操/ 体幹の体操/ ペアー体操
- [主要練習の材料]
- [毎日体操(案)]
- 3.課業と計画の立て方
- 4.体操練習の基本型
- 5.手道具・用具
まえがき
現代の私たちの日常生活はIT化が進み,日々便利になっています。裏返してみれば人間らしい行為が減り,退化しているともいえます。食器を洗わない,雑巾を絞らない,文字を書かない,集金人に会わない,お店で商品について質問できない,等々枚挙にいとまがありません。こんな環境の中,人間らしいコミュニケーション能力が育たないのはもちろんですし,身体そのものの育ちもいびつで不器用になっています。
ハンガリーのルイザ・オセツキー女史のいろいろな手道具を使っての体育は,人類が自由になった前肢を手として進化させてきた過程をくり返すという重要な練習方法です(『保育園・幼稚園の体育』明治図書)。生活の中で手を使うことがどんどん減っている現在,大切な観点です。手道具の使い方については本書では十分に詳しくは述べられないので,上掲書を参考にしてください。また,『ハンガリー マイバの教育プログラム』(明治図書)の中でもこのことはたくさん生かされていますので参考にしてください。
1つ1つの運動課題を子どもたちに段階性をもって計画的に提示し練習することはたいへん大切です。しかし,プログラム化されている内容だけに保育者の関心と注目がいき,子どもたちがどうその課題をおこなっているか理解していないことがあります。最近の発達心理学の中で論じられている「能力論的発達観から行為論的発達観へ」と同じように,本書では,運動行為の中で,今何をどう練習しているかわかるようにするために分析的に具体例を示しました。1つの運動行為がやれたら次はどう高次化するか,反対に,やれなかったらどう低次化するか,保育者が考える材料を示しました。できる運動とできない運動という見方にならないようにしたいものです。
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特定の体操練習などの中で動きながらほっほっとか,ぶるんぶるんとか,お腹の中から息を出すような感じで声を出すことをすすめます。本当に柔らかい動きは体の中の空気とも交じり合い,体のすみずみにまで行き渡るかのようです。
体操もわらべうたも同じ1つの柔らかい体作り,柔らかい子ども作りの原理に立っていて,私たちの内部に自然を取り戻させてくれるのです。
2003年6月 /羽仁 協子
とてもいい本だと聞いています。
ぜひ復刊をお願いします!
こどもの健やかな成長のために・・・
よろしくお願いします!!!